おまじない
不思議な夢を見た
城の中に1人ぼっちの夢
妙にリアルで、どの部屋を探しても誰もいない
なぜかエマの部屋だけ開けれなくて、扉に触れると涙が流れたところで目が覚めた
目の前は見慣れた天井
起き上がり周囲を見渡すと、いつも通りの俺の部屋
時計は5時30分を差している
ベッドから出て、着替えると長テーブルのある広間に向かう
まだみんなが起きてくる時間じゃない、と分かっていても“さっきの夢が現実だったら”と不安になってる自分がいる
ゆっくりと広間を覗くと、サラがいた
何か飲みながら読書をしている
俺の視線に気づいたサラと目が合う
「おはよう、ココア飲む?」
「おはよう、サラ。もらうよ」
本を静かに閉じて、ココアを淹れてくれた
サラの向かい側に座ると、ココアを持って来てくれた
「はい。今日は早起きね」
「ありがとう。うん、ちょっとね...」
さっきまで座っていた椅子に座り直すサラ
「当ててあげようか?」
「うん」
「怖い夢見たんでしょ?」
言い当てられてしまった
「当たり...なんで分かったの?」
「ふふ、怖い夢見たって顔してた」
そんなに顔に出てたか?
「小さい頃のレオンにそっくり」
「どういうこと?」
「私とレオンは17歳になる前からここにいたのよ」
サラは懐かしそうに話し始めた
「10歳の時だったかな?レオンが今のルイみたいな顔して起きてくる日が続いたの。『どうしたの?』って聞いたら『怖い夢見た』って大泣きよ」
冷静でカッコいいレオンも小さい頃は泣き虫だったのか、としみじみ思った
「レオンは眠ることを怖がるようになって、私がおまじないをかけたの」
「おまじない?」
「額にキスするやつ。あれでレオンが泣いて起きてくることはほぼ無くなったわ」
サラがココアを一口飲んだ
「いつからか、レオンが私にもおまじないをしてくれるようになった。で、私は他の兄妹にもかけるようになったという昔話でした」
あれにはそんな意味が込められていたのか...
ただの寝る前の挨拶かと思ってた
「たまにおまじないが効かなくて、起きてくる人もいるけどね〜」
ふふふと笑うサラ
「レオンはカッコいい!って印象だったんだけど、今の聞いたらレオンってなんか...かわいいな」
俺の率直な感想
レオンに言ったら殺されそうだけど...
「ふふ、レオンに聞かれたら...あ、遅かったか...」
「え?なに、がっ!」
いきなり後ろから首を絞められた
「ん?俺がなんだって?」
レオンの声⁉︎
しまった...話を聞かれてたのか!
「そうかそうか。そんなに俺に訓練つけて欲しいのか。分かった分かった」
「そんなの、言って、ねぇ...」
レオンを止められるのはサラしかいない!
と思ってサラの方を見るが、被害に遭わないようにカップを持ってキッチンへ向かっている
「あ、今日の朝食何がいい?」
「スクランブルエッグ。あと、2人分の昼食は訓練場に持って来てくれ」
「は〜い」
呑気な会話が繰り広げられる中、今日の俺の日程だけだ決定した