第41話:フーの宣戦布告
シーは、序列三位、現国務院総理であるオンと、序列七位であり、共に次期中央政治局常務委員を務める予定のリーに挟まれていた。
オンもリーもブルーローズ閥のトップに相応しい洗練された服装だ。
服装だけでない。さり気なくつけているピアスや髪飾りなど、アクセサリーも含めて、非の打ち所がない完成された美しさだ。
(いやー、シー様。流石にその格好は……)
二人の美女に挟まれたシーは、なんと、国民服を着ていた。
会合の運営を務めている公弁庁の職員も含めて、国民服はシーただ一人だけだ。
国民服は、華の国を党がまだ支配する前、西の国々にほぼ植民地化されていたような時代に、西のスーツに対抗するような形で生み出された服だ。
貧しい時代を反映してか、地味で華やかさは全くない。
女男問わず着用されており、時代によっては男は作業着タイプの国民服しか外出時は着用できなかったこともあった。
国民服は党の公式な会議や儀礼の場で着用されることもあるが、それも今はスーツに取って代わられている。
要は時代遅れの格好なのだ。
周りがそれぞれ自分の美しさを主張するかのように着飾っている中で、シーのその格好は異質であった。
シーの美しさは、よく知っている。決して、他の幹部に引けを取るものではない。
しかし、この場で国民服は、その存在を蔑ろにされてもおかしくないほど、場違いであった。
しかも、この会合で、党の公式な場ではないが、半ば正式な形でシーが次期総書記になることが決まるのだ。
そんな重要な会合で、シーは華やかさ一つない、国民服を着てきたのだ。
(ど、どういうつもりで……、シー様は)
シーは、決してバカでも世間知らずでもない。
いつも、ボーっとしているが、それでも現中央政治局常務委員なのだ。
常識も、党の暗黙のルールも全てわかっている。
だから、一見常人には理解しがたい事でも、シーにはシーなりの考え、いや策略があるはずなのだ。
(それにしても、その格好は……、特にリー様の横で)
リーは、ブルーローズ閥の面々にも当てはまるのだが、非の打ち所がない美しさという言葉がよく似合う。
顔も、瞳も、身長も、そして、スタイルも。
リーもそうだか、何故か、いや、そういうメンバーが選抜されているのか、それとも偶然か分からないが、ブルーローズ閥の多くの者は、スイタイルが抜群だ。
特に皆、豊満な胸を持っている。
フーもオンも、そこまで自分の胸を強調しているわけでないが、それでも目立つ。
実務家として優れたオウキが、同じ優れた実務家集団であるブルーローズ閥を嫌っているのは、ブルーローズ閥のメンバーが巨乳揃いだからなのかもしれない。
豊満な胸も含めたスタイルの良さはステータスなのだ。
だから、オウキも、謎の努力をして、張り合おうとするのだろう。
逆に派手で、谷間を惜しげもなく見せることも珍しくないハクモクレン閥は、胸の大きさはそこまででもない。もちろん、ブルーローズ閥ほど目立たないだけで、一般庶民の女性ならため息が出るようなスタイルの持ち主ばかりであるが。
そんななか、シーは、正直、スタイルだけなら、完全に見劣りする。
身長も小さいほうで、体つきは少女のようだ。
逆にその少女のような外見な、妖しく、見るものを不穏にさせるような美しさがあるのだが。
ただ、それは俺が間近でシーの恐ろしさと美しさを見てるからで、オンとリーと並ぶと、その存在はかすれてしまう。
(きっとシー様には考えがあるのだろう)
そう、この会合は、シーは主役ではない。
主役はフーなのだ。
そのフーが、自らの影響力を残せる新中央政治局常務委員を選び、認めさせる。
それがこの、会合の主催であるフーの目的だ。
そして、コウやソウファら元幹部が、そうはさせまいと反対する。
その間でシーにとって好都合な人選にさせる。
シーは、フーから、いや、それはコウやソウファかもしれないが、今、党で一番支配力のある者から新中央政治局常務委員というプレゼントを受け取る存在でしかない。
「それでは、続いて、皆様も懸念されているでしょう。ボアの処遇についてお話しします」
今日の主役であるフーの声が響いた。
その声は、ここまで経済政策を話している時にはない緊張感と覚悟が込められているように響いた。
ボアの処遇は、中央政治局常務委員会議で決定された。
しかし、今だ正式なアナウンスはできていない。
中央政治局常務委員会で決定したにも関わらず、発表がまだないのは、それはフーがしなかったのかできなかったできなかったのか。
ボアはシュウに取り入っていた。ということは、当然コウやソウファにもだ。
フーが、ボアの処遇を発表できなかったのであれば、それはコウやソウファの圧力に屈したからだ。
逆に敢えてしなかったのであれば、それはボアの失脚を利用して、ボアの後ろ盾であったコウやソウファの党に対する影響力を削ぐためだ。
(果たして、フー様はどっちなのだろう)
遠目からでもわかるフーの射抜くような眼差し。
穏やかなフーには似つかわしくないその厳しい眼差しは、コウに向けられていた。
その眼差しで、フーが、敢えてこの会合まで、ボアの処遇を発表しなかったと分かる。
フーはこの会合で闘うつもりなのだ。
現在、党に対して最大の支配力を持つコウに。
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ドキ☆美女だらけの大会議の始まりです。
最初の中心は、女神のような現在、華の国の最高点に君臨するフーです。
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