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ゲーム世界転生〈ダン活〉~ゲーマーは【ダンジョン就活のススメ】を 〈はじめから〉プレイする~  作者: ニシキギ・カエデ
第十一章 〈ダン活〉クラス対抗戦!!

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#548 インタビューと試合結果。決勝戦の作戦を練る。




 おお!!

 と内心驚く。


 やはり、ユミキと名乗った先輩は上級職、索敵系の最強職の【フリーダムメビウス】だった。

 ゲーム〈ダン活〉時代、俺も何度もお世話になった職業(ジョブ)でこれと専用装備アイテム〈メビウスの輪〉、それといくつかの要素を取り入れると上級ダンジョンが秒で丸裸になるという、大人気職業(ジョブ)だった。


 カルアの『ピーピング』スキルよりも数段上の性能を誇るぞ。何しろ数が違う。

 さすが、索敵探索系の特化職である。


 まさか、リアルにこれを使っている人がいるとは思わなかった。

〈メビウスの輪〉のドロップ率の低さもさることながら、【フリーダムメビウス】は下級職高位の索敵特化職【センサー】が〈メビウスの輪〉を持った状態で〈竜の像〉に触れる必要があったからだ。

 なかなかに高難易度で自然発見が難しいはずだが、よく見つけたなと感心する。


 いや、もしかしたら過去に事例があったのかもしれないな。【センサー】から【フリーダムメビウス】へ〈上級転職〉できるという情報と〈メビウスの輪〉という装備アイテムがあればそれほど難しくはないかもしれない、と考え直す。実際ゲーム〈ダン活〉時代も【フリーダムメビウス】はそうやって情報を集めて発見したからな。


「こちらも、自己紹介するわ」


 おっと、そうだった。感心している場合ではない。

 俺たちも自己紹介を返す。


「私は〈戦闘課1年1組〉、ギルド〈エデン〉のサブマスターシエラ。職業(ジョブ)は―――」


 しかし、職業(ジョブ)のところでシエラがピタッと止まる。

 そしてユミキ先輩を見つめた後、ポツリと言った。


「――職業(ジョブ)は秘密よ」


「あら、残念」


 茶目っ気を出しながらユミキ先輩がそう言った。

 どうやら自己紹介に自分の職業(ジョブ)を公開したことで俺たちの職業(ジョブ)も自然な流れで教えてもらおうとしたらしい。なんとしたたか! さすがは〈調査課〉だ。


 ちなみに俺は別に職業(ジョブ)を公開してもいいのだが、ラナを始め、気軽に言うのはまずい職業(ジョブ)というのがあるらしい。

 シエラの【操聖(そうせい)の盾姫】や、エステルの【戦車姫】は、この世界でも未発見の職業(ジョブ)らしいからな。当然ながら俺のもそうで、【救世之勇者】なんて御伽噺にも出てこないという。職業(ジョブ)の公開にはしかるべき機関を通した方が混乱は少ないということで、俺たちはシエラから職業(ジョブ)の公開に待ったを掛けられている状態だった。


 俺たちは職業(ジョブ)を秘密で自己紹介していく。


 また、自己紹介中、俺はもう一つ驚きの事実に気がついた。

 下級職の時の俺たちの職業(ジョブ)は周知されていたはずだった。結構勇者君って呼ばれたし、入学式の時多くの人前で職業(ジョブ)一覧を見せ付けたからな。

 それなのに改めて自然に聞き出そうとしたということはだ、彼女はあの試合を見ただけで俺たちが上級職だと見破ったということだ。


 マジか!

 すごいなユミキ先輩!

 いくら【フリーダムメビウス】とはいえ職業(ジョブ)が分かる性能なんて無いはずなので、自力で見破ったということだ。

 素晴らしい。俺はユミキ先輩に興味がわいた。


「ユミキ先輩!」


「あら勇者君、何かしら?」


「〈エデン〉に来ませんか?」


「「「!?」」」


「ちょっとゼフィルス、いきなり何言ってんのよ!」


 気がついたら有能な先輩をギルドにお誘いしていた。

 ルル以外全員ビックリしたのちラナが俺の右腕を掴んでくる。


「素晴らしいユミキ先輩をギルドにお誘いしたい」


 俺は端的にそう返す。何しろ【フリーダムメビウス】だ。

 それにとっても有能で素晴らしい人材。むしろ勧誘しなければ逆に失礼ではなかろうか?


「だからちょっと待ちなさい。なんであなたはそう、ちょっと落ち着きなさい」


 シエラも俺の突然の行動に混乱している、ラナとは違う方の腕を掴んでちょっと待てと訴えてきた。

 とそこで前にいるユミキ先輩からクスクスという笑い声が聞こえた。


「ふふふ、もう、さすが勇者君ね。いきなり上級職の先輩をお誘いするなんて。でもごめんなさい。私は今の活動が気に入っているのよ。〈エデン〉のお誘いは嬉しいけど、遠慮させてもらうわね」


「んー、そりゃ残念」


 ユミキ先輩が可笑しそうにお断りの言葉を継げる。迷う余地すらないとは、これは無理そうだな、残念、断られてしまった。


 すると、俺の両腕を掴んでいたラナとシエラもホッとした様子で掴んだ手を離した。

 なぜかちょっぴり寂しくなった。


「それで、どこまで話していたのだったかしら」


 仕切り直しとばかりにシエラが口を開くが、あまりの衝撃にどこまで話していたのか飛んでしまったらしい。そんな衝撃的なことを言った覚えはないのだが、とりあえず、話をぶった切ってしまってすみませんと心の中で謝っておいた。


「まだ自己紹介しただけね。上級職の皆さんはこっちに来て、〈学園の鳥〉兼〈調査課3年1組〉がインタビューするわ」


 そう言って会議室の一角にあるソファーに案内するユミキ先輩。もう俺たちが上級職だと確信している様子だな。


 あれ?

 しかし、そう考えるとここには1名、上級職ではない子が居るのだが、どういうことだろうか? 自然と目がルルに向く。

 すると、ユミキ先輩も口元に手を当てて説明してくれた。


「ふふ、そこのヒーローちゃんは私たち〈学園の鳥〉ではなく、校内新聞がインタビューしたいみたいなの」


「はい! ルルちゃんには是非、我々校内新聞〈学流(がくりゅう)の海風〉がヒーローインタビューさせていただきたく!」


 そう言って立ち上がったのはユミキ先輩の後ろにいた男女の学生、2人ともメガネを掛けており、女子はマイクを、男子はレポート用紙を構えていた。2人とも襟に緑の刺繍のが入った学生服を着ているので2年生だろう。


 しかしヒーローインタビューとは?


 ちなみに〈学園の鳥〉や〈学流の海風〉とはギルドではなく、〈総商会〉のような学生が働く機関のことだと補足しておく。また、学生だけではなく大人も働いているぞ。


「ということで、上級職の方はこちらへどうぞ。ルルちゃんはそっちね」


 そんなことを言って俺たち5人をソファーに案内するユミキ先輩。

 ため息をついたシエラがその後に付いていったので俺たちも付いていくと、ユミキ先輩の視線がエステルに向いていることが少し気になった。


 3人用ソファーと1人用ソファーの椅子二つに俺たちが着席すると、向かいの椅子に座ったユミキ先輩が話し出す。


「それでは勝利者インタビューを始めるわね。まずは〈戦闘課1年1組〉初戦突破おめでとうございます!」


「ありがとう」


 ついにインタビューが始まった。

 ユミキ先輩の言葉に代表して応えるのはシエラだ。

 なぜ俺ではないかって? シエラから「私が代表で受け答えをするわ」と言われたからだ。なぜだろう?


「過去最高点数とも言われる2303点という超高得点に加え、試合自体も超最速の42分で終了という前代未聞の結果。その激動のトリガーとなった〈1組〉に是非心境と試合の解説を聞きたいの。あと、出来れば上級職についても個人的なことも色々聞きたいわ」


「上級職については語れることは無いわ。まだ試合が残っているので手の内をさらけ出せないの。でもそれ以外なら構わないわ」


「なるほど、ではまずは心境をお聞きしていいかしら、第一ブロックが決まったときどう思いました――」


 インタビューが始まると、ユミキ先輩の〈メビウスの輪〉が一斉に動き俺たちの周りに散らばった。

 これ、多分多角的に俺たちのことを見ているな。

 全員の一挙手一投足、そして発言を逃さないという気迫を感じるぞ。


 とはいえ、それを知っているのは俺だけだ。

 他のみんなは不思議そうに〈メビウスの輪〉を見ているな。

 まあ、見た目はただの黒い球体だからな。

 いや、カメラがあったとしても分からないかも? この世界ってカメラ全然見ないし。唯一と言っていいのがアリーナのスクリーンだからな。


 そんなわけでみんなほとんど緊張も無く話を続けていく。


 インタビューの内容は、本当に勝者への簡単なインタビューだった。

 もっと戦術とか、スキルのコンボとか、俺たち〈1組〉の作戦とか色々聞いてくるのかと思ったのだが、ほとんどそんなことはなかった。せいぜいどんな心構えで挑みましたかと聞かれるくらいだ。


 俺たちも無難なことだけを答える。どうやらこの勝利者インタビューというのはクラス対抗戦でもお決まりのもので、この取材は〈調査課〉のクラス対抗戦で使われるらしい。どういう基準の審査なのかはよく分からないけどな。

 せっかく俺たちを取材したのだからユミキ先輩には是非勝ってもらいたい思いもあるが、シエラから「余計なことは言わないように」のオーラがすごかったので仕方ない。黙っていることにする。


 10分程度でインタビューも終わった。


「今日はありがとう。それと、また何かあったら話を聞きたいのだけど、連絡先とか聞いてもいいかしら?」


「それくらいなら、別に構いませんよ」


「俺も構わない、むしろ是非交換してくれ! そして心変わりがあれば教えて欲しい」


「ゼフィルス?」


「ふふふ、それじゃ、これが私の連絡先ね」


 インタビュー後、今後も情報交換することもあるだろうから〈学生手帳〉の連絡先を交換した。俺のお誘いは簡単に流されてしまった。残念。


 しかし、インタビュー自体も新鮮でよかったが、ユミキ先輩との出会いが何より良かったな。


 ちなみに1人ヒーローインタビューを受けたルルだが、


「ここでビューンと飛び込んで吹っ飛ばしたのです! こうなのです、こうぴょんぴょんってジャンプするのが重要なのです!」


 ルルが可愛らしくぴょんぴょんと飛び跳ねながらインタビューを受けていた。

 おそらく戦闘風景の再現なのだろうが、あまりに可愛らしすぎる。剣も持っていないのでお遊戯に見えてしまうのだ。例の〈学流の海風〉の2人はどちらもだらしない顔でそれを見つめていた。


 そしてニコニコ顔で〈メビウスの輪〉をそちらに向けるユミキ先輩。

 誰を見ているのでしょうね? 全角度でルルの可愛い姿が見れるとか羨ましいぞ!




 翌日、俺たち〈1組〉は他のクラスの観戦に第五アリーナへ来ていた。

 所謂敵情視察だな。


「やはり、〈4組〉〈6組〉が勝ちあがったか」


「準決勝、私たちの第十七ブロックの出場クラスね」


 俺の呟きに隣に座っていたシエラが頷く。

 第十七ブロック~第二十ブロックは準決勝戦ブロックだ。

 第一ブロックから勝ち上がった俺たち〈1組〉は、次に第十七ブロックで〈拠点落とし〉をすることになる。


「そういえば第六アリーナはどうなった?」


「無事〈8組〉が勝ちあがったみたいね」


 シエラが〈学生手帳〉を片手に教えてくれる。

 メルトたちのクラスも勝ったみたいだな。

 となると、心配なのはリーナのクラスだが。


「リーナは大丈夫かな」


 そう言うとなぜかシエラからジトッとした目をプレゼントされた。


「何言ってるのよ、〈竜の箱庭〉の使用許可まで出しておいて。リーナが負けるわけないでしょう」


 そう、俺はリーナに〈竜の箱庭〉の使用許可を出していた。

 シエラはギルドの機密だからと少し迷っていたが、俺たちだってギルド資産の〈上級転職チケット〉や〈召喚盤〉を使っているし、リーナやメルトたちだってギルドのアイテム類を使っても問題は無いだろう。


〈竜の箱庭〉だって、別にバレたところで本拠地や拠点に置く設置型だ。リーナに対処しようにもどうしようもないだろう。

 それに、リーナが〈竜の箱庭〉を使って試合をする、いい経験になるだろうからな。

 そう提案すると、シエラは一つため息を吐いて頷いてくれたのだった。


 しかし、俺の心配が尽きることは無い。


「そうは言っても、やっぱり中位職のクラスだからなぁ」


 リーナのクラスは中位職のクラス、〈竜の箱庭〉を使っても勝てるか少し心配だ。

 リーナは〈1組〉になりたいって言っていたからな。出来るだけ叶えてあげたいのだが。



 ちなみにリーナの〈51組〉だが、俺の心配をよそに結局今日の試合で準決勝に進むことが決まった。

 かなり一方的な試合だったとだけ言っておく。

 どうやら杞憂だったみたいだ。これなら決勝まで余裕で行けるな。


「このまま行くと、メルトやリーナのクラスとは決勝で当たりそうね」


「良いじゃんか! こりゃ楽しみだな!」


「もう、一筋縄じゃいかないわよ? 〈竜の箱庭〉を使用許可出した後悔とかしないかしら?」


「任せとけって! 実は〈竜の箱庭〉だって万能じゃないんだ。ちゃんと作戦を考えておくさ。幸いにも明日は1日時間あるからな」


 明日は3日目。

 幸いにもどこも知り合いの試合も無いので一日ゆっくり作戦を練れるだろう。


 メルトとリーナにも決勝で当たりそうだなと伝えると、最終調整に行きますわと言って、3日目はリーナ、メルト、レグラム、ノエル、ラクリッテを含む何人かのメンバーで中級中位(チュウチュウ)の〈猛獣の集会ダンジョン〉に挑んでいった。


 本気の本気だな。

 うむうむ、非常によろしい。

 本当に最終日のクラス対抗戦が楽しみだ!

 俺も早速作戦を練るぜ!




〈ダン活〉電子書籍の発売まで残り3日!

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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
グレーだったエステルが誘導されちゃった さすが調査先輩
[良い点] ルルが可愛すぎる メビウスの輪かっけ〜!ロマンあるなぁこの装備! [一言] リーナ勝って良かったぁ
[一言] 箱庭はやっぱり使用許可出しますよね。 1組勢だけギルドアイテム自由に使い放題とか、流石にひどいですし。 リーナに制限させるなら、1組だって規制しなきゃいけなくなっちゃいますもんね。 玉座とか…
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