始まりの直前に
少し短いですがキリがいいので
・・・・
「痛ってぇな…」
そういって頭をそっとさわりながら手に血がついていないか確認する。
腫れているだけで特に血は出ていないようだな…
頭以外の自分の体を確認しても特に大きい傷は見られない。多少擦り傷があるくらいである。
周りを確認する。
といっても暗くてほとんど周りの状況は確認できない。ただわかることは一番下まで落ちずに山の斜面の少し平らなところで運良く止まれたらしい。これ以上落ちていたらかなり大きいけがをしていたかもしれないな。恐ろしい恐ろしい。まず打撲ぐらいで済んだのがいいくらいだ。
というか気付いたらこんなに暗くなっていたのか。
ケータイを確認すると圏外で時間は20時39分を映している。帰らないと姉と妹に叱られそうだ、早く帰らないとな。
「はぁ…」
早く帰らないといけないのはわかっているのだが、精神的に疲れているのか体動きたくないと言ってる。
「少しだけ…」
そう言って地面に大の字に広がって空を見上げる。月も顔を見せていない山の中で見えるのものはほとんどないが。少し光があれば帰れるかもきれないが…いや、ほんとに帰れるのか?なんなら朝になるのを待つのも…いや、動物なんか出てきたら大変だ。さっさと帰るか…
そう言って体を起こそうとすると
ポツッ。
上から水が落ちてきた。
「雨…か?」
その水は時間が経つほどに回数が増えていき…次第には大雨になった。
ザァーザァーッ
「これはやばいな…どこか雨宿りでもできる場所はないかな?」
そう言って周りを見渡すも全く雨宿りできそうな場所はない…
土が完全にぬかるんで滑る前に上に登って呼ばれた古屋まで戻るか…
そう言って手探りでしっかりとした木を掴んでだんだん上に上がっていく…
5分くらい探してはつかみ一歩ずつ上に登っていく。
「ふぅ…平らな地面。この辺にあるかな?」
少し広い平な地面がある場所に着いたのでそこから道を探して降れば帰れるのだろうが、気絶する前にここにくるまでにはかなり急な階段を登ったので、そこを降るとなると滑ったりすると危険だ。
小屋の中で止むのを待とう。
暗い中そっと小屋を探していたら急に雨が止んだ。
「ん?止んだのか?にしては急にやみすぎと言うか…」
ザァーーーー
「雨は降ってるのに当たらないぞ?…小屋じゃないし、ちっちゃい洞窟でも当てたか?
でもこんなとこに…あったっけな?
まぁちょうどいいしここで休もう…」
そう言って影人は壁伝いに少し歩いて壁に背中を預けて腰を下ろす。
「そういや…」
ふと俺のことを呼び出して一緒に落ちた峰田のことを思い出した。
あいつはどこにいったのだろう。俺より早く目覚めて明るいうちに帰ったか?俺よりもっと下に落ちてまだ気を失ってるとか?
まぁそうなっていたとしても助ける義理はないし助けようと思わないな。あいつのせいでこうなってんだしな。そして俺の心配を全くしなかったデブ山と金のガキは逃げたのか?峰田助けてどっか行った方があり得るな。それか俺の意識ないのにビビって逃げたとか?俺がもう少しケガしてれば警察にでも突き出したんだがな、あまりけがもしていないしなんだか突き出すほどでもない気がしてきたな。
なんて思い出したくもない奴らがどんなことしていたかなんて言うことに施行を割いていたらお腹がすいてきた。
ケータイを確認すると相変わらず圏外ではあるが時間は確認できる。20時59分。もうすぐで21時か…絶対怒られるなぁ明日の朝に帰ったりしたら何言い訳にしても全員うるさいだろう。たぶん圏外じゃなくなった途端に通知が大量に届くのだろう。
そして家に入ると…
姉は「誰よ、うちの影人に手出した女は!タダで済むと思ってんのかしら…そいつ見つけたらどうしてやろう。男なんかに影人が負けるわけないし、女が誑かしたに違いないわ、影人!どこの女に騙されたの!?」
「俺が女に手を出されることなんてないし出されてたとしても朝帰りはしないし、だまされた前提で話すな。そして怖いことをいうな。なんだどうしてやろうかって、もしそうだとしても何もするなよ?」
「するわよ。」
という会話は最低限だな。姉はなぜか俺のことに関することに関してはこの姿勢なんだ。
妹は「この私がいながら違う女の人に手を出したのですか!?私はいつでも…ごほんっ。その人を連れてきてください!影人さんに見合う素晴らしい人間なのか私が見極めます。」
「俺はそんな簡単に女に手を出して朝帰りするような奴に見えるのか?俺は悲しいぞ?」
「い、いえ、そんなことは!ただ…」
とごもごもするところは最低限だな。妹は…俺が自覚できるくらいにはブラコンだな7つ上の兄にはツンツンしてるのに、なんでだろう。
母さんは「まぁ、影人が朝帰りするなんてねぇ…ようやく春が来たのかしら?息子にも…お母さん嬉しいわ。今日は3食全部ごちそうね、お父さんに知らせなきゃ!!」
姉妹「おい!!!!」
までが最低限だな。お母さんは俺の色恋沙汰のなさを相当心配している節がある。
と、ここまで頭ん中で考えていたら…
ピコーン!!
ケータイの通知のような音が鳴る。
『ただいまより、惑星番号B96202。別名"地球"は融合準備期間に入ります。意志ある生物にはステータスが付与され、世界中に未だかつて存在しない生物または物質、ダンジョンなどが出現します。さらに条件が達成されるまで通信等の手段を制限させていただきます。現在公開できる情報は以上です。その他の情報は自力でお探しください。このアナウンスが終わったと同時に世界に変化が起きます。ではこれでアナウンスを終わります。』
という無機質でありながら女性っぽい声が頭の中に直接聞こえてきた
「な、何だ今の…」
「グルルゥゥゥゥ…」