第3話:公安局長 オウ・アルシャン
ナンシャンホテルは、ツバキ市の高台にある、長期滞在用の高級リゾートホテルだ。
メインのホテルの他、コテージがいくつかある。
死体が出た現場もそのようなコテージの一つだ。
コテージと言っても高級住宅のようなもので、一般人が泊まれるような場所ではなかった。
俺の月給では一時間分にもならなそうだ。
「応援に来ました。交代します」
警備をしていた女性にそう声をかけた。
「そう、よろしく」
警備していた、若いおそらく新人である女性は、特に礼もなくそう答えて、コテージの中に入っていった。
この女もすぐに上に立ち、男を消耗品のようにこき使うようになるんだろう。
俺は彼女が立っていた場所に同じように立ち、警備についた。
1日ずっと立っている。それが俺の今日の仕事になった。
いつまでなのか、交代はあるのか、トイレはどうするのか。そんなことは、上は一切気にしない。
特に警備してるのが男ならなおさらだ。
ま、こちらも適当に力を抜くのだから、お互い様だが。
この世界では何事も目立たずが鉄則だ。
ただ立っている事以外やることがなくなった俺は、元の世界と今の世界を頭の中で比較し始めた。
この世界では、国に関わらず女性が支配している。
民主主義の国も、独裁の国も色々あるが、支配層が女性で占められているのは変わりない。
そんな世界で俺は、華の国で生まれ、警官として暮らしている。
華の国は、一党独裁で共生主義を標榜する国である。
世界三大文明の一つに挙げられる歴史を持ちながら近代化に失敗し、当時の列強国からの侵略を受けた時代もある。
今は世界有数の人口を武器に、急速に大国として台頭している。
(まるで父さんそっくりだな……)
俺は日本のネット民が隣国を皮肉で煽る時の呼び名を思い出していた。
そう、華の国は、歴史、文化、統治システムなど、日本の隣国と共通点がたくさんあった。
その一つが一党独裁だ。
この国は党が国の上にたち、党の指導によって国を導くという名目で党が国全体を支配していた。
俺の所属する警察機構(公安と呼ばれる)もある一定以上から上の役職は党員が就いている。
そして、男で、下っぱの俺が党員になれないのは言うまでもない。
「!?」
気配を感じて、俺は緩んでいた気を引き締めた。
まだ見えないが猛烈なプレッシャー放つ何かがこちらに近づいて来るのが分かる。
上司が言っていた武装警官だろうか。
だが、武装警官は、対犯罪組織の実力部隊。しかもエリート中のエリート部隊だ。こんな現場に来る理由なんて思い付かない。
プレッシャーがより強くなった時、ひとりの姿が見えた。
俺はあまりのプレッシャーに、複数人、それこそ武装警官一部隊を想像していた。
しかし、そのプレッシャーを放っていたのは一人であった。
トレードマークの赤い髪と燃えるような瞳。
現れたのは、この市では知らぬものはいない実力者。
公安と武装警官トップを兼任する、市のナンバーツー
――オウ・アルシャンであった。
ここまで読んでくださった方ありがとうございます☆
3話目にしてやっと第一部のメインキャラクターの一人の登場です。
プロローグにも出てきました。
絶世の美女です!!。
もし読んでそう感じなかったら脳内補完よろしくお願いいたします!!
彼女がどうしてプロローグの事件を起こしたのか?、スリーサイズは?彼氏はいるのか?
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