#091 プレゼントアイテム持ってないけど仲間になるの?
祝、投稿一ヶ月
「一年生で、私とは小さい頃からの幼馴染です。種族はエルフで女の子ですね。職業は【精霊術師】を希望しています。ゼフィルス殿さえよろしければ導いていただけないかと」
「なるほど、エルフか…」
「人種」カテゴリー「エルフ」。
〈ダン活〉での「エルフ」は、異世界物のラノベなんかに出てくるエルフと大きな違いは無い。
見た目はスラリとした細身の体型に美形で耳は尖り気味。16歳(数え歳)までは人間と変わらない成長をする設定だ。あと知識が豊富。まあ俺の方が豊富だろうがな。
そして近接戦闘は苦手で魔法が得意。
ポジション的には魔法アタッカー、ヒーラー、バッファー系統だな。
逆にタンクと近接アタッカーはまったく出来ない。遠距離の弓は出来るけど。
もしくは生産職という手もあるが。
しかし、それはちょっと勿体ない。「エルフ」は魔法特化だ。ダメージディーラーに成れる素質があるのでできれば純アタッカーで育てたい。
今回希望が【精霊術師】とのことだが、問題なくダメージディーラーになれる。
「エルフ」を入れるならやっぱり【精霊術師】は最有力候補だよな。文句なしの下級職の高の上ランクだ。
ただ「エルフ」をスカウトするには特殊な条件がある。
そちらはまったく満たしていないが大丈夫なのか?
「エステルの話は分かった。だが、うちのギルドには〈ユグドラシルの苗木〉も〈赤い実〉も〈観葉植物セット〉も無いが入ってくれるのか?」
「………あの、おっしゃっている意味が分かりませんが」
要はプレゼントアイテムである。
〈ダン活〉で「エルフ」をスカウトしたければ上記のアイテム3点が必要だった。
それらは〈幸猫様〉と同じくギルド設置型アイテムで、3つを揃えるとスカウトリストに「エルフ」の名が刻まれる仕様だ。
ちなみに入手場所は中級中位ダンジョンから上級上位ダンジョンまで、それぞれダンジョンボスのレアドロップ扱いだった。あと効果は〈「エルフ」がスカウト出来るようになるキーの1つ〉しかなく、バフは付かない。「何か付けよ」と多くのプレイヤーからツッコミを貰ったアイテムだ。
つまり、ゲームでは最低でも中級中位に行かなければ「エルフ」はスカウト出来ない仕様。
今の俺は初級中位…。
まあ、これは今更だ。すでに〈姫職〉が3人もいるし。もう1人は確実に増える予定だしな。
しかし、形の無い名声値とは違い、形有るプレゼントアイテムも無しに「エルフ」ってスカウト出来るのか? カルアの時だって500万ミールでスカウトしたんだぞ? というのは当然の疑問だと思うのだが…。
残念ながらエステルはよく分からないらしい。
うーむ。これはもしかしたら断られる事も視野に入れておくべきかもしれないな。
「まずは一度話をさせてくれないか? 断られるかも知れないし」
「そうでしょうか? 彼女はその、マイペースな方なので断る事は無いと思うのですが」
「ま、そういう可能性もあるって事だけ憶えておいてくれ」
「…はい。了解です」
とりあえず10名、規定数の面接が整ったところで誰もオススメしたい人材がいなくなった。ハンナも手を挙げない。
「ランクが上がれば上限人数も増えるから、もしスカウトしたい人材を見つけたら誘ってくれても良いからな。ま、採用するかは面接してからになるが」
「わかったわ。心にとどめておくわね」
俺とシエラの言葉に全員が頷いたのを見て、一旦この話は終了にする。
「あ、そうだ。マリー先輩から査定表を預かっていたんだ。――これ、査定額の一覧な」
「ありがとう。悪いわね、寄る時間が無かったのよ」
「いや、査定の方も長引いていたらしいからそこは気にしなくていいぞ。だが物は相談なんだが…」
ラナ、シエラ、エステルに〈クマアリクイの大毛皮〉を始めとした何点かの素材を売らずにカルアの装備の作成に回してほしいと伝える。初期投資だな。
「別に良いわよ」
「構わないわ」
「はい。私たちはミールに困っていませんから」
「羨ましい」
「カルアももうすぐこんなこと言えるようになるさ」
「カルアちゃん頑張ろうね」
〈姫職〉組の理由を聞いてカルアが羨望の眼差しを送っていた。
素材は無事提供してもらう事になり、これでカルアの装備も整うだろう。
「ありがとう」
「ふふ。どういたしまして」
シエラの表情がいつにも増して柔らかい気がする。
この子も可愛い物好きなのか、うちのギルド可愛い物好き多いな! 今度マスコットでも追加しよう。
夕方、マリー先輩の授業が終わるのを待って〈ワッペンシールステッカー〉に行く事にし、今日はダンジョンに行かず、各人自由にすると決まった。
何気に〈初心者ダンジョン〉をクリアしてから初めての休みだ。