第30話:シーが権力を握る方法
マロンの説明は続いた。
「新中央政治局常務委員の椅子は七つ。そのうち、三つが埋まってる。シー様とリー様、そしてオウキ様」
「……はい」
「あと四つ。過半数を握るために両派閥、四つの椅子がほしいの」
ブルーローズ閥から見た場合、今確保してる席は一つ、リーだけだ。
シーは、そもそも、リーをフーの後継にしないようコウが5年前に無理矢理ねじ込んだのだ。
そして、オウキは、ブルーローズから見ても読めない不確定事項だ。
さらに、シーとオウキが懇意にしているのは知られているし、オウキはレイを失却させた。
現時点で、シーもオウキもブルーローズは敵とみなさない訳がない。
「ブルーローズは、残りの椅子、全部取りにくるわね。なんせ、実績と個人の能力だけならブルーローズの方が優れていのは間違いないのよ」
ブルーローズは、党のエリート養成機関出身者が集まった派閥だ。
謂わば華の国から選りすぐった選抜メンバーなのだ。
「だから、この南頂海会議中、シーに対してブルーローズから何かしらあるはずよ。次期総書記も中央政治局常務委員の人選に発言権はあるからね」
「南頂海会議中、シー様はリー様と会談の約束がありますのじゃ。それにフー様の主催する勉強会に参加を打診されていますのじゃ」
「そう、なら、仕掛けるならその時ね。そこでシーと思闘して、シーを屈服させる。そうすれば、シーの席も手に入るし、メンバー選びの発言権にもなる」
「そ、そんな。シー様はフー様と敵対なんてしていないのに!」
「そうよ、でも味方になるのも拒んだのよね。まー、レイの件は敵対したとも言えるし、裏切り者を明らかにすることで、味方についたのも言えるけど」
「確かに、シー様もブルーローズとは組めないと言ってました。ブルーローズと組んでハクモクレンと敵対すれば、最悪内戦になると……」
「長年、コウ様は、フー様が主導権を握れないよう散々邪魔してたからね。フー様は、ああいう方だからともかく、ブルーローズ閥は相当恨みを蓄積してるわね。それはコウ様も分かってる。ブルーローズが、主導権を握ったら自分たちに襲いかかってくることを。だから、ブルーローズに主導権は握らせない。そのためにはどんな手も使うでしょうね」
マロンはまるで諦めているかのように微笑みを浮かべている。
くだらない派閥争いだか、双方、命運がかかっているから、譲ることはない。
そんな争いで割を食うのは、国民なのだが、両派閥ともお構いなしだ。
いや、両派閥とも国民のためという理念を自らの正当性に利用さえしている。
そんな状況を、これまでずっと地方銀行幹部であったマロンがここまで詳しく説明できるのだ。
ある意味、党員なら誰もが分かっていることなんだろう。
「新中央政治局常務委員を決める南頂海会議。両派閥ともお互い主導権は、渡せない。激しい駆け引きと、そして、おそらく暗闘も起こるでしょう。そんな状況で、シーはハクモクレンでもブルーローズでもなく、自分が主導権を握るつもりなのよね。どう考えても……
無理よね」
「シー様は、何か考えがあるのでしょうか……」
「さあ、私も聞いてないのよね。ただ、シーは策略謀略なんて考えられるような人間じゃないんだし。そういうことはきっとオウキ様が考えているわよ」
「マロン様!また、シー様を貶めて……。シー様には人望があります」
「人望って……。話し友達みたいなものでしょ。そんなのは、シーに味方すれば自分の利になる。そういう状況にならないと意味ないわよ。そして、いくら総書記になっても、今のシーならただのお飾り。そんなの党の上にいる連中ならみんな知ってる。あなただって、今フー様からシーの秘書を辞めろと言われたら逆らえないでしょ」
「そ、それは、そ、その……」
「まあ、そんなもんよ。私だってフー様からの指名があるから中央にこれたのよ。例えシーが裏で手を引いていたとしてもね。それが現実。力のないシーがどう立ち回って新中央政治局常務委員を自分好みにするのか……。その鍵の一つがルー君なのよ」
「そ、それが私もよく分からなくて……」
「あら。でも、私はルー君が重要だから、党の派閥や南頂海のレクチャーしとけとシーとオウキ様に言われたのよ」
「は、はい。それは聞きました。ただ、私ができることは、もしかしたら相手の思力を消せるかもっていうくらいで。そんな権力争いで、何か役に立つなど。も、もしや、シー様はボアのように誰かと思闘するつもりなのですか!?」
「うーん、上級幹部同士の思闘は、そうそうできないのよね。よほど相手に非がないと、仕掛けたほうが糾弾されるわ。ただ、ケンカを吹っ掛けるようなやり方は認められない」
「そ、そうですか……。よかったです」
「あら、ほっとするのは早いわよ。だから、シーはケンカを売られたいのよ。そして、売られた時に、あなたがいれば勝てる……。シーが南頂海で立ち回るとしたらそれくらいしか考えられないわね」
「ひぃ、そ、そうですか…… 」
引きつる俺の顔にマロンは、チャーミングとしか形容できないような笑顔を向け、残酷なことを宣言した。
「だから、これから私とアカリで、特訓するのでしょ。アカリが、主要幹部の思力様式まとめてくれたのだし。ね、アカリ?」
「そうじゃ!ルーが、最初に素っ頓狂な事を言い出したから、党の話になったのじゃが、ルーをどうやって鍛えるかが本題じゃ」
「南頂海会議まで、あと三週間くらいかしら。私、男の子を教育するなんて経験ないなら、楽しみよ」
「マロン様!ルーを甘やかしてダメだなのじゃ。ルーは打たれて伸びる男じゃ!」
「さぁ、まずはアカリのまとめた情報を頭に入れて!やるわよー。」
(なんで、上級幹部ってみんなS属性なんだ?)
先程まで、とてもチャーミングだと思っていたマロンと、娘のように可愛いと思っていたアカリ。
現実離れした美女と美少女二人が俺に向けるとびきりの笑顔が、俺には草食動物を仕留める肉食獣の顔にみえた。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
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結局、長いレクチャーのあとは、美女と美少女からの実践訓練になりました。
なんて、幸せ者なんだ。ルーは。
どんな訓練をされてしまうのか妄想が止まらない方ブックマークよろしくお願いいたします。




