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73.二人の昼休み

「ねぇオリバー、あなた…か、彼氏ができた…わけでは無いわよね。あ、いいのよ、そういう世界もある事は……」

「ベゼル…君こそ随分と守備範囲が広くないかい?」

「「…………はぁ」」


 お互いにわかってはいる。

 どうやら私たち2人には、強烈な身辺警護がついている。

 問題は、なぜオリバーに……という事だけど。


「オリバー、もしかして私があなたを父の本探しに付き合わせたから……」

「ああ…君が気にする事じゃないよ。そうじゃなくても、周りからは僕ら……どうやらエドワーズさんに抹殺されそうな関係だと思われてるみたいだし」

「まあ…!オリバーには振られたのにねぇ?」

「………その話、鍵かけてどっかに捨てて来てくれない?まあ君も聞いただろうけど、前のアンダーソンの件といい、僕らは2人一緒に守られる方がいいんだよ。そうすればお互いの安否を気にして身動き取れなくなることも少なくなるだろ?」

「……そうね」

 やっぱり私のせいじゃないの。


「それよりオリバー、オリバーの護衛の方……リーさん?モデルみたいね」

「ああ…なるほど。だから彼が僕の方に……」

「?」

 私の側で付かず離れず護衛してくれているローさんと、オリバーをそれとなく護衛しているリーさん。

 2人が不思議なところは、私たちの目にはしっかり映る範囲にいるのに、他人には全く関心を持たれないところだ。

 特にリーさんははっきり言って誰もが振り向くような容姿をしているのに。

「あの2人、親子らしいよ」

「えっ!?そうなの?」

 …きっとローさんの奥様は相当に美しい方に違いないわ。


 午前と午後の授業の合間、私たちは昼食を共にする。

 決まり事という訳ではないが、別の授業を取る事が増えた挙句、なぜか最近細々とエドワーズ様からオリバーへの伝言を預かる事が増えたため、自然にこうなっている。

「エドワーズ様なんとおっしゃってるの?」

 オリバーの声が少し小さくなる。

「…パーティーの警備体制の件だよ。そもそも招待客以外が入れないようにするための船上パーティーなんだけど、マーティンのとこの件もあるだろ?招待客全員が安全って訳でもないから……」

「なるほど……」

 逆に船の上だからこそ危険な事もあるわけね。


「それより君、誕生日プレゼントの件は解決したの?」

「う…うん、いえ、まだ……」

 だって考えれば考えるほど難しいんですもの。

「あと3日だよ?」

「もう品物は決めてあるの。ただ何か足りないような気がして……」

 オリバーが溜息をつく。

「簡単じゃないか」

「簡単…?」

「そうだよ。君…まだエドワーズさんに言ってない言葉があるだろ?」

「…え?」

「君はお嬢様だからねぇ…。世間の女性のガツガツっぷりを見習って、少しはそっち方面の手練手管を覚えた方がいいね。ぼんやりしてるとライバルに掻っ攫われるよ?」

「!?」

「そんな君にはこの本をプレゼントしよう。対象年齢13才から15才……うん、君にはこの位が丁度いい」

「えっ、えっ?」

「んじゃまた帰りに!」

「オ、オリバー!」

 オリバーが去って行く。1冊の本を残して。

「なに…?なんなの?」

 

 困惑しながらも、テーブルに残された本の題名を見る。

 『恋を叶える魔法の言葉』……

「え、ええっ!?ま、魔法!?」

 この世界に…そんな言葉が存在したなんて……。

 衝撃を受けつつも、午後からの授業は講義内容そっちのけで読破してしまった。

 結果、ますます頭は混乱する事となる。




「あっはっはっは!…ぷぷ、あーはっはっはっは!」

「んもう、オリバー!やっぱり私を揶揄ったでしょう!!」

 帰りの車の中で本の内容についてしつこく聞く私にオリバーは爆笑で返事をする。

「おかしいと思ったのよ!〝あなたってテニスが得意なのね。さっきのサーブすごく素敵だった〟とか、〝数学で1番だなんて頭いいのね〟とか、エドワーズ様にいつ使うのよ!」

「あっはっはっは!真面目に読んだんだ!?あっはっはっは!」

「もうっ!」


 笑いの止まらないオリバーではあるが、彼の言わんとする事は何となくわかった気がした。

 言葉…か。

 私が1番苦手な事。

 それがプレゼントになるのなら頑張ってみるべきなのよね……。

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