始まりの前に
初めて書いてみます。
お手柔らかにお願いします。
誤字とかアドバイスお願いします。
「おい、天野。ちょっと面貸せや。」
金髪のソフトモヒカンという頭に眉や唇にピアスをした、"西園の狂犬"とあだ名がつけられる地元で有名なヤンキー、峰田清吾がそう言う。
周りには取り巻きと思われる金髪の160くらいしかなさそうなガキっぽいヤンキー…ガキと、練習中の素行の悪さで1週間で強制退部となった元相撲部の坊主デブがいる。
「…わかった。」
どうしようか…ここで首を横に振っても強制的に連れていかれるだろうし、反抗してもな…プラスなことがほとんどない。いや、こいつに声をかけられた時点でいいことなんて一つもないのだろうが。
渋々俺は承諾した。
・・・
歩くこと10分くらいだろうか、俺が在籍してる西園高校から南にある山小屋に着いた。
かなりボロいが…
「ふぅ…ついたね。険しすぎるよ…」
元相撲部のデブが首にかけた自前のタオルで額の汗をぬぐう。
まだ5月初めの北海道だぞ?まだ肌寒いだろうが!
「うるせぇぞ、デブ山。…で、お前何しでかしたかわかってんだろうな??天野さんよぉ?」
ちなみに元相撲部のデブ山は笠山茂だ。いつも峰田の横で額に脇に汗かいてはぁはぁいってるデブだ。元相撲なだけあって喧嘩は強いらしい。
紹介してない金のチビガキ、佐倉晃一は峰田の威を借る狐だ。見た目だけヤンキーぽくしてほんとはびびって峰田のいうこと聞くしかない峰田の従者だ。峯田とクラスは違うらしいが気に食わないようなことが起こると「峰田君が知ったら…」だとか言ってるらしい。こいつが一番気に食わないかもしれないな俺は。
はあ…なんで自分の自己紹介の前にこいつらの話しなきゃならんのだ。
じゃあ、返事する前に俺の自己紹介するか…
名前は天野影人、身長175体重70運動はしてるから体つきは悪くはない。…性別は男。
北海道札幌市に住んでる。
何故か9歳からの記憶しかないが何事もなくそれなりの家庭でそれなりの生活、何不自由なく友達にも恵まれてきた。両親はどっちもいて7歳の離れた兄と1つ上の姉と同い年の妹がいる。彼女は一人もできたことないしデートもしたことはない、悲しきかな…ははは笑
べ、別に全然持てないなんてことはないぞ?
きょ、興味がないだけだ。多分。もしかしたら。
自己紹介はとりあえず終わりだ、目の前の峰田の顔がすごいからな…
本人はモテてないなんて思っているが、実際は1つ上の姉が影人の知らないところで中高の女子に脅しをかけていたこと、同い年の妹が設けていたハードルが高く誰も寄ってこれないだけである。実際イケメンだ。
「あぁ、多分わかるぞ、だが冤罪だ。」
「あぁん!?冤罪??ぶん殴るぞてめぇ!!」
学ランのポケットに手突っ込んで睨んでた佐倉が怒鳴り散らす。
そこで峰田が制す。
「おい、うるせぇぞ佐倉。テメェは黙ってろ。」
「あ。うす。」
やっぱりな。
「でだ、俺の咲を奪った上に捨てた…このことについて今弁解はあるか?」
「ある…あるにはあるが、それを言っても信じるのか?」
実際問題、俺は咲さんを奪ってもないし捨ててもいない。
唯一心当たりがあるとすれば高校のobのヤンキーに囲まれてたところを助けて、次の日にファミレス誘われたのを断ったくらいか…冤罪だ。
「…ふっ、わかってんじゃねぇか。事実はどうあれ咲がそう思ってんだ、、俺は信じるからなぁ…」
「じゃあ何が目的なんだ?」
「…おいおい、さっきからタメ口聞いてるけどよ、一応先輩だぞ?俺らは、しかもこの状況でその態度か??」
峰田の顔に浮かんでいた筋がさらに増える。
「そうだな。」
もう何を言っても結果は変わらないだろう。多分ここで土下座してなんでもしますなんて言ってたとしよう、この先ずっと召使いのように扱われる未来が待ってる。それならちょっと態度悪くしてボコボコにされて気が済んだら帰ってもらった方がいい。
「ってめぇ、ナメてんのか!ゴラァ!!」
そう言ってワイシャツのボタンが取れる勢いで胸ぐらを掴んできた。その勢いのまま小屋とは反対方向に押されていく。
まさに予想通りの反応、あまりにも想像通りで笑ってしまいそうになるが我慢する。
「テメェのせいで咲は俺を捨てて…しかも泣いてんだぞ!?悪りぃとはおもわねぇのか!?えぇ!?」
「泣いていることに関しては悪いと思うし弁明をしたいと思ってる。けどその機会もないし、事実を知ったのは授業が終わったあとでだな、お前が呼び出す直前だ。無理言うな。」
「うっせぇごちゃごちゃいってんじゃねぇ!!!!」
やっぱり何しても無駄だ。聞く耳を持ってない。
そのまま胸ぐらをつかんだ状態で後ろに押されていく。
「うぉっ!…」
峰田が足元にある大きめの石に躓いた。そのまま俺の胸に飛び込むように倒れる。
あまり警戒してなかったことと胸ぐら掴まれてたこともあり俺もそのまま後ろに倒れた…ように思ったのだが。
「え?」
「あ?」
後ろはかなりの斜面の崖のような感じで地面なんて存在してなかった。
くそっ。これは怪我覚悟だな。
「うわあぁぁぁぁ!!」
「峰田くん(さん)!!」
俺の心配もしろ。
ふむ、やっぱりこういう時は時間がゆっくりに感じるんだな。だからと言って何かできるわけでもないが。
そのまま俺と峰田は転がりながら急な坂を落ちていき…
「ぐふぅっ!!」
そんなつまるのような、体の空気をすべて吐き出すような峰田の声を聞いたすぐあとに頭に強い衝撃…俺の視点は暗転した。
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それは一昨日の日曜日の出来事だった。サッカー部の助っ人で試合に出場して終わったあとの帰り道に、サッカー部の友達とは帰り道が違うために一人で帰ってた時、ふとトイレがしたくなって公園のトイレに行こうとしたら、
「やめて!触らないでよ!!」
「うるせぇなぁ、騒ぐなよなねぇちゃん。騒げば騒ぐほど痛い目に遭うぞ??」
「….っ。あんたたちこんなことしていいと思ってるの??清吾くんが知ったらあんたたち死ぬよ??」
「あ?誰や清吾て、今助けてくれねーならあんま怖かねぇな、普段は俺らチームの拠点にいるからな、一人で来ても怖かねぇさ、ははっ。」
そんな声が聞こえたのでトイレの裏を静かに覗くと、いかにもチンピラそうな男二人が女の子の腕を掴んで脅してるところだった。
…はぁ、日曜なのになんで制服なんだよ、あの女の子。
しかも、よく見たらうちのクラスの咲さんだ。
どうしようかな。
と思った矢先だ。
「おい、お前誰や。」
後ろから声がして、その声を聞いたチンピラ二人と咲さんもこっちを見た。
しまった。気付かれた…
「助けて!えいとくん!!!」
!?!?
おいおい、三対一だぞ?助けれると思っていってるのかほんとに。そういうのは彼氏の峰田くんにやってもらえよ。
さて、どうするのがいいか。
このまま逃げるとしよう…心にも体にも傷を負った咲さんが明日、いや、いつか学校に来た時に俺は覗いて見てたのに助けなかった薄情者で最低な野郎だと周りに伝わって、学校が楽しくなくなるだろう。いや、いじめにもなるかもな、そして峰田に伝われば俺は社会的にも物理的にも死ぬわけだ。
はぁ、やるだけやるしかないのか。
そこまで思考をほんの少しで巡らせた俺は後ろからした声のありかのところに憶測で回転しながら右の裏拳を放つ。
「ブハッッ!」
クリーンヒット。
そのまま回転を利用して左手で相手の脇腹にフックを叩き込む。
「カハッ…」
俺のフックを受けた坊主チンピラはトイレの壁に寄りかか理ながらゆっくり沈んでった。
俺は殴ったのがバレて咲さんに影響が及ぶ前に駆け出した。
トイレの壁で見えなかったのか咲さんの腕を掴んだままこっちをぼーっと見ていた二人に向かって走り、急な出来事で固まった腕を掴んだ側のモヒカンチンピラに飛びかかるように右膝蹴りをかまして着地と同時にモヒカンの腹を右足で踏む。
「グフゥッ!!」
そしてすぐさま咲さんをトイレの壁と挟むように庇う。
長髪のチンピラはあまりの突然の出来事に驚いてるのか口を開けたまま動かない…
「おい、この女の人に手を出すな。今どっかにいったらお前は殴らない。早くどっかに行け。」
・・・
・・・
・・・
「お、おう。わかった!手はださねぇよ、じゃ。じゃあな!」
そう言って長髪のチンピラは公園の出口に走っていった。
「すぅーーっ、ふぅ…大丈夫ですか??」
動いていた間息を止めていたので、深呼吸をして先さんに尋ねた。
「え、あ、うん。大丈夫、ありがとう。」
「よかった、俺急いでるから。じゃあ!!」
「え、ちょっ…ま…」
俺はほんとに急いでた。便の方が限界なのだ。早くトイレに行かせてくれ。
「ちょっと待ってよ!!…あれ?もういない。」
これがことの経緯で、続きがある。
次の日の月曜日。
いつも通り登校して、だるい授業を受けて、昼休みは友達と楽しく遊んで、また授業うけて、放課後になった。
「ねぇ、えいとくん…」
咲さんだ…昨日のことなんて助けれたから怖いことはないと思ってわせれていたが声をかけられて思い出した。
「ん?どうしたの?」
「んーと、その…あのぉ…」
なんだが下を向いてモジモジしながら要件を言わない咲さん。
どうしたのだろうか…
「…咲さん?」
「そ、その…このあと時間ない??…(で、デートしたいなって…)」
ん?後半の方がボソッとしてて聞こえなかったけど、時間があるかないか聞いてるのか。今日は昨日試合したのもあってどこの部活の助っ人も入れてないしバイトはしてないから時間ならある。妹の習い事の迎え前までなら。
「んー、まぁ、あるっちゃあるね。」
「!!!!…じゃあ16時に駅の喫茶前で集合ね!」
そう一方的に告げて、早足でどこかにいってしまった。
「んー、なんでなんだろう。まぁ、行けばわかるか。」
今は15時半。駅までは10分くらいで着くからトイレしてからいったら10分前集合できるな。
よし、トイレ行こっと。
30分後。
10分前から喫茶店の前でケータイをいじりながら待っていたおれ。えらい。
時間きっかりに小走りで咲さんがやってきた。
「えいとくん!待った?」
まった。だが、答え方は違うのだろう…
「ま…ってないよ。俺も今来た。」
「そっか、よかった。喫茶店でちょっとお茶飲まない?」
「うん、いいよ。」
そこから他愛もない話やたまに驚きの事実を聞きながらも1時間くらい経った。これから話題のホラー映画を見に行く…らしい。
ちなみに、驚きの事実は二つあった。一つは三年の峰田くんとは付き合っておらず、怖がる様子もなく仲良くしたら好きだと勘違いされて自分の女だと勘違いしてるだけらしい。二つ目は俺の妹と咲さんが幼稚園から同じで幼馴染でよく遊んでるということだ。どうりで俺の名前をちゃんと知っててちょっと元から仲のいい感じで接してくるのか…そしてなんで俺はそれを知らない。まぁ9歳より前の記憶はないし以降も女子と関わりはもってなかった。今思えば妹の口からよく描く「さっちゃん」とは咲さんのことだったのか?多分そうだな。
映画館までの道を歩いているとケータイに連絡があった。
見てみると同い年の妹からだった。
『今日は先生に急用ができたから早めに終わったの!!…少し早いけど迎えに来れる?』
この妹の迎えも毎回やっているわけじゃない。
ここ最近この高校の付近で通り魔殺人が起きて、少し時間は経ってみんな気が抜けているけど母さんが「影人迎えに行かせたら怖くないでしょ?」と言ってきたので迎えに行っている。
待たせるのも悪いし、元々妹の迎えまでということだったしな…
「ごめん咲さん。今日はもう時間がないや。もう少しで帰らなきゃ。咲さんこの後予定とかあるの?何もないなら家まで送るけど。」
「え…いや、うんこの後クラスの子にご飯行こうって誘われたんだ!だから大丈夫だよ。」
「そっか、じゃあまた学校でね。
「うん。」
その会話をして俺は妹の迎えに行った。
side:咲
「はぁ…なんかダメだったのかな…さっき影人君の友達の仁君に聞いたら今日は19時過ぎまで空いてるはずって言われたんだけどな。全く好みとかじゃなかったのかな…
帰ろう。」
全くの勘違いであるし影人は楽しかったと感じているし、女の子と喫茶に行ったのなんて初めてでとても喜んでいたのだが、妹の迎えを優先しただけである。
ちなみに咲が影人の姉の脅しが聞いていなかったのは、咲が今まで恋愛にあまり興味がなかったことと峰田の彼女という噂があったために友達伝いでその脅しが1年近く伝わっていなかったからである。