#604 シズVS〈5組〉最後の精鋭メンバー!
〈5組〉拠点からは様々な攻撃が飛ぶが、そんな遠くからの援護ではカルアを捉えることは難しい。
カルアは易々と回避し、今まで戦闘で活躍出来なかった鬱憤を晴らすかのようにモンスターを倒していく。
ハイウドもなんとかシズに食らいつこうと頑張るが、シズは【戦場メイド】。
攻撃力とか搦め手とかとても強い。
というより遠距離から銃撃してくる相手に単身で接近戦を挑むほうが難しい。
「『閃光弾』!」
「ぐおお!? 目が、目がぁぁぁ!?」
相手を〈盲目〉状態にする〈閃光弾〉も見事に命中。完全にハイウドを翻弄していた。
ハイウドも機械系の頭装備を付けていれば〈盲目〉に耐性ができるのだが、無いのだから仕方が無い。【サイボーグ】には本来目潰しなんて効かないのだ。今はパーツ不足なので効く。残念。
「これで終わりですね。『ジャッジメントショット』! 『マルチバースト』!」
「うおおお――――」
そして大した活躍もできずにハイウドは退場してしまうのだった。
シズの攻撃力が高すぎる件。
「……邪魔者は消えました。カルアと合流を――」
一戦を終え、気を抜いた――その瞬間。
新たな敵影がシズを襲った。
「『突撃氷槍』!」
「! はぐっ!?」
いきなり敵影が後ろから突撃してきたことでシズは咄嗟に横に跳ぼうとするが、さすがに無理があった。氷の槍が振り返るシズの横腹に命中し、シズが吹き飛んでしまう。
「あ、新手ですか!」
すぐに両手を地面に突く形で受け身を取って立ち上がり襲撃者を見るシズ。ダメージは、4割ほど。
そこにいたのは足の裏に氷を形成して滑る、元第四要塞を任されていた部隊長、〈5組〉のリャアナだった。
彼女の職業は【氷槍士】。
主に〈氷属性〉の槍攻撃を得意とする高位職だ。
連合主力の方針が変わったことにより離脱したリャアナは、移動速度を飛躍的に高める『氷滑走』を使い、〈5組〉の援護に来たのだ。
リャアナは、要塞が陥落したときリーナとは別行動で指揮していたが、その後連合主力の中に入り〈1組〉と交戦していた。そしてリーナの宣言で西へ向かい今に至る。
シズは後衛だったため、またハイウドに追いかけられていたためずいぶん拠点から下がっていた。つまり孤立。そこを突かれてしまった。
「リャアナさんですね」
「〈5組〉拠点はやらせはしないわ!」
シズはちゃんと相手のことを知っていた様子だ。1年生強者の情報は大体シズの頭に入っている。
一度は近づけてしまったことを反省し、シズが再びアサルトライフルのような銃を構える。
リャアナも槍を構え、緊張が高まった。
そこへ、新たに援軍が到着する。
「『回復の願い』!」
「「!!」」
遠距離からの回復魔法がシズのHPを全快にしてしまったのだ。
こんなことを出来るのは我らが〈エデン〉の王女様しかいない。
シズは視線で見ると、向かい合ったリャアナの遥か後方に馬車が止まり、その近くには遠くても見間違うはずもない。シズの主様がそこに居た。
さらには巨大な4つの光の宝剣。
振り向いてそれを見たリャアナは固まる。
そして次の瞬間には駆け出そうとした。
「行かせるとお思いですか?」
「くっ! 邪魔はさせないわ! ユニークスキル発動! ――『巨氷塊槍』!」
リャアナはその言葉にすぐにシズに振り向くと、躊躇なくユニークスキルを発動した。
リャアナが持つ槍が一瞬で超巨大な氷の槍になると、シズに向けて放たれる。
ラムダの『聖光剣現・真突』に見た目そっくりな巨大な氷槍の質量攻撃だった。
氷の槍が巨大すぎてリャアナは完全にその影に隠れ、シズからの攻撃からも身を守る構えだ。
これはリャアナの奥の手だった。この状況、温存は悪手とすぐに判断し、自分も隠せて相手も攻撃できる巨大氷の質量攻撃を選択したのだった。これをシズが対処している隙にラナたちの元へ向かう心算だった。
もっとも、これがシズに通じるのかといえば、難しかった。
「ユニークスキル発動、――『優雅に的確に速やかに制圧』!」
対抗してシズもユニークスキルを発動する。
ラナの元へなんて絶対に行かせられないシズは、ここに来て強力な自己バフを使い一気に前へ出たのである。
本来両手銃である〈冥土アサルト〉を左手で装備し、〈空間収納鞄〉からもう一つの〈冥土アサルト〉を取り出して右手に装備する。
そして両方の銃から同時にスキルが発動する。
「――『徹甲弾』! 『マルチバースト』!」
まずシズから放たれたのは〈戦車〉すら簡単に戦闘不能にすることが可能な『徹甲弾』。
二丁両手銃から一発ずつ放たれたそれは巨大氷槍に突き刺さり大きく損壊、蜘蛛の巣状の亀裂を入れた。
続けて一瞬で数十発の弾をぶっ放す『マルチバースト』を二丁両手銃で発動。
一瞬で百発以上の強力な弾丸を受けた『巨氷塊槍』はそのまま砕け散って消えてしまう。
「な、――な!?」
自信のあった自分の奥の手があっさりと破壊されリャアナは目を見開き硬直する。
「遅いです。――『魔弾』! 『連射』!」
「!! かはぁ――!?」
シズの前で驚愕に固まってしまったリャアナは、次の攻撃に対応することが出来ず、シズから放たれた二つの弾丸に打ち抜かれ、その後は弾丸の嵐を受けてそのまま退場してしまう。
「見事でしたよ」
自分に気づかれずに背後を取った。
飛んでいく宝剣を見送りながら、そのことについては素直に称賛するシズだった。
そのまま〈5組〉拠点へと向かう。
ラナの攻撃にさらされ、カルアの機動力に追いつけず、そこにシズとエステルまで加わって、僅かな時間で〈5組〉の拠点は陥落してしまうのだった。
――〈5組〉5位。
途中経過――〈残り時間:2時間30分00秒〉
〈1年1組〉『残り人数:20人』『ポイント:474点』
〈1年3組〉『残り人数:6人』『ポイント:0点』
〈1年8組〉『残り人数:17人』『ポイント:787点』
〈1年51組〉『残り人数:6人』『ポイント:315点』
〈1年5組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』5位
〈1年12組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』6位
〈1年9組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』7位
〈1年10組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』最下位