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111.プレゼンテーション

「オリバー、ちょっとこれ、おかしくない?」

「……だね。何でこんなに大勢………」


 オリバーに勝負を挑んで約2週間。

 あまり時間をかけて策を練るゆとりが無いため、私たちは急ピッチでそれぞれの〝研究〟を仕上げた。

 いや、正直に言うと、詰めの甘さは重々承知。中間発表としても完成度が低い。

「クレア嬢、なんか…悪いな。俺らの実家のために頑張ってくれたんだろう?」

「アーロンさん…」

「どういう結末になっても、僕ら君への感謝は忘れないよ。…もちろん、オリバーにも」

「エディさん…」


 そう、これは始まりに過ぎない。

 アイデアを形にして、最終的に売上に繋げなければ意味は無いのだ。

 だけど、ベゼルとエドワーズ以外で、レアード公爵と戦おうとしてくれた人を何とか助けてあげたい。

「今から敗戦の弁なんて必要ありませんわ。…私は勝ちに行きます。一緒に勝ちに行きましょう?」

「「……!」」


 ニッコリと微笑みかけたその時だった。

「…君はオリバー・カーソンだけではなく、いたいけな若者2人まで地獄に落とすつもりか」

「ルーカス様!」

 何事かを小声で呟きながら、ルーカス様が現れた。

「あ、エドワーズさん。今日はよろしくお願いします…と言いたい所ですが、何なんですか?あの面子は!国中の名だたる商会関係者が集まってるじゃないですか!!」

「ああ…いや、私とセドリック殿だけの前で発表会をしたところで、何の偽装にもならんだろう。だから、懇意にしている商会関係者に声をかけたのだ」

「だからって、だからって…!三大商会の会頭が大学の講義室にいるなんて非常識も甚しいでしょう!?」

 三大…まさかロジャーズ商会とウィルキンソン商会も…?

「セドリック・カーソンが最前列に座っている時点で非常識では無くなった。…そろそろ時間だ。頑張りたまえ」

 そう言って彼もまた講義室の最前列に陣取った。


 講義室内の様子を固唾を飲んで見守っていた私たち4人だが、こうなったら仕方がない。

「オリバー、アーロンさん、エディさん、先陣は私が切りますわ。…骨は拾って下さいまし」

「「…なんて勇ましい……」」

「アホな事言ってないで、いつも通りニコニコやって来な」


 オリバーに呆れ顔で見送られ、私は壇上に立つ。

 女は度胸、でしたわね!

 シンシアさん、見守って下さい…!



「…本日はお忙しい中、私どもの研究発表にご臨席賜りまして誠にありがとうございます。私はクレア・ベゼルと申します。それでは早速ですが、私は飽和したこの国の菓子産業に新たな需要を生み出すために、付加価値を付けるという点に着目いたしました………」


 私とシンシアさんが目をつけたのは、結局、菓子の味は二の次なのでは無いか、ということだ。

 王室御用達ともなれば話は別だが、目指すところが大量生産である以上、庶民の口に入るものに限って言えば、〝雰囲気が全て〟。

 要はセドリックさんの受け売りなのだが、彼の時代から早10年。この国では、安価でそこそこの味の菓子は既に溢れ返っている。

「…名付けて『今日からあなたもプリンセス!』ですわ!」

 

 お腹に力を入れて叫んだのだが、聴衆全員がポカンとしている。

 …は、恥ずかしい。やっぱりこの名付けは失敗する気がしたのよ…!

「…コホン、ええと、まずやはり、菓子の主要消費者は女性と子どもでございます。ですから、子どもと女性に共通して人気のテーマを探しました。ずばりそれは…〝お姫様〟だったのです」

 これは本当に盲点だった。お姫様に憧れているのはシンシアさんだけだと思い込んでいたが何のその。

 女児向けの御伽噺の主人公は軒並み〝お姫様〟であったし、若い女性は王子様の迎えを待っているというでは無いか。

 …なぜ私にはそういう本が1冊も与えられなかったのか、父を小一時間問い詰めたい。


「というわけで、私は貸衣装とデザートビュッフェのレストランを提案いたします。ドレスアップをして、メイドに給仕を受けながら煌めくお菓子を頂く…。菓子を大量に準備する必要はございますが、付加価値を付けて利益を出す仕組みでございます。皆さまぜひご検討下さいませ」

 お辞儀をして発表を締め括る。

 頭を上げるとやはり講義室中がポカンとしていたが、やがてパラパラと拍手が鳴り出した。

 …恥ずかしいですわ。もう居た堪れませんわ!

 俯き加減でそそくさと廊下に引っ込み、目線でオリバーに合図した。


 一つ頷いて、オリバーが講義室に入って行く。

 頑張って、オリバー。

 そしてアーロンさん、エディさん…!

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