#644 上級職ランクアップ! リカ編!
俺たちは再び、職員室の隣にある測定室に来ていた。
以前俺たちが〈上級転職〉をした場所だ。
ここにいるメンバーは、リカ、リーナ、そしてシズだ。
ギルドバトルで大活躍するだろうメンバーたち。
ニーコはまだレベル不足なのでまた後日。先に3人の〈上級転職〉をしてレアボスを周回し、ニーコはレベルカンストした時点で〈上級転職〉を予定している。
ちなみに不参加のニーコは「しばしの休みなのだ!」と言って喜んでいた気がするが、きっと気のせいだろう。
この後またレアボス周回に向かう予定だ。
「では、早速〈上級転職〉を始めようか。まずは、リカからだな」
「ゼフィルス、どうかよしなに頼む」
「もちろんだ。ではリカに就いて欲しい職業なんだが、――【先陣の姫武将】で頼みたい」
「む、武将か!」
俺の言葉にリカが勢い良く食いついた。
うむ、武将だぞ武将。武将かっこいいよな!
「一応リカに聞いておきたいんだが、【後陣の姫大名】は論外として、【無双の姫侍】と【先陣の姫武将】なら、どっちが良い?」
「無論武将だ。我ら武士を志す侯爵家はみんな武将に強い憧れを持っているのだ。就けるのであれば是非お願いする!」
「そうか!」
良かった。予想以上の食いつきだぞ。
今候補に上げた三つが【姫侍】から就ける〈上級姫職〉ルートだったんだ。
一つ目の【後陣の姫大名】は後陣と名の付くとおり、なぜか後衛になる。銃や弓を装備できるようになるほか、バフを始め、回復系の『医療陣』などという陣を張るスキルも使えるようになるオールマイティ職だ。指揮する立場になるためそういったスキルも覚えるのだが、役割が「公爵」と被るのだ。
これは王族貴族が本来ならギルド加入に人数制限があるが故の仕様だな。
「公爵」を前衛職に就かせたい、それで人数使ってしまった時などに「侯爵」で代用するんだ。そのための職業。
故に論外。うちにはリーナがいるので必要ないな。
二つ目は【無双の姫侍】。名前の通り攻撃特化型のアタッカーだ。特に大勢の敵が相手の時に真価を発揮し、敵の数が多ければ多いほどスキル威力が増すユニークスキルを覚えるために、マジで無双する侍である。
ギルドバトルと相性が良く、ボスとは相性が少し悪いが、普通にアタッカーとして戦うにも有用な職業ではある。
リカはどちらかと言うとタンク寄りで育てているためこれも無しかな。
そして最後の三つ目が【先陣の姫武将】。アタッカーとタンク、どちらにでも育成できる最高峰の武士系職業だ。
不屈の精神力で状態異常に耐性を得るほか、ノックバックにも強い耐性を持ち、崩れ知らずの武将として非常に頼りになる。さらには貫通攻撃などの対防御スキル攻撃も得るわ、相手のバフを数個打ち消す斬撃を放てるようになるわでアタッカーとしても頼れる存在だ。
そして将の名が付くとおり集団戦で敵味方に強い影響力を及ぼすスキルまで覚える。ま、これはお披露目のお楽しみだな。
あとシエラやラナのような派手さを求めるならばやはりユニークスキルの存在は欠かせない。
【先陣の姫武将】のユニークスキルはなんと一時召喚スキルだ。何十人もの武士たちが現れ、敵をボッコボコにしてくれる軍勢スキルである! ちなみに召喚される武士は全員女侍だ。めっちゃ強いぞ。
いやはや、俺のお勧めは断然【先陣の姫武将】だったのでリカも同じとのことでマジ良かったよ。
「よし、じゃあ早速〈上級転職〉だな! リカ、『大勇』スキルをLV5に上げてくれ」
「『大勇』か、ちょっと待ってくれ」
【先陣の姫武将】の鍵は『果し合いLV5』『大勇LV5』『戦意高揚LV5』だ。それに加え『名乗り』スキルを持っていること。防御スキルで2種類がLV5になっていることと、攻撃スキルも2種類LV5になっていることが上げられる。
防御スキルは『二刀払いLV5』『弾き返しLV5』でクリア、攻撃スキルは『ツバメ返しLV5』『双・燕桜LV10』でクリアだな。ちなみにユニークスキルは〈攻撃〉〈防御〉のカテゴリー持ちなのでどちらでも代用可能なのだ。
「それと〈天槍の宝玉〉だ」
高の上へ〈上級転職〉するため、アイテムは〈宝玉〉系を使用だ。
エステルにも使った〈天槍の宝玉〉がキーアイテムとなる。ゲットするの大変だったよ。なんで槍なのか、多分武将のイメージが槍だからだと言われているな。
槍使わないんだけど?
それはともかくこれで条件は一通り揃ったな。
一番ネックになるはずの条件に〈先陣を切って300回戦闘する〉というものがある。これはパーティの中で【姫侍】が最初に攻撃をした戦闘の回数が300回という中々に難題だ、まあタンクをしていれば防御スキルもカウントされるので楽勝だが、アタッカーで育てていると味方のタンクが先に防御スキルを発動してしまうために満たせないことがままある。回数もネックだ。また〈道場〉で育てる、所謂養殖と呼ばれている育成でも満たしにくいので厄介な条件だ。
しかし、リカはすでに500回は超えてるかもしれないので問題は皆無だな。
タンク寄りに育ててきて良かった良かった。
「じゃあリカ、これで準備は整ったはずだ。〈上級転職〉してくると良い」
「う、うむ。なんだか、ドキドキするな」
「リカさん、ファイトですわ」
「間違えないよう気をつけてください」
〈天槍の宝玉〉を使い、〈上級転職チケット〉を片手に〈竜の像〉へと向かうリカ。
興奮を隠せない様子だ。リーナとシズの応援を背に受けながら、手をそっと〈竜の像〉の上に乗せた。
〈上級転職チケット〉に反応し、ジョブ一覧が表示される。
「よし、ちゃんとあるな」
「では、取得する――【先陣の姫武将】を」
リカが少し震える指でそれをタッチした。瞬間、その他のジョブ一覧がブラックアウトし、【先陣の姫武将】の名前のみが大きく残る。
続いて来たのが例の〈上級姫職〉の演出だ。
幻想的な光が測定室を満たし、リカを囲むようにしてエフェクトが踊る。
「わあ、話には聞いていましたが、これはすごいですわね」
「はい。とてもキレイですよリカ殿」
「そ、そうか? 少しこそばゆいな」
演出を初めて見たリーナとシズが褒め、リカも照れくさそうだ。
そうして演出が終わる。
「おめでとうリカ、これでリカも【先陣の姫武将】だ」
「ありがとうゼフィルス。これはすごいな……。新たな上級職、これでもっとみんなの役に立てるよう頑張る所存だ」
「頼りにしてるぜ、リカ」




