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第2話 とある古代呪文学にて

「ところで2人はなんで古代呪文学をとったんだ?」


古代呪文学と言えばとにかく難しいことで有名で、必修科目のほうではこれのせいで毎年留年者を何人も出している。選択科目の発展古代呪文学はそれより遥かに高い難易度でわざわざとる人間などほとんど存在しない。全学年合わせて履修者たったの数人なんてことが良く起こる科目なのである。


「俺たちは単にテスト100パーセントの科目が楽だと思っただけだよ」


レイモンドの答えにルカは驚きを隠せなかった。

たったそれだけの理由でこの科目を?ていうかテスト滑ったら終わりだぞ?

確かにこの科目は前後期通年でとる選択科目で、年に1度のテストさえパスしてしまえば面倒なレポート課題や出席点を気にすることなく単位がもらえる。さらに発展Ⅰ、発展Ⅱと学年が上がるごとに毎年履修することが可能で古代呪文学が得意な生徒にとってはカモ授業といえるのかもしれない。ただしそれはごく一部の優秀な生徒のみで、通常は発展Ⅰの段階で落単し、次の年から他の科目を選択する。


「ルカはどうして古代呪文学なの?」

「俺は遺跡とか好きだから……」

「そう」

「あ、この教室だよ」

「案内してくれてありがとう」


扉を開けるとそこにはまだ誰もいなかった。

おかしいな、もう授業5分前のはずなんだが。

適当な席に腰掛けると、しばらくして先生が入ってきた。先生、というには少し年を取りすぎているような気もするが。


「今年は3人もおるのか!?うれしいのぅ。儂は古代呪文学担当のパウロ・ラドクリフじゃ。早速じゃがお前ら、自己紹介せぇ。じゃあそこの紺色の坊主から」

「えっと、ルカ・フェイマスです。よろしくお願いします」

「シャーロットです。お願いします」

「レイモンドです」


緊張気味のルカに比べ、シャーロットとレイモンドはどこかめんどくさそうに名乗った。


「なんじゃそれだけか?3人だとすぐ終わるのう。じゃあガイダンス始めるぞい。まず、この授業では必修科目の古代呪文学の内容を軸にその発展内容を取り扱う。たまに校外での授業も行うのでメールはちゃんと確認するように。知ってると思うがこの授業では学年末テストが唯一の評価対象じゃ。つまり、毎回真面目に出席して頑張ってもテストが取れなければ落胆することになる。来年の発展Ⅱは受けられなくなるので頑張ること。逆に言えばテストさえ取ってくれれば儂は何も言わん」


何か質問は?


誰も手を挙げることは無かった。

ルカに関してはこの履修期間にシラバスをちゃんと読み込んでいたし、先輩の話も聞いていたので特に聞くことが無かったし、シャーロットとレイモンドに関しては舐めているのか本当に余裕なのか、焦りを見せることもなく黙って座っている。


「まだ80分も残っておるのう。初日じゃが、簡単な内容から始めるとしよう」

「あ、ドラちゃん。私たち出るね」


シャーロットはスマホを見ると、レイモンドと共に何やら慌ただしい様子で荷物をまとめて教室を出て行ってしまった。


「……で、そのまま戻って来なかったと」

「そう。おかげで初日から先生とマンツーマンだよ」


ご愁傷様とアドラーが笑う。

あのまま2人は戻って来ず、昼休みになっても戻ってくる様子はなかった。


「食堂にいないってことは寮にいるんじゃない?」

「でもあの2人そもそも何寮かも判断できないじゃないか」


通常ライデンでは入学式後入試での結果をもとにすぐに寮の振り分けが発表される。

そしてその振り分けに応じて制服や寮服が支給されるのだ。

制服はほとんどみんなデザインが同じであるが、寮によってネクタイやラインの色やデザインが若干異なる。しかし、2人の着ていた制服はどの寮にも当てはまらない。

他の授業や廊下でも会う人みなに聞かれたが、ルカ自身彼らが何者であるかという点について何一つ知らない。


「先生も何も言わないしなぁ。ていうかこの後の歓迎会も来ないつもりなのか?」


今日は午後から新入生歓迎会が催される。

とはいえほとんど全校集会のようなもので、先輩たちへの新入生の顔見せの面が大きい。入学式は父兄が見に来る関係で先輩たちは来ない(その理屈もよく分からないが)ので、ここが初めて公の場で先輩たちと対面する場という事だ。


「履修期間は新入生だけの棟だったし、今日もまだ2コマで先輩たち全く見なかったから自分の寮の寮長くらいしかまだ知らないんだよね」


アドラーは楽しみと言った様子で残りのサンドイッチを口に入れる。

この時なぜ先輩たちと会わなかったのか、すぐに俺たちは知ることになる。


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