作戦開始
4人で会場へ入り、当主と次男を探した
暗殺のためではなく、挨拶のため
一応、俺達は王族だから他国の王族や貴族にも挨拶しておく必要があるらしい
それが例え、暗殺する“目標”であっても...
メンバーがメンバーなだけあってすごく目立つ
サラもセツも世界的に有名な歌手と演奏家
レオンもバルドの代わりでパーティーに出席することがよくあり、多くの人に知られている
それに加えて、この顔
美形が3人も揃っているんだから、余計に目立つ
それだけじゃない
3人は若いのに品があり、色気がすごい
サラとレオンは22歳
セツは1つ下の21歳
俺が同じ年齢になった時にこの色気を出せるか、と言われたら多分無理だ
『見て、オルレアンの方々よ』
『レオン様とサラ様がお揃いになっているわ』
『今日はカレン様がいらっしゃらないな』
『レオン様には1回でいいから抱かれたい』
中には貴族らしからぬ言葉まで聞こえてくる
『オールバックの方、見たことありませんわ』
『でも、レオン様に似てらっしゃる』
『脱がしてみたいわね』
今、ゾクっとした視線が...
「ルイ、噂されてるな」
微笑みながら話しかけてきたレオン
「あ、ああ...レオン、この中の女に手出してないよな?ヤバい感じする」
「はあ?出す訳ないだろ?俺は小さい頃からサラが隣にいたからな」
お、これは聞き出すチャンス?
「それでサラしか見えてないのか。いつから好きなんだ?」
「あいつ以外見えないな...あれは12の夏...あ、」
目を見開いて驚くレオン
「10年か、長いな〜」
さっき子ども扱いしたお返しでニヤニヤとレオンを見つめる
「お前、ほんと可愛くないな」
「いひゃい、いひゃい」
仕返しに両頬を摘まれる
周りなんて気にする余裕もない
「しゃら!たしゅけへ」
咄嗟にサラへ助けを求める
「レオン」
サラが名前を呼ぶだけで、レオンは俺の頬から手を離した
「お前、いい性格してるな」
「よく言われる」
と、返すとハハッと笑われた
「レオン、ピアノ空いたから行ってくる」
「分かった。ルイにすごいの見せてやれ」
「んー」
セツは返事をすると、サラと一緒に行ってしまった
会場の中央にあるピアノが空くのを待っていたようだ
「セツはピアノが得意なのか?」
「いや、ピアノは寧ろ苦手なはずだ。セツが1番得意なのはバイオリン」
じゃあ、なんでピアノの順番を待ったんだ?
「バイオリンを弾く分にはいいが、サラと合わせるとなると難しいらしい。始まるぞ」
セツが鍵盤に手を置き、サラが深呼吸をする
サラが頷くと、セツが伴奏を弾き始めた
演奏に合わせてサラが歌う
『♪〜〜〜♪〜〜〜♪〜〜』
この歌、聞いたことないはずなのに知ってる
届かない恋を歌ったものだ
歌詞は昔の言葉
意味を知る人はいないだろう
自分でもなんで知ってるのか不思議だ
『あなたは隣にいるのに、私のものになることはない。こんなにも好きなのに...』
これ以上は訳すことが出来ないけれど、サラはレオンに向かって歌っているのだろうと思った
隣を見るとレオンは優しい表情で歌を聴いている
すると、何かを呟いた
『俺も...』
2人の歌が終わると、会場は拍手喝采
サラとセツは男に、俺達はここぞとばかりに寄ってきた女に囲まれた
2人の方を見ると、男がサラの手を無理矢理取って、手の甲にキスをしようとしている
その男こそ、今回のターゲット
「レオン!当主がサラに...え⁉︎」
隣にいるはずのレオンを見る
そこにレオンの姿はなく、当主の手を手を握っていた
俺も急いで3人の元へ行く
「お初にお目にかかります、レーゼル様。挨拶が遅れて申し訳ございません。オルレアン国王代理のレオンと申します」
不自然なくらい満面の笑みを浮かべるレオン
「レオン...⁉︎」
サラもいきなり現れたレオンに驚いている
「レオン王子、私はサラ王女に話があるんだ。退いてくれないか?」
明らかに不服そうな当主
「それは致しかねます」
「なに?」
当主は怒りを露わにした
「サラと話したいからと言って女性の手を男性から取るのは、オルレアンではタブーに当たります」
「それがどうした?」
「レーゼル家はオルレアンを侮辱した、という事でよろしいですか?」
当主の手を骨が折れる勢いで握るレオン
「痛!何をする⁉︎」
手が相当痛かったらしく、茹でタコのように顔を真っ赤にして怒っている当主
「それと、私達に隠してらっしゃることがおありですね?」
レオンは屈むと、当主の耳元で
「私達の妹が先日からお世話になってるそうで...早く返して頂けませんかね?」
と言うと、レオンの顔から笑顔が消えた
「な、何のことだ!」
「サラのことと言い、誘拐なんて以ての外。歴とした犯罪です」
「知らないと言っとるだろう!変な言いがかりをつけるな!衛兵ー!この者達をつまみ出せー!」
衛兵を呼んだことにより、パーティーは混乱
「ごめんなさい...」
サラが申し訳なさそうな顔をして謝る
「サラは何も悪くない。気にするな」
と言って、サラの頭をクシャクシャと撫でる
『ルイ、セツ、ここでの応戦は目立ちすぎるし、相手の数も多い。二手に分かれるぞ』
ピアスからレオンの指示が聞こえる
「「了解」」