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94.カラクリ箱

「…クレア、お父上が最初から命を狙われていたのかどうかはわからない」

 いつの間にか頬を流れる涙で、ルーカス様の顔も、ザックさんの顔もぼやけていく。

「君が昨夜一晩で気づいた事…つまり、一連の事件の裏側に元王族がいる事に、ハワード殿は少しずつ、少しずつ近づいたのだと思う」

「一連の……事件…」

「ああ」


 ザックさんがルーカス様の言葉を繋ぐ。

「クレアちゃん、この国には今新種の薬物が出回っている事は知ってる?」

「薬物…ですか?」

「うん、そう。薬物はね、時にどんな火薬や武器よりも簡単に国を滅ぼすことが出来るんだ。…人を廃人にして国力を削ぎ、売りつける側に莫大な富を与える。…静かに静かに国を弱らせて、弱った所を…簡単に攻め滅ぼすことができる」

「ーー!!」

「ハワード殿はこの事件をずっと追っていた。…組織の一員として」

「父が………」

「…だが真相に近づくにつれ、組織では追えない事にも気がついた」

 そう、そうだった。私とオリバーがルーカス様の仕事に気づいた大きな要因……。

「…薬物を出回らせているのが、王族だから…ですね」

「…そうだ」

 ザックさんも静かに頷く。


「父は…私では解決は難しいだろうと思って、後のことをルーカス様に託したのでしょうか」

「いや…そうとも言い切れない気がする」

「どうして…ですか?」

「ここにいるザックだ」

 ルーカス様がザックさんを親指で示す。

「え、俺!?」

 ザックさんが本気で驚いた顔をする。

「非常に納得し難い事だが、ハワード殿の描いた予定図の中に、コイツが入っている」

「「えっ!?」」

「クレアならすぐにわかるだろう。コイツの奥方の名は……クラリス・バートリーという」

「ええっ!?バートリーって、あのバートリー夫人の!?」

 父の残した詩集の、あのバートリー夫人!?


「ちょ、ちょっと待て!クラリスとハワードさんに何の関係が……!」

「ザック……貴様、私に嘘が通用すると思うなよ…?お前、奥方と出会ったのはハワード殿の事件の後だと言ったな…」

「あー……言った…かな?」

 ザックさんの目が、完全に宙を泳いでいる。

「お前…クラリス殿とは大学時代からの付き合いだろう!」

「げっ!そこまで調べたんか!プライバシーの侵害だぞ!」

「組織にいる人間にプライバシーなど無い。洗いざらい全て調査済だ。なぜつまらん嘘をつく!話がややこしくなるだろうが!」

「お、お前のせいだろ!愛だの恋だの、そういう話を毛虫を見るような顔で聞くだろうが!学生時代の彼女と結婚するなんて言おうもんなら…!」

「…という訳だ」

「は、はあ…。では、もしかしたら私はザックさんを好きに………ええっ!?」

「はあっっ!?やめてやめて!俺まだ死にたくない!新婚なんだって!」

「私だって初恋が横恋慕なんて嫌ですわ!」

「「……………。」」

 2人で恐る恐るルーカス様の方を見る。

 どうにも怒っていいのか喜んでいいのか微妙な顔をしているのが見て取れる。


 ザックさんがルーカス様をチラチラ見ながら話し出す。

「あー…ま、違うな。ハワードさんに俺とクラリスの事がバレてたんなら、よくわからんが、それきっかけでどの道お前に行き着いたって事だ。うんうん」

「そ、そうですわね。本は…もしかしたらザックさんに差し上げたかもしれませんが…ああ、怒らないでくださいませ!ええと、ネクタイピン!そう、あれはあなただから贈ったのです!ええ、間違いありません!」

「…ネクタイピン」

「ええ、ネクタイピンですわ!」

 何なのでしょうこの展開は。涙もすっかり枯れてしまいましたわ。

「……少々失礼する」

「「えっ!?」」


 ルーカス様が突然立ち上がり、執務室の奥へ消えていく。

 ザックさんと2人で困惑の中マイペースな彼を待つ事数分。

 ぼんやりとした顔でルーカス様が戻って来て、一言ポツリと呟いた。

「……開いた」

「「は?」」

「開いた。ハワード殿の……最後の遺品」

「ええっ!?」

「は?は?何?何の話?」

 ルーカス様の手に握られていたのは、父の残した料理本から出て来た小箱。表面がツルリとした…カラクリ箱……。

「中身は……何でしたの…?」

 まだ現実に戻って来れないルーカス様が、握りしめた手の平を開く。

 現れたのは、小さく折り畳まれた紙。

 それが開かれた瞬間目に飛び込んで来たのは……


「同意書……未成年者の婚姻に関する……同意書!?」

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