#616 〈リンウッズ〉撃破! ドロップは…リンゴ!?
なんでリンゴの木が火属性の魔法をぶっ放してくるのかって?
俺にも分からん。
リンゴが赤いから、だろうか?
そんなどうでも良いことを考えながら所々燃えている地面を避けて、〈リンウッズ〉の幹を左側から『ソニックソード』でぶった切る。
「オオオォォォォ―――――」
今の俺は『属性剣・火』により〈火属性〉攻撃となっているのだが、これにより〈リンウッズ〉は弱点属性で攻撃されたことでそれなりのダメージが入った。
火を使うくせに〈火属性〉が弱点なのか? とも思うだろうが、植物系モンスターは大概〈火属性〉が弱点だ。なので問題無い。
「こいつの弱点は〈火属性〉だ! ちなみに〈氷属性〉と〈雷属性〉には耐性があるぞ!」
「なんでよ!」
ラナのツッコミが響くがそういう仕様なので仕方ない。
なお、植物系モンスターは大概〈氷属性〉と〈雷属性〉に耐性があるので、片方の短剣〈アイスミー〉が〈氷属性〉のカルアは少しダメージが落ちてしまう。
「ん、だいじょび。『鱗剝ぎ』! 『スターブーストトルネード』!」
カルアは『鱗剝ぎ』で防御力デバフを加えると、連続攻撃を加えはじめた。ダメージはいつもの8割ってところだろう。スキルの回転を上げてダメージを補う狙いのようだ。
「――『騎槍突撃』! ――『閃光一閃突き』!」
エステルもカルアに続いて突撃で側面を突き、その後に単発攻撃でダメージを稼ぐ。
連続攻撃系の『戦槍乱舞』より単発スキルを選んだのはいつ離脱してもいいようにだろう。
まずは相手の攻撃頻度を探る、近接アタッカーが慎重なのは良いことだ。
「『インパクトバッシュ』! 『ショックハンマー』!」
正面からはシエラが盾突撃の『インパクトバッシュ』で攻撃。『攻陣形四聖盾』を使っていないため、シエラの大盾のみの突撃だ。
ここで『攻陣形四聖盾』に切り替えると『守陣形四聖盾』がクールタイムの影響で使えなくなってしまうため、切り替えは無しだ。
また、続いて『ショックハンマー』を繰り出すが、ボスモンスターは一撃二撃では麻痺にならないので普通のダメージだな。しかし、麻痺などの状態異常攻撃は蓄積する。
何発か入れれば〈麻痺〉が起こるため、シエラはこのボスで何発入れればボスは麻痺るのか、その辺を試すつもりなのかも知れない。
「これで回復はすんだわね! 私も攻撃に加わるわ! 光の宝剣、出てきなさい! ――『大聖光の四宝剣』!
ラナは支援を終え、回復も終え、とうとう攻撃に手を回してきたようだ。
楽しそうな声が聞こえる。ラナはほんと攻撃好きだよな。
ラナの真上に顕現した四本の光の宝剣が真っ直ぐに〈リンウッズ〉のフッサフサの枝葉へと直撃していく。〈リンウッズ〉の大きさは6mはあるので上の方に刺さる魔法攻撃が味方を巻き込まなくて済むのが地味にやりやすい。
「オオオォォォォ―――――」
「! 攻撃が来るぞ!」
「――『カバーシールド』!」
今度は相手のターンだ。
俺たちは一斉に身を退き、シエラが『カバーシールド』を繰り出す。
四つの小盾は守陣形を維持しているため、永続『カバーシールド』だ。
再び炎の球を範囲攻撃で連射する〈リンウッズ〉の攻撃を、シエラの小盾が防ぎまくる。
弾幕系に相性良すぎるなシエラの四聖盾は。
「オオオォォォォ―――――」
おっと範囲攻撃、続いて今度は集中攻撃だ。
八つの杖をシエラに向けての一点攻撃、それまで範囲攻撃にばらまかれていた弾幕が一点に集中するのだ。普通のタンクでも、かなりのダメージに危険が伴うだろう。
しかしだ。全ての範囲攻撃に対応していたシエラにはさほど先ほどまでと変わらない。
「――『ディバインシールド』!」
「おお! かっけー!」
現在シエラが持つ最強の防御スキル、四段階目ツリーの一つ『ディバインシールド』を発動する。
四つの小盾が集まり、クロスするようにそれぞれが斜めに合わさり、大きな一つの盾として相手の攻撃を防いだのだ。
やっべー、空中を自在に動く盾の合体防御とかロマン過ぎる! 俺はしばらくシエラの盾に見惚れた。
「ちょっとゼフィルス、いつまでこっちを見ているの、指示を出して」
「おお! 悪い悪い」
少し頬を赤く染めたシエラに怒られてしまった。満更でもないように見えたのだが、気のせいだったか?
「攻撃が途切れるぞ! 頭上からのリンゴ落としに気をつけながら攻撃開始!」
攻撃が途切れたので、反撃の時間だ!
とはいえ、今度は少し警戒。HPがある程度削られ始めると、体をゆっさゆっさ揺らしてリンゴを落としてくるのだ。
さらにそのリンゴが口のような洞に吸い込まれると、リンゴの剛速球が発射されるので注意である。30個ほど吸い込まれると30連発射されるのだ。あれは結構脅威だぞ。
じゃあ、ただ落ちてくるリンゴは? と思うだろう。それあまり脅威にならないんじゃないかと。
とんでもない。落ちてくるリンゴに当たるとデバフアイコンがランダムに付くのだ。
単純なダメージよりよっぽど脅威である。
「あう」
「『浄化の祈り』!」
落ちてきたリンゴが思いのほか多く、〈毒〉のデバフアイコンの付いたエステルだが、すぐにラナに浄化される。
さすがはラナだ。
あ、今リンゴが口に吸い込まれたな。来るな、あのリンゴ剛速球。
「リンゴ剛速球注意!」
「ラナ殿下は私の後ろから出ませんように」
「分かってるわ! 『守護の大加護』!」
遠距離攻撃だが、たまにタゲを無視して範囲攻撃を繰り出すこともあるリンゴ剛速球。しかも割とダメージが高く、魔法攻撃とは違い打撃攻撃ということで、RES装備メンバーなどで挑むとたまにやられてしまう脅威の攻撃だ。
このダンジョンの上層は基本的に魔法攻撃主体なので、普通はRESを上げて挑むのだが、そのせいでリンゴ剛速球にやられて戦闘不能にされる者が後を絶たない。恐ろしい攻撃だ。
「ポポポポォーーー!!」
なかなか心地よい効果音を出しながらリンゴが24発発射された。
狙いは、シエラのようだ。
たとえラナ狙いだったとしても、射線上にシエラがいるので問題は無い。シエラに任せておけば安心だ。
「『城塞盾』!」
シエラが物理用防御スキル『城塞盾』を発動した。リンゴ剛速球はシエラの盾に勢いよく命中。カカカカカンとぶつかったリンゴはあまりの衝撃に弾けて四散した。
「近接はガンガン攻撃しろ! ラナはシエラの回復だ! 『聖剣』! 『ライトニングバニッシュ』!」
「ん! 『64フォース』!」
「行きます! 『戦槍乱舞』!」
「オオオォォォォ―――――!?」
攻撃している時は別の攻撃は来ない。
リンゴ剛速球中は近距離アタッカーの攻撃チャンスなのでガンガンHPを削っていったのだった。
その後は危なげなくヒットアンドアウェイを続け、ガンガン〈リンウッズ〉を削り、最後の全体攻撃の火炎の津波はシエラが『ファイヤガード』で全員の火属性耐性を上げるなどして乗り切り、トドメはラナが『聖光の耀剣』でズドンと決めて〈リンウッズ〉は膨大なエフェクトの海に沈んで消えたのであった。
やはり上級職だと余裕で勝てるな。シエラのタンクが強すぎる!
「やったな!」
「リンゴのドロップが多いわ!」
「カレーリンゴ! リンゴカレー!」
〈リンウッズ〉の消えた後には多くのリンゴやリンゴ、リンゴが散乱し、そして〈銀箱〉が一つドロップしていたのだった。
色々あってカルアが開けることとなり、中に入っていたのはレシピ。
これはのちに、〈リンゴ菓子のレシピ〉という料理系のレシピだと発覚したのだった。
フラグでも立ったか?
みんな食べ物のこと考えすぎじゃね!?




