#556 〈12組〉は強敵か? 連合の存在と情報伝達。
俺の却下を聞いたアケミさんとその取り巻きたちは固まった。
固まって固まって、最初に口を開いたのはアケミさんだった。
「――ちょっと待って本気!? 四クラスで組めば、最低でも4位入賞はできるのよ!?」
「いや、〈1組〉は防衛に専念すれば4位はイケるから大丈夫だ」
「下手をすれば私たちが〈1組〉を攻めるかもしれないのよ!?」
「むしろウェルカムだ! どんどん攻めてきていいぞ。全部返り討ちにしてやるぜ!」
「…………」
キラーンと良い笑顔な俺の答えに笑顔が引きつり固まるアケミさん。
しかし、すぐに再起動するとその場でクルりと後ろを向いて取り巻きたちと何か相談し始めた。
「(ちょっとどうするのコレ!? もし却下されたときは私たち三クラスで攻め込むかもって言えば少しは考えるものでしょ!?)」
「(ひえっ!? いや、僕も予想外っていうか……、ねえワルドドルガさん)」
「(まさか歓迎するとは思わなかったぞい……)」
「(なんで勇者君は目を輝かせて歓迎してるの!? なんで大歓迎!?)」
そのまま何かを相談していたようだったが、俺もそれほど時間があるわけではないので声を掛けてアリーナへ向かうことにした。
「じゃ、そういうことで、いい試合にしようなぁ~」
「ああ! ちょっと、ちょっと……、――うわぁーん憶えておきなさーいっ!」
「あ、アケミさん!?」
「ちょ、ちょっと待つんだぞい!?」
アリーナへ向かおうとしたらなぜかアケミさんが捨てゼリフを残して逃走した。
慌ててカジマルとワルドドルガも追いかけていった。
ここには俺だけが残された。
なんというか、面白い人たちだったなぁ。
今の時代にあんなセリフを言う人は珍しいぞ。
俺が新鮮なセリフに感動すら憶えていると、すぐ横から人影が近づいてきた。
「ゼフィルス様、おはようございます」
ばったり会ったのは、セレスタンだった。
「おお、おはようセレスタン!」
「何やらご機嫌ですね」
「分かるか? 今な、面白い人たちに出会ってなぁ」
そのまま一緒にアリーナへ向かう。
ついでに今出会った面白い人たちとのやり取りを話していった。
「――ということらしいぞ」
「なるほど、半数クラスからの攻めですか。実現すればそれは凄まじいですね」
「ああ。対抗するには〈1組〉が全力をもって当たる必要があるな、面白くなってきた!」
今までの〈拠点落とし〉が温かったとは言わないが、〈1組〉には上級職が五人もいるのだ。もう少し手応えのある試合をしてみたいという気持ちもあった。
苦戦してみたいとか、ちょっと贅沢だけどな!
おっとそうだった。ちょうど良いからセレスタンにも一昨日考えた作戦を伝えておくとしよう。
「そうだセレスタン、話は変わるが〈竜の箱庭〉について教えておきたいことがあるんだ、実はな――」
セレスタンには今日も筋肉たちを連れて遊撃をしてもらうことになる。ということで〈竜の箱庭〉対策は必須だ。後で言おうと思っていたのだが、ちょうど良いので今のうちに伝えておく。
そんなことを話しているとアリーナへと着いた。
俺たち〈1組〉の控え室には、すでに大体のクラスメイトが揃っていた。
挨拶をしながら入室する。
「おはようみんな!」
「おはようゼフィルス! 今日は遅かったじゃない」
真っ先に挨拶を返してくれたのはラナだった。
少し首を傾げて「珍しいわね、あなたなら真っ先に来ていても良いくらいなのに」とでも言うように見つめてきた。
他のクラスメイトたちも挨拶を返してくれるのでそれに答えつつラナの方へと向かう。
「なんか、面白い人たちと会ってなぁ。いや、これについては全員揃ってからまた言おうか」
「?」
それから10分後、最後に毛皮装備蛮族スタイルの〈マッチョーズ〉たちが全身から湯気を出しているかと幻視するほどホコホコした体でやってきた。
何人かは下敷きで顔を仰いでいる。
「待たせたな。我らの筋肉は完璧な仕上がりだぞ!」
筋肉たちのギルドマスター、アランが言う。
どうやらウォーミングアップは完璧な仕上がりだと言いたいらしい。
試合開始までまだ1時間近くあるのだが……。冷めたりしないのだろうか?
まあいい。
とりあえずさっきの話をみんなにも伝えておこう。
「全員集まったな。じゃあ連絡事項を説明するぞ!」
端に控える我ら〈1組〉の担任フィリス先生に目配せするとニコっと笑って催促してくれたので俺が指揮を執る。
どうやら生徒の自主性に任せるスタイルらしい。任せてくれ!
まずは相手クラスの情報共有からだな。先ほどあった話を改めてみんなに伝える。
「――というわけで、〈12組〉はどこかと組んで三クラスで行動する可能性が高い。さらにそこに他のクラスが加わっている可能性もある。多ければ四クラスを相手にする必要があるわけだ。さすがに四クラスが相手となると、〈1組〉は全力を持って当たる必要があるな」
俺の発言にざわめきが起きる。
さすがに四クラスが攻めてきた場合は数の差がありすぎて防衛担当だけでは厳しい。
攻撃担当も戻し、〈1組〉は総力で対処する必要がある。いくつかの対抗策とプランを改めて連絡しておいた。
「重要になるのはやはり情報伝達だ。カルア」
「ん」
俺の言葉に全員の視線がカルアに注目する。
「速さが勝負だ。まずはこのフィールドを詳らかにし、情報伝達を密に頼む。拠点の位置を始め、どことどこが組んでいるのか、どことどこが争っているのかなどを事細かに頼むぞ。そして俺たち〈1組〉の拠点へ攻めようと集まっている情報を見つけたら即連絡を頼む。今回時間による定期連絡は無し、どこかが大きく動いたらその都度連絡が欲しい」
「……ん」
カルアがいつも通り頷く。
なんか間があったような気がしたが、大丈夫だろうか?
「大丈夫か? やれる?」
「私の黒猫は優秀」
「そうか? もし厳しかったり手に負えなさそうなら戻ってきてくれ」
「ん。わかった」
重要なのは情報だ。四クラスの件もあるが、相手にリーナがいるので、決勝は情報合戦になる。これに出遅れたが最後、リーナに掌で転がされてしまうだろう。そうなれば〈1組〉とて危うい。
情報関係をカルアに全て任せてしまうのも何だが、カルアのスキルは〈1組〉で一番優秀だ、頼りになる。
問題があるとすればカルアの性格だが、それも【スターエージェント】の職業補正によってどんどん良くなってきている。
きっと大丈夫だろう。
「――とりあえず、こんなところか」
「ふん。不遜な輩だな」
サターンがなんか言う。
いや、その後を追うように腕を組んで胸を反らし、なぜか大物感を出している〈天下一大星〉たちが続いた。
「ふふ。僕たちをたった四クラスが組んだくらいで落とせるとは思わないでもらいましょうか」
「俺の斧は今日、強敵に飢えている」
「どうやら俺様の存在を忘れているようだ。しっかり思い出させないとな」
と申しているが、おそらくこの四人だけでは人波に飲まれて終わると思われる。
今回ばかりは俺の指揮に従ってもらうぞ。
「さて、後はフィールドと拠点が決まってからだな。そろそろ時間だ。会場に行こうか。――フィリス先生。準備オーケーです」
「はい。では皆さん行きましょうか」
俺がクラスメイトたちに告げ終わるとフィリス先生に向かって準備が出来たことを伝えた。フィリス先生の後に続き、移動開始だ。
試合開始まで残り30分。
これから決勝戦となる会場のフィールドを選定し、俺たちの拠点の場所を選択する。
後書きにて再度お知らせを失礼いたします。
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