#722 上級キャリーのご相談。そして4つ目の攻略へ!
「ええ!? 上級ダンジョンのキャリーかい!? でも私じゃ力不足だよ」
「そりゃあ今のままじゃ難しいが、レベル上げして上級職に〈上級転職〉すれば行ける行ける。まあ、学園クエストの延長みたいに考えればいいよ」
「いやいやいや!? 上級ダンジョンだよ!? 私には責任と荷が重すぎるって!」
カイリがブンブン首と手を振って訴える。
今の〈救護委員会〉が当てにならないので、代わりにカイリが選ばれているのだ。責任が重すぎるという主張も分かる。
しかし、元々カイリはダンジョンを安全に攻略するためにスカウトしたのだ。できないでは困る。まあ出来なければできるように育てれば良いのだが。
「大丈夫だ安心しろって。最初は俺も付いて行くから。何も初めっから全部任せるなんてことはしないさ。俺たち上級下位ダンジョン攻略パーティがクリアし終わったら、俺もキャリーに加わる予定だ」
「え、うん。それならまあ、でも上級ダンジョンかぁ。私にできるだろうか……。私の探索ミス一つでパーティが全滅するかもと思うと気が気じゃないんだが」
「そこら辺は大丈夫だ。ミス一つで全滅するような柔なギルドじゃないからな〈エデン〉は。そのために装備の更新を進めているんだし、一回や二回のミスで全滅するようなことはないから安心するといい」
「そうは言ってもね」
どうもカイリは自信が持てないらしい。
まあこれは仕方ない。上級ダンジョンを実際目にして知らないと分からないだろうからな。上級ダンジョンとは決して攻略出来ないダンジョンではない。ちょっと難しいだけだ。
その辺実感させてあげれば自信も付くだろう。
俺はそれからもカイリの心理的不安が和らげられるように言葉を尽くして説明し、結局カイリはこの話を恐る恐る了承してくれたのだった。
カイリにはこれまで放置気味になってしまった分だけ頑張ってもらおう!!
その後、学園クエストを受けるカイリを見送り、改めて生産職の3人に生産の方針とやり方を説くと、すぐに装備に着替えてパーティメンバーと待ち合わせていた〈中上ダン〉へと向かう。
「悪い、待たせたな」
「おっそーい。もうゼフィルスったら、いつも私たちを待たせるんだから!」
「ラナ様、ゼフィルス殿は忙しい身なのですから、ここは寛容に受け止めるのがよろしいですよ」
「お疲れ様。大丈夫なの? 何か手伝える事があったらいつでも言って頂戴ね」
カイリを説得したり、生産職の3人に生産方法を指示していたら結構時間が経っていたらしい。
ラナがいつもどおりプンプンしていた。これを見るとほっこりするのはなぜだろう?
それをエステルが窘め、シエラが俺を気遣ってくれる。いつもの光景だな!
ちなみにカルアはなぜかラナに背中から抱きつかれていた。ぷらんとされた目で俺を見つめていた。何があったのかねぇ。
とりあえず、シエラが心配してくるので、安心してもらえるように言う。
「ただ指示だしに時間食っただけだから、手伝いはいらないさ。でも気遣いありがとうな」
「あなたが必要ないというのならそうなのでしょうけれど」
「まあ、こればっかりは俺が直接言わないといけないことだったからな。それにシエラにはギルドの裏方で世話になっているんだ。それで十分さ」
「そう」
これでもシエラには結構ギルドの運営について頼っていることは多い。十分シエラには助けてもらっているとそう返すが、なぜかシエラからは物足りないみたいな雰囲気が出ていた。
「見てください、あれが良妻のあり方です」
「む、むう。さすがシエラね。勉強になるわ」
「ん、ラナ、ファイト」
「分かったわ、やってみるわね」
シエラと話しているうちにこそこそ話していた3人、そのうちエステルに見送られるようにしてラナが前に出てきた。カルアはそっとエステルに預けられている。扱いがぬいぐるみな件。
「ゼフィルス、その、もっと私を頼りなさいよ。わ、私ももっとゼフィルスの役に立ちたいわ」
「いきなりどうしたんだラナ?」
いきなり手伝いを申し出てきたラナについ疑問をぶつけてしまうと、なぜかラナが「うっ」と仰け反り二歩下がってエステルに耳打ちしていた。
「なぜかシエラの時と反応が違うわ。どういうことかしら?」
「最初の印象に問題があったのかもしれません。やはり出迎える時は寛容に受け止める事が重要だったかと思います」
またエステルとこそこそ何か話している。
こういう時のエステルはラナを良い方へ修正しようとしてくれるため俺もそっとしておいた。
しかし、いつまでもここで時間を食っているわけにもいかない。
「準備が出来次第ダンジョンに突入するけど、大丈夫か?」
「はい。問題ありません。こちらの準備は万全です。ね、ラナ様」
「もちろんよ! 今日は四つ目の中級上位ダンジョンを攻略するんだから! 準備は万端よ!」
「私も、いつでも行けるわ」
「ん、もち」
「よし、んじゃ、中級上位〈ランク5〉〈四季の妖精ダンジョン〉に出発だ!」
「「「「おー」」」」
こうして俺たちは四つ目のダンジョンたる〈四季の妖精ダンジョン〉を本日中に攻略するためにダンジョンに突入した。
「ショートカット転移陣で30層へ行くぞ! 時間に余裕もあるしフィールドボスがいたら倒していこう!」
〈四季の妖精ダンジョン〉の30層フィールドボスは回復魔法を操る〈ハイフェアリー〉だ。
また〈自然適応ペンダント〉ドロップしないかな~。
そんなことを考えながら〈ハイフェアリー〉を撃破したが、結果〈木箱〉で無念。
結局以前ゲットした〈自然適応ペンダント〉はカルアが装備を継続する事になり、俺たちは〈ホカホカドリンク〉を飲む事で冬の寒さとデバフに負けない耐性を身に着けることになった。
ボス撃破後は秋エリアの30層周辺で採取を行ない〈薬用キノコ〉を大量入手。他にも有用な素材や食料を大量ゲットして収納し、俺たちはようやく冬エリア、31層へと突入したのだった。




