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第4話 とある魔法薬学にて

誰もが落とす火曜1限の必修科目と言えば魔法薬学だ。

出席が厳しくテストも鬼のように難しい。その上予習必須で実技まであるとなればなおさら。


「座れひよこ共!ピーピー喚くんじゃない!」


生徒たちはいきなり入ってきた全身ブランド物に身を包んだ男を見て席に着いた。

髪はストレートロングの金髪でそれを下の方でかっちりと縛っている。

男はそのまま教卓をバンッと叩いた。


「貴様らの魔法薬学を担当するデイヴィッド・マーフィーだ。担任の自己紹介の時にも言ったが、俺の言ったことには全て、ハイかイエスで答えるように。貴様らには特別に親しみを込めてマーフィー様と呼ぶことを許可する」


ほんと、何こいつ。

おそらく教室にいる全員が心の中で言ったであろう。

静まり返る教室を目にしても男は気にする様子もなく出席を取り始めた。


「おはようございます」


ガラガラと扉を開けてさも当然かのように入ってきたのは、漆黒の彼らだ。授業初日から遅れてきたことか、はたまた話題の渦中にある彼らを前に興奮しているのか静かだった教室が一気に騒がしくなる。

マーフィーはうるさいと言わんばかりに教卓を叩き、扉の方を睨んだ。


「初日から遅刻とはいい度胸だな?」

「すみません」


素直に謝った男とは対照的に、女はニコニコと嬉しそうに男の背中から顔を出す。


「貴方のダサい自己紹介は聞こえてたわ。よろしくデイヴィッド」


マーフィーは眉間にしわを寄せて杖を取り出した。

あーあ、死んだな。

クラス中がそう悟った。

何せライデンカレッジでは教師はそのほとんどがOBで構成されていて、彼らは生徒と同じ、あるいはそれ以上にヤバいことは皆が知るところである。


喧嘩を売る相手は見極めろ。


校則でもかなり最初の方に書かれている項目だ。もはや校則というより校訓のようなものが生徒手帳には永遠と羅列されている。


魔法のプロであるライデンの教師に一介の新入生が勝てるわけがない。特にあの男は見るからにヤバい。きっと男女関係なく見せしめにボコボコにされるだろう。そう誰もが思った時。


「止めておこう。お前らとやるのはめんどくさい。早く席に着け」


マーフィーはそうため息をついて「オリエンテーションを始める」と何事もなかったかのように進行し始めた。


「隣いいか?」


ルカが上から聞こえた声に反応すると、そこにはあの2人組がいた。


「あ、うんいいけど」


そう返事をすると、レイモンドはありがとうと言ってルカの隣に腰掛けた。

意外にも授業が始まってからは真面目に聞いていて、そんな彼らを見ているとあっという間にベルが鳴った。


「この後どうする?」

「空きコマだし、食堂でお茶しましょ。寮に戻るのも面倒だしね」

「そうだな」

「ねぇ」


シャーロットは人当たりの良い笑顔で声を掛けた。


「ルカも一緒に行かない?」


予想外の出来事にルカは目を丸くしてしばらく固まった。


ー---ー------------------------

多くの1年生は寮に戻って休憩したり、部活を見学しに行ったりしているこの時間。

食堂には上級生ばかりで新入生が3人、それも2人は噂の第0寮ともなれば周囲からの注目の視線はひとしおだった。


「いやーまさかオッケーしてくれるとは思わなかったわ」

「君が誘ってきたんだろ?」

「うーん。周りの子からすごく見られるし、嫌われてるのかなって」

「そりゃ2人は目立つから」

「私たちってそんなに目立ってる?」

「そりゃ目立つだろ。制服の色もだし、男子校に女の子だし」


あえて髪色のことは言わなかった。少なくとも今の自分には触れてはいけないところだと感じたから。

結局学園長は事務的な説明ばかりで、彼らについての説明はほとんど聞かされなかった。

あの後寮では、とんでもない金持ちの娘とか教師に枕したとか女装してるだけでそもそも女じゃないなんていう根も葉もない憶測が次々と飛び交っていた。

周りの人間もこちらの会話を聞こうと会話のボリュームをそれとなく下げる。


「え?ここ共学でしょ?」


シャーロットは何を言っているんだと言わんばかりの表情でルカを見返した。


「いやいやいや!どう考えても違うだろ!周り見てみなよ!女の子なんていないじゃん!」

「気持ちはわかるけど落ち着け、説明するから」


興奮して大声を出したルカをレイモンドはこうなることが分かっていたかのように落ち着いた様子で窘めた。その声を聞いてルカは我に返る。


「……あ、ごめん」


ルカは辺りを見回して思わず注目を浴びてしまったことに改めて気づき恥ずかしそうに浮いた腰を椅子に戻す。

その間クスクス笑うシャーロットとは対照的に、レイモンドはどこから話そうかな等と思考を巡らせていた。やがて頭の中の整理が終わると諭すような落ち着いた口調で話し始める。


「まず、シャーロットの言ったことは本当だ」

「え、でも……」

「言いたいことは分かる。確かに今この学校にはシャル以外の女子生徒はいない。でもそれはライデンカレッジが男子校だからって理由じゃない」

「じゃあなんでなんだ?」

「魔法を使うのには魔素(マナ)がいるでしょ?魔素(マナ)の体内の自己生成量って体格に比例する傾向があるんですって。だから体格の大きい男子の方が強力な魔法を使うためのエネルギーをたくさん持ってるってわけ」

「だがそれはあくまで一般論であってみんながみんなそうじゃない。実際、聖騎士には女性もいるし。ライデンカレッジは魔法職者養成学校の中でも特に実力重視の名門校だから他と違って性別による枠決めがない。つまり女子の枠がない分女子生徒が入学するのは至難の業ってことだ」

「え、じゃあシャーロットは男子並みにそれがあるってことか?」


でも、それにしては髪色が……


「まさか。この髪色で分かるでしょ?」


金髪というには色が無さ過ぎるその色。彼女は自嘲気味に笑った。そしてどこか悲しそうに目を伏せる。


「私はちょっと特殊なの」

「へぇ……」


なんだかこれ以上聞いてはいけないような気がして話題を逸らす。


「じゃあ第0寮って……」

「おいコラてめぇ!調子乗ってんじゃねぇぞ!!!」


怒号と共に何かが床にたたきつけられた音が響く。


「なぁに?」

「喧嘩じゃないのか?」

「あぁあの制服は春ね」


シャーロットとレイモンドが冷静に分析している方向を見るとそこには、第1寮の生徒数人が第2寮の生徒を怒鳴りつけていた。喧嘩だろうか、そう目を向けた時。ルカはその生徒に見覚えがあった。

ここまで読んでくださりありがとうございます。作者の星奈です。

4話にしてブクマが2件も!すごくうれしいです。

作者のやる気にも更新頻度にもつながりますのでぜひぜひ評価、ブクマよろしくお願いします。

前作の時も皆様のブクマ評価、温かい感想やレビューに支えられておりました。なかなか言う機会がなかったのでこの場を借りて。とても感謝しております、完結まで走りきれたのは皆様のおかげです。

まだ読んだことがないという方はよろしければ覗いてみてください。

もちろんこちらの作品も鋭意執筆しております。

ぜひこれからも『ライラー超名門魔法学校に首席入学したら治安最低すぎて正直来るとこ間違えたー』をよろしくお願いいたします。

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