#838 上級職ランクアップ! パメラ編!
「どんどん行くぞ! 次はパメラ」
「よろしくお願いするデース!」
「おう! パメラに就いてほしいのは、【ナンバーワン・くノ一】だな」
「やっぱりデース。多分そうだと思っていたデスよ」
「おお、そうか。知っているなら話は早いぜ。それで、どうだ?」
「もうちょっと、シズの【戦場冥王】みたいにかっくいい名前が良いデス!」
「名前は変えられないんだよなぁ」
まあ、確かに「分家」カテゴリーの中では【戦場冥王】が突出して名前がかっこいい。それは認めざるを得ないな。だけど【ナンバーワン・くノ一】はパメラに似合うと思うぞ?
それに性能では負けてはいない。
【ナンバーワン・くノ一】は大火力型避けタンクだ。強いぞ? 避けタンク系でトップクラスの職業だ。No.1の名は伊達ではない。
火力と挑発系の威力と手数が増え、今までタンクとして微妙にヘイト稼ぎに難のあったポイントが払拭されているんだ。
今まで【女忍者】の挑発系スキルは『目立つ』と『お命頂戴』だけだった。
たった二つ、これではアタッカーの火力が伸びてくる後半、すぐにヘイト負けしてアタッカーにタゲを奪われてしまう。つまりタンクとして機能しない。
そのため自らも火力を出し、アタッカーとして参戦することで、ダメージによるヘイト稼ぎをしてタゲを得るのが【女忍者】の使い方だった。
また、【女忍者】時代は回避にも不安があり、たまに予期せぬ攻撃が命中して一発で退場する可能性があった。それを防ぐため、ボスを〈暗闇〉状態にして攻撃の命中率を下げるなどの工夫を多くこなす必要があった。【女忍者】は中々玄人向けの職業だと言っていい。ハマれば鬼強いので人気は高かったが。
〈上級転職〉して【ナンバーワン・くノ一】になるとその方向性がさらに伸びる。
大火力による大きなヘイト稼ぎから始まり、数の増えた挑発スキルによってヘイト負けするのを防ぎ、『立体駆動』がさらに進化したことで三次元の動きに拍車が掛かって回避性能が上がり、攻撃スキルも多く使えるようになる。
さらには『忍法・身代わり反撃の術』というスキルが超強力で、攻撃を受けると敵の直ぐ真横に一瞬で移動し反撃する、瞬間移動攻撃とも言えるスキルだ。もちろん身代わりなのでノーダメージという超スキル。どんなに距離が離れていても瞬間移動して死角を打てるので超重宝していた。カウンターが刺さりダウンを取れることもあった。
もちろん斥候技能も上がっていて、今までの目立つNINJAスタイルオンリーだったのに、インビジブルやハイド系も出来る本物の忍者をすることも可能になっている。
上級ダンジョンでも間違いなく活躍してくれるだろう。
是非欲しい職業だ。
他に【女忍者】からだと【上忍】や【影忍】に〈上級転職〉が可能だが、【上忍】は中位職なため真っ先に除外。
高位職の【影忍】は完全に遠距離忍術アタッカーとなりタンク要素が無くなって、指揮官などができるようになる。斥候も可能で奇襲攻撃で敵のパーティなどに大打撃を与えるなど、主にギルドバトルで活躍する職業だ。
ただ、【影忍】の要素はパメラに求めていないので、できれば【ナンバーワン・くノ一】になってほしい。
「もうパメラお姉ちゃん。ゼフィルスお兄様を困らせちゃダメなのです!」
「言ってみただけデース!」
「じゃあ、【ナンバーワン・くノ一】で大丈夫か?」
「はい、よろしくデス!」
名前がシズみたいにかっこいい職業にしたいだけで【ナンバーワン・くノ一】自体になるのは問題無いようだ。よかったぜ。
よろしい。そうと決まれば早速〈上級転職〉開始だな!
「【ナンバーワン・くノ一】は上級職、高の中だから、〈結晶〉系だ。パメラにはこの〈影の結晶〉を進呈しよう」
「これも今すごい値上がりしている結晶デスよ。ラクリッテの言葉の意味がよくわかったデス。これは触るの震えるデスよ!?」
パメラの言葉の後ろでラクリッテがブンブン頷いていた。
なんだかんだ言いつつパメラは〈影の結晶〉を受け取ると、意を決してそれを使用する。
体に粒子が消えていくとなぜか息が上がっていた。
「ひぃ、ふぅ、息をするのを忘れたデス」
どうやらお高い物を使用したために息を忘れ、粒子が身体に入りきるまでそのままだったらしい。
「パメラお姉ちゃん大丈夫なのです!?」
「大丈夫デース、ちょっと精神と心臓に悪かっただけデース」
「よし、準備は完了だな。落ち着いたら〈上級転職〉しようか!」
【ナンバーワン・くノ一】の条件は高の上ほど難しくはなく、避けタンク寄りのビルド構成をしておけばほぼ発現できる。
厄介な条件に〈モンスターの攻撃を500回避ける〉というものがあるが、避けタンクしてパワーレベリングをしていなければ大体達成できる。
後は〈飛び道具的当て500回〉というのもあるが、これもアイテムの手裏剣で達成可能なのでパメラには最近飛び道具の練習がてら条件を満たしてもらっていた。
「パメラ、その程度で息が上がってたら次が持たないぞ? お次はこれ、〈上級転職チケット〉の出番だー!」
「ひぃーデース! またお高い物を、ゼフィルスさんは鬼だったのデース!」
そんなコントを挟みつつ〈上級転職チケット〉をパメラに手渡すと、パメラはそれを片手に〈竜の像〉の上に手を置いた。
すると予想通り、パメラのジョブ一覧には【ナンバーワン・くノ一】の名前が存在していたのだった。
早速パメラがそれを震える指先でタップする。
「【ナンバーワン・くノ一】を選択するデス。――あ、なんだかあっと言う間に終わっちゃったデス!? 覚醒の光プリーズデース!?」
本当にパメラの取得はあっと言う間だった。高の中なので覚醒の光も起こらず、パメラがガーンとなっていた。ついでにメルトもなぜか残念そうにしていたのが印象的だったな。
「無念デス。しかしやったデース! これでギルド〈エデン〉で最弱の汚名は返上デス! パワーアップの時デス!」
「なのです! パメラお姉ちゃんもルルたちと一緒にパワーアップなのです!」
「おーデース!」
「その意気だ。パメラ、〈上級転職〉おめでとう」
「ありがとうデス! これからも頑張るデース!」
パメラが〈エデン〉のカンスト組で自分が一番弱いのではないかと危機感を抱いていたのは知っていたからな。【ナンバーワン・くノ一】に就けば【女忍者】時代より避けタンクに磨きが掛かる。
ヘイトも取りやすくなるし、事故も起こりにくくなるのだ。
そしてタンクはパーティの核。一番重要なポジション。みんなから頼られる日も近いな。
後で【ナンバーワン・くノ一】のスキルコンボを伝授するとしよう。




