表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

SF小噺

【SF小噺】バカ社長をAIでソリューショーン

作者: はまさん

 自分を呼び出した社長は、ずっとゴルフクラブを磨いていた。

「知ってるか」

 何をだ。

「知りません」

「だからお前はダメなんだ。一を聞いて十を知ろうという姿勢がない」


 一どころか、情報量ゼロの中から、どう膨らませて十を創作しろというのだろう。

 しかしニートからパソコン係として雇われた恩義が少しはある。大人しく話を聞くとしよう。

 ただ、その恩義も日頃のサビ残、パワハラ、休日出勤により恨みの方が上回りつつあるのだが。


「前のゴルフ大会で、よその社長が言っとったのよ。これからはAIだと!」

 うわ来た。

 サボり魔のくせして、ミーハーなんだよな。

「それで考えた。この儂の経営判断をAI化すれば、いちいちお前らが判断を待たずに済む!」

 サボりたいだけだろ。そもそもAIの何たるかを知っているのか。

 横では太鼓持ちの課長が「その通り!」と合いの手を入れている。


 というわけで社長AIを作ることになってしまった。

 えっと、つまりは社長の仕事中における行動パターンを再現すれば良いんだよな?

 そして開発はどうにかなった。我ながら凄いな!?


 開発が完了したことを社長に報告する。

「なんだそれ?」

 あっ、これ絶対に忘れているやつ。仕方ないので、一から説明した。これで社長の経営判断は全て代替できますよ。

 すると社長は「そうか、そうか」ガハハと笑いながら帰ってしまった。これで自分が会社にいる必要はないからな、と。

 ……まあ、いいや。


 AI社長は想像以上に完璧だった。そもそも社長は大した仕事なんてしてなかった。業績が微妙に下がり続けているのも、社長の経営判断通りだ。

 どのみち、あの邪魔な置物がないだけ、静かで良いよね、とは全社員の一致した意見だ。


 ところがある日、久しぶりに社長が出社した。怒り狂って怒鳴り散らす。

「接待費でゴルフクラブが落ちなくなってるぞ。どうなってるんだ!」

 ああ、やっぱりこの人、会社の金を使い込んでたのか。

 仕方ない。自分が解説する。

「それはAI社長の判断ですね。AIにはゴルフクラブが不必要だから、そういう使い込みがなくなったんです」

 そもそも金の使い込みは「経営」に入らないからな。そこまでAIには組み込まなかった。


 そしてAI社長になってからも、業績は下がり続けていた。だが使い込みがなくなった分、実は下がり方は緩やかになっている。

 AI社長より、リアルの社長の方が無能だったということだ。

「どこのどいつだ、このAIの元になったバカは!」

 そのセリフで、さすがに事務所中が大爆笑に包まれた。


 結局、AIも道具。使う人がバカなら、ろくなことにならないということだ。


 後日談。

 独学でAIを作れるのは凄いな、ということでヘッドハンティングされ、転職しましたとさ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ