回し蹴り
なんとかリーシェが会場入りする前に戻って来れた
「なんでそんなに汚れてんの⁉︎」
カレンに怒られ、自分の服を見た
換気用通路の煤がついて所々黒くなっていた
「結構目立つな...脱ぐか」
「なんでそうなるの?え、ここで脱がないでよ!」
「カレンうるさい」
上に来ていた服を脱ぐと、顔を真っ赤にして叫ぶカレン
「ルイが脱ぐから...え?」
ルーシーに頼み込んで下にタイトズボンを着ていて正解だった
上は半袖の白シャツ
その上にストールの替わりに入れてきたワイシャツを着た
長袖なので少し暑いけど、仕方ない
会場の隅で着替えたので騒ぎにはならなかったが、隅から人の輪の中に入れば人が集まってきた
今度は俺が目当てらしい
適当に流していると、リトから連絡が入る
『盗賊動き出したよ。ゆっくりそっちに向かってる』
俺とカレンは顔を見合わす
映像ピアスを盗賊のいる部屋の取っ手に置いてきたので、盗賊の姿はリトからばっちり見えている
すると、リーシェが部屋の中央へ入って来た
カレンがリーシェに近づく
俺は集まってきた貴族達の間を抜け、扉の側に待機する
カレンがリーシェに話しかけた瞬間、扉が開き盗賊が叫んだ
「カント!覚悟ー!」
なんともベタな脅迫文句を言いながら、盗賊はカントに向かい走り出す
「覚悟するのはお前な?」
盗賊の前に出て持っていた剣を奪い取る
背後に回り込み、両手を持ち膝をつかせた
「待て」
声がした方を見るとリーシェがナイフをカレンに向けている
目の前の光景に貴族達は、波が引くかのように我先に逃げ出す
「その人を離せ。この女がどうなってもよいのか?」
カレン...
でもこの手を離せば、逃げ遅れたカントは間違いなく死ぬ
盗賊の背に目を向ける
カレンを助けるには...
カレンを見た
「.....」
真顔だった
怖がるでも怯えるでもなく、真顔
「舐められたものね。私を誰だと思ってるの?」
カレンはしゃがんだと思ったら、回し蹴りを繰り出していた
蹴りはリーシェの手に当たり、ナイフが手から離れ床を滑る
「オルレアンの王女よ?温室育ちのお姫様とは違うの」




