飛んだ先
頭の中はバルコニーに向かう事しか考えていない
残り10秒...
バルコニーが見えた
3、2、1、0、バァーン
間一髪のところでバルコニーから飛び降りた
飛んだはいいものの、ここが2階という事は考えていなかった
下は運良く芝生だ
爆風で飛ばされ、芝生に転がり落ちる
気づけば横になっていた
満点の星空と、俺を覗き込む綺麗な人
「...大変、怪我してる」
俺の頬に手を伸ばしてくるエマ
頬の傷がふんわりと温かくなる
心地良い温かさに目を閉じる
ああ、この感じ懐かしい...
ポタリと何かが降ってきて、目を開ける
「...!」
降ってきたのはエマの涙
「どっか痛いのか...?」
エマは横に首を振る
「ルイのこと、どれだけ待ったと思う?」
「...うん」
「会えたと思ったら傷だらけだし...」
「ハハ...ただいま、無事でよかった」
どうしていいのか分からず、起き上がりエマを抱きしめた
「...おかえり。助けてくれてありがとう」
俺の背中にエマの腕が回った
「あ〜あ、オルレアンのアダムとイブが出会っちゃった〜」
この時、ローザに見られていた事を俺達は気づかなかった
「いた!」
「レオン、早く!」
セツとサラの声が聞こえた
走ってくるセツと、サラを抱えて走るレオン...が見えた
サラは側まで来るとレオンに降ろしてもらい、俺達を抱きしめた
「2人とも無事でよかった。怪我はない?」
「見ての通りピンピンしてるよ?」
「ああ、俺もエマも無事だ」
サラはまるで我が子を心配する母親だ
「よかった...」
セツもホッとした様子だ
「エマ、無事でよかった」
レオンは屈んでサラの肩を抱き、エマの頭に手を置いた
「うん」
ニコッと笑ったエマにつられてレオンも微笑む
「エマ...すまないが、サラの足を治してくれ」
「先にレオンを治して」
「俺はい「レオン!」」
レオンの肩がビクッと揺れた
「あなたは依頼主への報告がまだ残ってるの!血だらけの格好で行ったら相手を心配させるわ」
さすがサラ
最もな答えだ
レオンが俯くと、エマは黙ってレオンの傷を治した
「サラ、足触るぞ」
少し触っただけなのにすごく痛がるサラ
これは骨折してるな...
サラの足に爆発の時に飛んできたであろう木の板を添わせて、胸ポケットのハンカチで固定する
「ありがとう」
「そっちは上手くいった?」
サラと話すのはなんとなく気まずいので、セツに聞く
「うん。当主はレオンがとどめを刺して、長男は救出済み」
「そうか...ところで、ローザとディックは?」
姿が見当たらない
「そう言えば...!」
『2人は貴族達の誘導が終わって帰ってきてるから、みんなも早く戻っておいで』
リトから撤退の指示が出たので、ブリオスタの城に戻ることになった
帰りも街の屋根を伝い城へ戻るが、歩けないサラはレオンが抱えている
帰る途中、レオンの胸にサラが顔を埋めて静かに会話していた
「さっきは強く言い過ぎた。ごめんなさい」
「...足、痛むか?」
「大丈夫よ」
「そうか...」
なんとか仲直りした様子の2人
レオンのすぐ後ろを走っていたから、会話が聞こえたのは秘密だ