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第28話:党の構成と権力争い

「うーん、まぁよくある勘違いではあるのよね」


「マロン様!ルーを甘やかしてはダメなのじゃ。党の構成なんて、小学生で習うことじゃ。やっぱり男はポンコツじゃ。こんなやつに私とマロン様の貴重な時間を使わなければいけないとは……」


 少し困ったように笑うマロンとはガミガミ小言を並べるアカリを前に、俺は恥しさで消えたかった。


 確かに小学生で習う。

 アカリの言う通りだ。ただ、それは男には関係のないこと。絶対に女性しかなれないのだから。党の上級幹部には。


中央政治局常務委員フラワーナイン、イヤ、次期はフラワーセブンになると言われているがじゃ、それは中央政治局員リッジ・オブ・フラワーから選ばれるのじゃ。中央政治局員の定員は25名。その中のトップが中央政治局常務委員を兼任するのじゃ。兼任。別々にいるわけじゃないぞ。こんなの小学生でも知ってる常識じゃ」


「か、勘違いしていたのです。申し訳ありません」


 俺は、中央政治局常務委員と中央政治局委員が別々にいると勘違いしていたのだ。中央政治局常務委員が上で、中央政治局委員が下という関係だと思っていた。

 それは勘違いだったようだ。


「役割が違うのよね。本来的には中央政治局常務委員の活動を審議するのが中央政治局委員なの。ただ、権力は中央政治局常務委員の方が強いから上と下に見なされることが、多いけど」


アカリとは対象的にマロンは優しく俺に教えてくれた。


「そ、そうなのですか」


「そうよ。でも権力に格差が出るのは常務委員か局委員かの違いでなく、別の肩書よ。フー様は、中央政治局常務委員であり、国家主席であり、総書記でしょ。さらに軍のトップである党中央軍事委員会主席でもあるわ。フラワーナイン、次はフラワーセブンね。そのメンバーは党の要職に付く。だから権力が生まれるの」


「それではシー様も……」


「そうね……。はっきり言って今のシーは何も持っていないのと同じよ。肩書は国家副主席だもの。何もないのと同じよ」


「え、そ、そうなのですか?」


「じゃ、じゃがシー様は次期国家主席候補の筆頭じゃ」


「そ、そうですよね。で、でも何故シー様が……?」


「ルー!!貴様、シー様が次期国家主席候補という事を疑うのか!」


「い、いやそういうわけでは。でも、熾烈な権力争いがある中で、シー様が次期国家主席ということは誰も疑ってないので」


「あらー、やっぱり男の子だからか。何も知らないのね。まずね、現中央政治局常務委員フラワーナインのうち、新中央政治局常務委員フラワーセブンになれるのは二人だけなの」


「そ、そうなのですか……」


「そう。それは中央政治局常務委員に定年があるからよ。30歳を越えたら次の任期にはなれないの。現在のフラワーナインで30歳未満なのは、シーとそして、フー様の後継者と言われてるリー様だけよ」


「だから、シー様が次期国家主席だと」


「そうね。元々、五年前、現中央政治局常務委員フラワーナインを選ぶときに、さらに次の世代を見据えて、経験のためにシーとリーが選ばれたの。当時、十四歳。政治局委員の経験もなく飛び級での選出だったわ。アカリなんかまだ赤ちゃんね」


「い、いや、マロン様……、流石に赤ちゃんでは」


「そんな若いときに……」


「そうね、改めて考えるとすごいわよね。ただ、リー様は当時から神童の呼び声高かったわよ。シーも、まあ、その世代では、注目はされてたわね」


「でも、リー様でなく、シー様の方が次期国家主席に」


「そう、実力や実績だけならリー様の方が、何枚も上手ね。シーは今でもそうだけど、当時もパッとしなかったわ」


「マ、マロン様!それはシー様に不敬じゃ」


「いいのよ。事実だから。当時から皆がフー様の次はリー様だと思ってたわ。でも、それを面白くないと思っていた人がいた……。コウ様よ」


「前総書記のコウ様ですか……」


「そう、コウ様は自分の息のかかったものを中央政治局常務委員フラワーナインに置いて、引退してからも党を支配してるようなものよ。現中央政治局常務委員フラワーナインではシュウ様がそうね。で、次はシーを傀儡にと考えているのよ。当時のシーは実績も実力もなく、あるのは血統だけ。シーは、建国の英雄、八大元老の血を引いてるからね」


「……でも、血統は党では特に評価されないのでは」


 平等を謳う党では、むしろ血統は唾棄すべきもと考えられている。


「シーは、意外かもしれないけど、当時から可愛がられたというか人気はあったのよ。多くのエリートと違ってメンツを重要視しないし。ボーッとしているから自らはあまり話さないけど、黙って人の話は聞いてくれるしね」


「そうじゃ、シー様は人望があるのじゃ。私なんかを秘書につけられても、嫌な顔するどころか、微笑んで励ましてくれて……」


「え、アカリ様はエリートなのですから、何もおかしなことは……」


「阿呆!中央政治局常務委員フラワーナインの秘書がこんなペーペーで良いわけないじゃろ。他のメンバーは皆ベテランの秘書が付いてる。私のせいで、シー様が裏でどんなに馬鹿にされたか……」


「アカリはいつからシーの秘書を?」


「三年前じゃ……」


「そう、まぁレイあたりがやりそうなことね。シーの足を引っ張るために。でもそんな歳で、シーの秘書なのよ。胸をはって頑張りなさい」


「うー、ま、マロン様……ありがとうございます……」


 何か溜まっていたものがあったのだろう。アカリは泣き出してしまった。


 アカリは、幼くして党員のしかもトップ層になっているのだから、実力もあるし何も苦労などない、超エリートだと思っていたが、今目の前で泣いてる姿は、年相応だ。


 そんなアカリの頭をマロンは撫でて慰めている。

 

「まあ、話はそれてしまったけど、五年前、シーは中央政治局常務委員フラワーナインに入った。誰もが神童リー様が次期総書記だと考えてたのにそのリーよりも高い序列で。それはコウ様率いるハクモクレン閥とフー様のブルーローズ閥による派閥争いの妥協の産物よ。シーの実力がリー様に勝っていたのでなく、コウ様の影響力が大きかった」


「シー様は、ハクモクレン閥なのですね……」


「そう見られることが多いわね。シーは中央政治局常務委員フラワーナインに入る前、短期間ハクモクレン市の書記長をしたから。ハクモクレン市の幹部になるのはコウ様のお眼鏡に叶った人だけよ」


「でも、シー様は派閥関係なく腐敗と闘うと……」


「シーはコウ様に従っているフリをしていただけ。というか、権力争いから出来るだけ身を遠くに置いていたわ。だから、フー様も、シーの中央政治局常務委員フラワーナイン入りを承諾した。コウ様が当時、本当に中央政治局常務委員フラワーナインに入れたかったのはボアだったのよ」


「ボ、ボア!!あの!?」


「ええ、君が丸裸にしたボアよ」


「い、いや、それは……、」


「ふふふ、その事実を知ってる人は本当に少ないけど、知っている人なら誰もがこう思って笑うわよ、『ああ、ボアの呆けた顔が見たかった』って」


「い、いや、ほんとに、その……、それはシー様のお力あってのことで……」


「本当に君はシーから聞いた通りの子ね。普通の男ならもっと自慢するでしょ」


「い、いえ、ははは……」


 俺は笑って誤魔化した。もし、俺が自分のやったことを吹聴するような男なら、はすでにシーによって処分()()されていただろう。

 

 とはいえ、それをわきまえてる男という評価も同じくらい危険だ。こんな時は笑って誤魔化すに限る。


「フー様はボアの中央政治局常務委員フラワーナイン入りだけは断固反対してた。当時も成果と実力なら党でも指折りだったけど、それ以上に黒い噂は絶えなかったから。それにこう打算してたはずよ。『自分の後継者であるリーはボアには勝てないかもしれない。でも、シーなら確実に勝てる』と」


「それでは、今もフー様はリー様を総書記にと!?」


「……それは、とうかしら。このまま何もしなくてもリー様は首相になる。実務のトップよ。肩書は権力を生むけど、それは実力を伴ってればの話。シーにお飾りの総書記をやらせて、実質リー様が党を掌握する……。フー様、いえ、ブルーローズ閥はみなそう考えてるのではないかしら」


「コウ様、フー様、どちらについてもシー様は、実権を握れない……」


「そう。だからこそ、新中央政治局常務委員フラワーセブンが誰になるか、それが重要なの。そして、それを決めるのが、君も知ってるわよね。南頂海会議。実質、華の国の将来が決まる秘密会議よ」

 


 

 

 

  


 

ここまで読んでくださりありがとうございます。

また、ぜひ↓の☆☆☆☆☆でご評価いただけますと嬉しいです。


マロンさんとの勉強回です。


マロンさんは、家庭教師に対する漢の願望がすべて体現されたような方ですね。


柔らかくて、優しくて、きっといい匂いもするでしょう。


一度でも家庭教師願望持った事ある方、ブックマークよろしくお願いいたします。

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