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21.堂々と

「それでね、セドリックったらこの間街でその元恋人とバッタリ会ったとか何とか言っちゃって、二人でカフェで1時間過ごしたんですって!!クレアちゃんどう思う!?」

「は、はい!ええと、その…いちいち報告しなくていいと思います」

「……………。」

 …違ったのね。きっと違ったのだわ。

「その通りよ!さすがクレアちゃん!そんな話聞きたくも無いわよ!通りすがりの女ならまだしも、昔の恋人と会ったとか何の報告よ!」

「あ…でも報告が無ければ無いで、ますます怪しいというか…」

「……………。」

 こ、これは言ってはいけなかったかしら…。

「その通りよーー!!もし噂好きのご夫人なんかに聞かされた日には刃傷沙汰よ!!」

 ど、どうしましょう!私絶対に余計なこと言ったわ!


「はぁ…セドリックはね、オリバーにそっくりで大していい男ってわけじゃないの」

 …どうしましょう、頷いていいのかしら。

 私…こういう会話は経験が…。

「でもね、なぜだか昔から良くモテるの」

「まぁ…!それはわかりますわ。私はオリバーさんの顔の雰囲気がとても好きですもの」

「またまた!いいのよ、正直に地味な顔だって言ってちょうだい!」

 …地味。見てると落ち着く顔でいいと思うわ。


「それでね、私はセドリックのこの行動は浮気だと思うわけよ」

「浮気…ですか?」

「そうよ!偶然会った相手が隣のマーシャ夫人だったらお茶なんかしないでしょう?」

「な、なるほど…?」

 一理あるのかしら…?

「だからセドリックにそう言ったの。浮気者!って。…そしたらね、結婚して20年も経つのにくだらない事で嫉妬するなって」

「…嫉妬」

「…だってしょうがないじゃない?私は16歳の時のまま何も変わらないのに、彼はどんどん出世してどんどん偉くなって…。周りに沢山若い子だっているのよ?私…おかしいのかしら」

 嫉妬……。


「…私、恋愛経験が無いのです。だから、何が正しいかどうか本当にわからないのですけれど、堂々と嫉妬が出来る関係というのはとても価値があると思いますわ」

「…え?」

「相手のことを本当に好きだという事なのでしょう?…私はこの先彼が誰と会っても、誰と恋をしていても…きっと何も言えないままですわ」

「………クレアちゃん、その〝彼〟って…まさか男前の婚約者のこと?」

「えっ!私そんな事言いました?」

「具体的に〝彼〟って言ったわねぇ。クレアちゃんの婚約者の方、すごく男前なんでしょう?なぜかオリバーが自慢げに話してたわ」

「…はあ。おとこまえ、ですか?」

「そうよお。オリバーがね、頭が良くて綺麗な黒髪で切れ長の瞳の男前だって私に自慢するの。あの子変じゃない?昔から変わってるとは思ってたのだけど。私の息子なのに勉強大好きで…勉強のしすぎで頭おかしくなったのかしら…ブツブツブツ…」

 私…無意識に彼のことを思い出したのかしら。彼の顔なんて出来れば思い出したくもないと思っていたのだけれど…。

 

「なんだか難しい関係なのねぇ…。もっと単純でいいじゃない。ここで口にしてしまうって事は、本当は嫉妬だってしたいし、堂々と彼は私のものよ!って言いたいってことでしょう?」

「…え?」

「そんなものよ。別に私だってセドリックに20年前と全く同じ恋心があるかと言われたら、それは無いわよ」

「えっ!」

「当たり前でしょ?顔見るたびにドキドキするような時期はとうの昔に過ぎたわよ。でも私はセドリックに浮気者って詰め寄る権利があるし、セドリックはそれを言われる義務があるわ」

「それは…どうして?」

「私が一番可愛いかった頃を自分のものにしておいて、後は知らんぷりなんて許さないわよ!」

「知らんぷり…」

「クレアちゃんだってそうよ!あなたは今が花盛りで一番美しいのよ?そのクレアちゃんを自分のものにしようとする男には堂々と詰め寄ったらいいのよ。毎日呪いの手紙でも書いたらいいわ!」


 私は…彼に何を言いたかったのかしら。

 あんなに感情的になって、彼に何を伝えたかったのかしら…。

 恋や嫉妬では無いと思うの。

 それよりも前の段階なのよ…。

 もっと、ずっと前の…。


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