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#074 〈城取り〉開始。実況しながら観戦だ!




 〈九角形〉フィールドは難易度が高い。それは四方八方に目的地がばらけているために進行ルートを絞り込みづらく、また巨城が9つもあるために管理維持が非常に難しいためだ。

 何しろ取った城は、再び落とされると相手の物となるルールだ。

 そのこともあり、ギルドの集団戦なのにも関わらず、集団をかなり薄くばらまかざるを得ないので各個撃破もされやすい。

 へたをすれば防衛モンスターに負ける事もある。



 さて、学園のトップクラスのギルド、お手並み拝見だな。


 ――時刻は間もなく16時。

 ギルドバトルは2時間行われる。


 〈『ゲスト』の腕輪〉を付けた審判が中央のエリアマスで勢いよくホイッスルを吹いた。


「始まったわ」


 シエラのセリフに全員が前のめりで会場を見つめる。



 〈城取り〉で最も重要なのは、――〈初動〉だ。

 最初の動きで勝敗すら決定づけられる〈初動〉、このスタダでミスは絶対に起こせない。


 さて、両ギルドの最初の一手は?


「!? 両ギルド全員が本拠地から散ったわよ!」


「見事な動きですね。全方位に満遍なく進行、そして防衛モンスターを一瞬で切り伏せて次々小城を取って、陣地を広げています」


「ゼフィルス君! お互い本拠地に誰も残ってないよ、大丈夫なの!?」


 ラナが目を見張り、エステルが褒め、ハンナが驚いて俺に尋ねてくるが、俺は大きく頷いて返した。


「ああ。まったく問題ない。最初は20マスという壁があるし、巨城を持っていないから本拠地は襲うにもうまみが薄いんだ。むしろ人が固まっていると一網打尽にする名目を与えてしまうから敢えて無人にする戦法を使ってるんだな」


 本拠地が狙われるのは、もうほんとに最後の最後だな。だからこそ熱くなる。

 

 しかし、この戦法自体は分かるんだが。俺はもっと違うところで甘いなぁと感じていた。

 ちょっとその〈初動〉は無いわぁ。俺から言わせれば、甘すぎる。


 ハンナは俺の反応に訝しんでいたが、会場の方が気になるようで視線を戻した。その代わりにシエラが貪欲に聞いてくる。


「なるほどね。ねぇゼフィルス私も聞きたいのだけど、全員ツーマンセル以上で動いているのは何か意味があるのかしら?」


「ああ。エリアマスを取るにもルールがあるんだ。少し面倒だが〈エリアを取得した人はその都度、他の自陣の陣地の小城にタッチしなければ、別のエリアを取得出来ない〉。というルールだな。要は充電だ。自陣の城で充電して、それを使ってエリアを解放していくイメージだな」


「それが何故ツーマンセルに…? ああ、なるほど」


 話の途中でシエラは察したらしいが、他の子たちが耳を傾けていたためそのまま続行する。


「ま、一人の場合エリアを取得する度に一度自陣のマスまで戻らなければいけないが、二人なら交互に取っていけば自陣に戻る必要がなくなるからな」


 つまり片方がエリアを取ったら、そのエリアを自陣として充電に使えるということ。

 Aくんが取得、Bくんが充電。次のエリアではBくんが取得、Aくんが充電。

 このループをしながら先へ先へと進むわけだ。

 ちなみに取得した人はそのエリアで充電する事は出来ない。


 そのため進行はツーマンセル以上が基本、とされている。


 これがあるために一人が突出して無双する展開などは制限されている。


 両ギルドはとにかくエリアマスを大きく広げる事に集中しているようだ。

 これは間違っていない。小城で10Pが入る。塵も積もれば、ということで小城を大量に取得しておけばそれなりのポイントを稼げる。それに万が一本拠地を落とされても小城なら相手にぶんどられる心配も無い。取られるのは巨城だけだからな。


 小城を大量に取得していく戦法は間違っていない。

 だが、巨城がまったく放置されているのはどういうわけだ?

 何故か両ギルドは巨城を完全に無視し、中央を中心にツーマンセルでエリアマスを確保するのに注視していた。

 

 お互いの本拠地から水が溢れたみたいに全方位に向かって広がっていく〈千剣フラカル〉の赤マスと、〈キングアブソリュート〉の白マスは、とうとうフィールドの中央付近でぶつかった。


「中央が敵陣と隣接したわね!」


「膠着状態、ですか?」


 しかし、そこから動かない。押す事も出来ないし押される事も無い。

 いや、これは単純に動けないのだ。


「いや、さっきは言ってなかったが、取得された小城の回復時間中、2分の間敵陣(てきじん)はそのエリアに入れなくなるんだ。そのせいで膠着しているように見えるだけだな」


 通称:保護期間。

 これは小城を取った瞬間、即取り返される事を禁止するためのルールだな。

 鬼ごっこで言うタッチ返しと同じだ。10を数えなかったらタッチ返しが起こり無限ループに突入してしまう。


 ちなみにそのエリアにいた敵陣は弾き出されて強制退出させられる。


 説明している間に2分が経過、保護期間が終わってお互いの陣地に敵が入り込むようになった。ここからが本番だな。


「わあ。赤くなったり、白くなったり…」


 〈城取り〉はリバーシに似ている。未取得のエリアが赤くなっては白くなって、また赤く塗りつぶされていく。


 一進一退の攻防だ。

 お互い、自陣の〈本拠地〉には近づかせないよう立ち回っている。

 どちらも守っているようで攻めの姿勢だ。


 今のところ西側のSランクギルド〈キングアブソリュート〉がポイントでは優勢のようだ。


 さらに注目の場所はどんどん広がっていき、次は北側に焦点を移す。

 本拠地北側では苛烈な陣取り合戦を継続しつつ、お互いが真北にある巨城を目指していた。


 〈九角形〉のフィールドは頂点付近に巨城が配置されている。

 東側の頂点4角に4城が、そして西側の頂点4角に4城があり、これは今の状態で相手を抑えておければお互いがそれぞれ確保出来るだろう。故にイーブンだな。

 最初に巨城を取りに行かなかったのは、まず邪魔をされないよう相手を押さえる事を重要視したためだろう。



 だが、問題なのは真北にある、どちらにも偏っていない巨城だ。

 これを確保出来るかが勝敗を決定づけさせると言って良い。


 故に両ギルドは精鋭10人をこの真北の巨城にそれぞれ向かわせていた。総勢20人の大バトルだ。

 俺的にはやっと巨城かよと思わなくも無い。

 


「お互いがやろうとしている戦法が分かってきた。なるほど、展開が動くぞ。北側に集中しろ」


 序盤は〈キングアブソリュート〉優勢、〈千剣フラカル〉は巻き返せるか。





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