現在時間軸SSその1:日ノ本の新首相
一度完結させましたが、時代が動くのを感じたので。いや、大喜利大会に感動したので。現在進行形の時事をエピソード化します。
(シーはほくそ笑んでるだろうな……)
画面に映る日ノ本の首相の答弁姿をみながらルーは暗澹たる気分になった。
この答弁の様子は、今、華の国全土で繰り返し、繰り返し放送されている。
もちろん、実際に日ノ本の首相が発言した内容を過激なまでに捏造して、翻訳した字幕付きだが。
これを見た華の国の民は、全員がこう理解している。
日ノ本の首相は、大湾を守るために華の国を、攻撃する準備があると発言したと。
(実際は……、どんな発言だったけ?)
ルーは十数年前の薄れた記憶をなんとか思いだそうとしていた。
この世界に転生して、十四年。さらに前の世界でもずいぶん前だった気がする。
(確か、集団的自衛権の成立条件だったよな……)
この世界と前の世界はまったく同じような事が起こる。
この世界の日ノ本の首相も前の世界の首相と同じようなことを言ったのだろう。
(シーにとっては、日ノ本のオンゴールだろうな。いや、それも計算か……)
もしこの発言が合星国の大統領が言ったものなら、今の華の国の国力とシーの力なら、黙って無視、遺憾を意を報道官にさせるくらいしかできなかっただろう。
ただ、そんな弱腰をシーの政敵は見逃さない。
シーの権力を削ぐためにここぞとばかりに糾弾するだろう。
だが、日ノ本なら別だ。
正式な軍隊も諜報組織も、持たない丸裸な国。
華の国が少し脅せば慌てふためき、泣いて謝ってくるだろう。
最近、失点続きのシーにとっては久々の得点だ。
日ノ本に誕生した久々の有能な政権。
前政権までは、華の国の諜報策略が浸透し、意のままと言わずともある程度操れる体制であったが、その体制を一人の有能な者がひっくり返し、華の国の息が及ばない政権になった。
(確か、質問した野党の者には、諜報部が接触してたな)
シーは、新たに生まれた有能な日ノ本の政権にダメージを与えようとしたのだろう。
意のままに動かせる日ノ本の内通者を使って。
シーの野望。
すなわち大湾の支配。
武力で支配するなら合星国との衝突は避けられない。
公開されたシミュレーションでは、日ノ本の支援がある限り、華の国は合星国に勝てない。
それは秘密裏に行われている華の国の軍部のシミュレーションでも、同じ結果だ。
だから、日ノ本と合星国の離間作戦は必須なのだ。
あの傲慢なる富豪メリル・カードが大統領に再任した時点で、日ノ本の首相は、華の国の息のかかった醜く弱い、それでいて独りよがりの無能な首相であった。
華の国の大湾侵攻まで、その政権が、続いてくれれば、
離間作戦は成功だっただろう。
実際、メリル大統領は、まったく日ノ本の首相を相手にしなかった。
ただ、前首相の無能さをシーは過小評価していた。
政権は一年も保たず、新しい者が首相となった。
――サナ・ヤマモト。
現首相の彼女は有能だった。
そして、日ノ本で有能な者は、もれなく華の国にとっては敵となる。
サナ首相は就任一週間で、カード大統領と会談し、二人して軍人の前でポーズを決めるほど意気投合した。
支持率もここ数年にないくらい高い。
シーにとってはこの政権をいかに内部から崩していくか。
それが大湾侵攻の前哨戦だ。
サナ首相の発言に対して恫喝に近い声明をあらゆるルートで表明し、日ノ本の民を恐怖に貶めた。
(あの大使だけは、後々消されるだろうな)
シーの関心を買うためか、無能な大使が「首を切ってやる」とまで表明してしまった。
あの発言はあまりにもやり過ぎだ。
華の国が世界からどう見られるか、見られているか。
それが分かっていないわけでない。
「首切り」発言のせいで、華の国は、落とし所のハードルが上がってしまった。
シーの失政続きで、今や経済はボロボロで、民には不満のガスが充満しており、それがいつどう爆発するか分からない。
日ノ本に対して勇ましい事を言って、結局大したことが、できなかったら、それはそのまま怒りが党中央に向けられる。
だから、今回の落とし所は相当ハードルが上がってしまった。
日ノ本の新政権は、発言の撤回や謝罪する素振りはない。
従来の方針と変更ないと言い続けているだけだ。
(何が導線に火をつけるか分からない。あらゆる事態を想定しておかないと……)
ルーの目的は、シーの独裁を崩し、華の国の大湾侵略を、食い止めることだ。
もうあまり時間は残されていない。
彼女の独裁を止めてみせる……。
書き溜めなしなので、更新は一週間くらい。
今、イオン岡田の名前とか考えてます。




