第5話:殺人の隠蔽
どのくらいそこで呆けていただろうか……。
俺はずっと尻餅をついた体勢のまま動けずにいた。
不意にコテージの入り口が開き、玄関から人が出てきた。
出てきたのはもちろんオウであった。しかし、もう一人若い女が出てきた。
煌びやかな服装で上流階級のファッションを身に付けた、明らかに警察関係者ではない姿だった。
オウが肩を抱いており、大事そうにエスコートしている。顔はうつむいてよく見えない。
「ターニャ様、まずは自宅に戻って落ち着きましょう。」
足元がおぼつかない女を支えながらオウは言った。
あのオウが、こうまでして丁寧に対応する相手、そして、ターニャという名前。
その二つで女が誰か俺は心当たりがついた。
女はターニャ・ライ。
この市のトップの妹だ。
確か弁護士をやっており、やり手だという噂だ。
もちろん、それは弁護士としての能力でなく、姉の権力を上手く使って蓄財する能力のことだが。
この市のVIP中のVIPが、死体が出たというコテージから出てきた。
しかも、憔悴した様子で。
当然、ターニャはその死体と何らか関わっているのであろう。ターニャが殺したという可能性も大きい。
これは大スキャンダルとなる。いくら市を牛耳っていようとも、親族が殺人事件を起こしたら、中央が黙ってない。
だとしたら、権力者がやることはひとつ……、
――隠蔽だ。
つまり、ターニャは誰かをこのコテージで殺害した。
そして、それを揉み消すためオウはここに来た。いや、呼ばれたのか。
先ほどの思力は、コテージの中にいるであろう捜査関係者を隠蔽に協力させるためであろう。
そうなると、俺の立場は今非常にマズい。
なぜなら俺は今、オウとターニャが事件の現場から出てくるところを目の当たりにしている。
もし、先ほどのオウの思力が俺を廃人にするつもりで放たれたものなら……。
そして、コテージから少し離れた俺のところまで届く思力を使ったということは十分その可能性はあるのだが、俺がただ尻餅ををついてるだけなのは、オウにとっては、都合が悪い。
「おい、そこのお前!!」
案の定、オウは俺の存在に気づき怒気を向けてきた。
「どっかでサボってやがったな。だから男は!手間をかかせやがって」
そう言って俺を支配するための思力を練りだした。
もう一瞬後には覚悟を決める時間もなく俺は廃人になってるであろう。
なんとかならないか、せめてもの抵抗で、俺はオウが炎を作れないよう、辺りを湿らせるイメージの思力を練った。こんな弱い思力ではすぐにオウの炎は勢いよく燃え盛り、時間稼ぎにもならない。
その時、ターニャがよろめいた。
「ターニャ様!」
オウは、俺に向けようとしていた思力を、霧散させ、ターニャを抱き止めた。
「大丈夫です。オウ様。ただ今日はしばらく一緒にいてくださりませんか」
「わかりました。もちろんですとも」
オウはそう言ってターニャをより強く支えた。そして、俺を睨み、
「おい、お前は明日までここを見張れ。私の許可なく誰も入れるな」
と怒鳴った。
「は、はい!!。承知しました!」
俺は尻餅の体勢から急いで直立不動の体勢になり、大声で命令を受けた。
その時には、オウはターニャを支えながらこのホテルの本館に向かっていった。
ここまで読んでくださった方ありがとうございます☆
オウはずっとピリピリしてますね。
そんなS属性満載の美女でありますが、皆様はSなお姉様好きですか??
ターニャはどんな事件を起こしてしまったのでしょうか。
政治家の親族、しかもいわゆる上流国民が殺人なんて非現実的と思った方は、ぜひ検索を☆
ターニャは描写しませんでしたが、もちろんとびっこの美女(かわいい系)です。
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