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#606 【百炎狐】と【賢者】のユニークスキル発動。




「驚いたわぁメルトはん。うちのグラを簡単に滅ぼすなんてなぁ」


「……言っておくが〈百炎〉よ、貴様ミサトに騙されてるぞ」


「メルトはんがうちらの拠点を攻める、それでミサトはんとの楽しいバトルを中断せざるを得んかったんは紛れもない事実や」


「……確かにそうか?」


 ハクの言葉にようやく納得のいく答えを得たメルト。とりあえずハクがここにいる原因は自分たちが〈3組〉拠点を攻めようとしたためだと、それは理解した。

 しかし、それだけではメルト一人が狙われる理由にはならない。

 やはりミサトが余計なことを言ったのだ。


「あいつめ、後で覚えていろよ。あのウサ耳、今度こそ引っこ抜いて頭ん中覗いてやる!」


「そないなことはさせへんで! メルトはんはここで無様に負けてミサトはんに笑われてしもたらええねん!」


 ハクが構える。戦闘続行だ。

 そんなハクにメルトは自信満々に言う。


「ほう、俺を相手にして本当にいいのか? 負ければ評価が落ちるかも知れないぞ?」


「……ええわぁメルトはん。その身長でそのセリフのギャップ、ミサトはんが構う気持ちもちょっとだけ分かる気がするわぁ」


「やかましいわ!! ――『フリズドスロウ』!」


 身長のことをからかわれたと思ったメルトは頬がそのまま引きつり、衝動で魔法をぶっ放す。

 直撃すれば低確率で敵に〈氷結〉や〈鈍足〉の状態異常を与える〈三ツリ〉、氷属性魔法の『フリズドスロウ』だ。まるで吹雪のような直線範囲攻撃がハクに飛ぶ。


「焦りは禁物やでぇ――『火炎の渦』!」


 吹雪と炎の渦が直撃して相殺する。


「あんまり時間も無いさかい、大技いかせてもらいますえ」


「む、来るか!」


「――ユニークスキル『幻炎(げんえん)百狐(ひゃっこ)』や!」


 ハクがユニークスキルを発動した瞬間、白の炎がハクを包み込み、次には炎が地面に浸透。先ほどの『グラ・シャ・フォックズ』のような、しかし今度は小さき白い炎の狐が十数体、いや数十体が顕現する。否、さらにどんどん増え続ける。

 さらにハク自体も大量の狐に纏わり付かれて、なんだかモフモフ状態になっていた。


「ふふ。この見た目に騙されると痛い目あいまっせ?」


「!!」


 瞬間、狐たちが四方八方からメルトに向かってきた。

 あれは召喚のようなものだとメルトは看破する。

 パメラの分身のようなものだろう、ならば一発当てれば消えると予想する。

 しかし、問題は数だった。百体。なんという多さ。さすがはユニークスキル。メルトはすぐにバックステップで下がり魔法を使う。


「『クイックマジック』!」


 使用したのは魔法の回転力がアップするスキル。手数を増やすのが目的だ。


「『フリズド』! 『メガフリズド』! 『メガフレア』! 『メガライトニング』! 『メガシャイン』! 『メガダークネス』! 『メガホーリー』!」


「――――」


 続いて〈一ツリ〉や〈二ツリ〉の魔法を連打する。

 メルトの予想通り、狐は何か攻撃を受けると消えてしまうようだ。


 しかし、多少消えたとしても数が中々減らない。

 試しに術者本人であるハクに攻撃してみた所、ハクの身に張り付いていた一体が魔法に飛びつき相殺してしまった。

 この狐たちは攻撃だけでは無く、防御も兼ね備えた存在というわけである。なんだそれは。


 あまりにもパメラのユニークと違いすぎた。噂よりも実物は何倍も凶悪だったのだと知る。


「『マジックシールド』! くっ、ダメか。――『シャイニングフラッシュ』!」


 バリアを張る、しかしこれは物量によって簡単に破られ、ほとんど意味がなかった。続いて〈光属性〉の範囲攻撃で打ち消しを狙う。これは効果があった。効果範囲に巻き込まれた狐が12体消える。


「範囲攻撃が最善か、『フレアバースト』!」


 さらに直線範囲攻撃『フレアバースト』を使うが、これは10体屠ったところでかき消されてしまった。相手の狐はまだ半分も減っていない。

 しかし、数を消すことが出来るために範囲攻撃が最善だと看破するメルト、だが次が続かない。範囲攻撃はクールタイムが長く、メルトの持つ範囲攻撃は全てクールタイムに突入していたからだ。


 この隙を逃さず、メルトに接近する狐たち。

 四足なためかメルトよりも素早く、ついにメルトを捉え始める。


「ぐっ!?」


 狐の突撃がメルトの杖を弾き、体勢を崩した所にもう一匹が腹に突撃する。

 一度攻撃が届けばもうそこからは狐たちの独壇場だ。

 徐々にメルトは包囲されていき攻撃されてHPが削られていく。


「『バリア』! 『リフレクト』!」


 最後の抵抗でバリアと反射魔法を使うが焼け石に水で、物量に飲み込まれてしまう。

 数秒後にはハクと同じく、大量の狐に纏わり付かれているメルトができあがった。もう足も動かせない。動かせるのは片腕くらいだ。

 なお狐たちは炎が具現化した姿なので纏わり付かれたメルトのHPは〈火傷〉の継続ダメージの比じゃ無いことになっている。


「『メガヒーリング』! 『エクストラヒーリング』!」


 メルトは回復魔法でHPを回復させるが、クールタイムの関係でもう回復魔法は使えないだろう。なんとかしなければメルトはこのまま退場。絶体絶命に陥った。


「いくら回復しても無駄やわぁ。その子たちを消さんかぎり、HPが減る方が早いでぇ?」


 ハクの言葉は真実だ。

 このままではあと10秒ほどでメルトのHPはゼロとなるだろう。

 この状況を個人で打破できる魔法、自身に纏わり付いた狐たちを攻撃する魔法をメルトは持っていなかった。


 ハクは勝利を確信する。

 このユニークスキルは非常に強力だ。四方八方から突撃する狐たち。数が多すぎて個人では対処しきれず、範囲攻撃を何発か使ってようやく撃破出来る。そんなレベル。

 しかも威力が低ければ身を犠牲にした狐により相殺されてしまうこともある。先ほどハクを狙ったメルトの攻撃が狐に防がれたように。


 初戦でいくつかの拠点で使用し、相手の抵抗もむなしく全てをこの『幻炎(げんえん)百狐(ひゃっこ)』で飲み込んで倒した圧倒的なユニークスキル。

 これが高位職、高の上に位置する【百炎狐】のユニークスキルである。




 しかし、あまりに強力すぎるためにデメリットが存在する。

 だが、それは数十秒で看破できるものでは無い。弱点なんて知られなければないのと同じなのだ。


 そう考えていた。

 しかし――メルトの【賢者】は伊達では無い。

 メルトは魔法を使いながらこのユニークスキルを観察していた。


「そういうことか――」


 少しの間身動きもせず、されるがままになっていたメルトが突然呟いた。

 そのまま杖を突き出し魔法を使う。


「『エリアヒーリング』! 『ヒーリング』!」


 エリア回復魔法と〈一ツリ〉魔法。回復量は多くはないが、これでメルトの退場は8秒ほど伸びた。


「そのユニークスキルの弱点が分かった」


「……へぇ」


 メルトは自分のHPがすごい勢いで減っていくのにも拘わらず、それを無視して杖をハクに向けた。

 もはや自分に纏わり付く狐たちに何の対処もせずにメルトの狙いは一点に絞られる。


「――『マジックブースト』!」


 ハクが目を細め、見極めようとするのを無視し、メルトは自身の魔法力がアップするバフを発動する。


 これにはハクも焦る。

 どんな攻撃だろうと一発で消えてしまう狐相手に攻撃力アップなんて意味は無い。

 ここに来てメルトが本当にユニークスキルの弱点を看破しているのだと察する。

 さすがにこの状況でバフは普通使わない。


「終わりだ〈百炎〉――ユニークスキル『アポカリプス』!」


 それはメルトの最強魔法。

 バフで魔法力が底上げされ、並のモンスターでは何匹居ても防ぐことはできない、対ボス用を約束された超威力の魔法。


 それがハクの元へと飛んでいく。

 途中に居た狐たちが次々『アポカリプス』に飛びかかっては消えていく。『アポカリプス』はユニークスキル。さすがに数が減った狐たちでは打ち消せない。

 ハクの身に纏わり付いていた狐たちもハクを庇わんとして突っ込み、そして全て消えていった。

 ハクもワンドを前に出し、しかし、そこからは何の魔法も出なかった。


「ユニークスキル中は魔法を使えない、そうだろう〈百炎〉。パメラは分身中でもスキルを使いまくっていたが、〈百炎〉は魔法を使えば楽に俺を追い詰めることが出来たのにもかかわらず何も使わなかった。否、使えなかったんだ。それに、わざわざ狐に攻撃を防がせたということは、その場からも動けないんだろう? 故に狐ではなく、術者本人に超威力のユニークスキルをぶつけるのが最善だ」


「―――その通りや。えらい慧眼やないのメルトはん。うちの負けや」


 その言葉を最後に『アポカリプス』がハクに直撃。

 ハクのユニークスキルは諸刃の剣。

 魔法純アタッカーのハクはこのダメージに耐えられず、退場してしまうのだった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 処理落ちしてるようなイメージが浮かぶ。
[一言] 賢者より百炎狐の方が格としては上なのに勝ったってことは割とジョブの格差はプレイヤースキルで簡単に覆せるもんなんだな
[良い点] 初見で百炎狐のユニークの弱点見切ったメルトさんはさすが賢者… [気になる点] これでハクのユニークスキルの弱点が露見してしまったと言うのは痛手…遠巻きに遠距離ユニークの飽和攻撃しまくれば落…
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