好きな人
日が傾き始め、そろそろ俺達も帰ることにした
結局ユーリとエマが目を覚ますことはなく、エマは俺が抱えて馬に乗ることになった
リーシェには看病の仕方を教えた
水枕を作るための皮袋や盥、額に当たる布などはエマが揃えてくれていた
リーシェに見送られ、俺達は王都を目指した
馬に揺られているのにエマは一向に起きる気配がない
それだけ力を使ったのだろう
行きしに飛ばしてきた分、帰りはゆっくりと来た道を通った
違うところはエマが眠っていることと、俺とカレンが喋れるスピードということ
「なんであの2人を助けた?」
「愛し合ってるのに結ばれないのは可哀想でしょ?」
カレンは小さく笑って「私は無理だったから」と付け加えた
「え?」
「城を抜け出して会いに行ってたの」
門番が言っていたのはこのことか...
「私と真逆で静かな人だった。本が好きでいつも本を読んでた」
カレンが相手のことを話し始めた
「バイオリンも好きだった。彼の音に合わせて踊ると幸せな気持ちになった」
カレンの口から出てくるのは全て過去形で、何も言えなかった
「当たり前のように惹かれて、恋人になった。幸せだった...でも長くは続かなかった」
「どうして?」
「邪魔されたのよ、神に」
寂しそうな顔をしているが、声には静かな怒りを含んでいる
「カレン...」
「この話はまた今度ね」
城の門に着いたのでカレンの話はここで終わった
神はなぜ邪魔をしたのだろう...
アンジェ同士が愛し合う事を邪魔するのは分かる
でも、アンジェと普通の人間が愛し合うのを邪魔する理由は俺には全くわからなかった
エマを部屋へ連れて行き、ベッドに寝かせた
エマも好きな人がいるのだろうか?
二千年前に禁忌を犯したのは誰なんだ?
カレンの話も気になるし、俺達は何のために転生を繰り返しているんだ...




