#546 第一ブロック戦終了。大波乱な結末。
――大波乱。
優勝候補の1つと言われていたクラス〈2組〉。
それを破る〈24組〉。
これは〈24組〉が勝ち抜くのだろうと観客席の多くがそう思った。
しかし、その直後に立場が逆転。〈1組〉との予期せぬ邂逅により甚大な被害を受けた〈24組〉主力。そして何とか逃げ延びたリーダーすら〈45組〉のリーダーに討ち取られた。
結果は7位。
最下位〈2組〉だけでも大きく沸いた会場が、今では沸騰するどころか爆発する勢いだ。
実況席のキャスとスティーブンも、稀に見る波乱な会場に喉が枯れそうな勢いで叫ぶ。
「大波乱だぁぁぁぁぁぁ!!」
「やってくれましたよ〈45組〉! 最初から〈24組〉との不仲が懸念されていましたが、最悪な形で表面化しました!」
「これが激戦区の魔力なのか!? このブロックで勝つにはここまでしなくてはならないのかぁぁぁ!?」
「そしてさらには〈15組〉と〈58組〉が虫の息です! これは攻めに出るしかありませんね! 上級職とはここまで差があるのですか!」
「まさかまさかの上級職の登場!! 思い出すのはたった1人で全ての攻撃を弾き返し、相手同盟軍の全てを抑えてのける美麗な女子! 私、あの方のファンになっちゃいそう!!」
「それについてとことん語りたいところでありますが、状況がどんどん変化していきそれどころではありません!! ここで〈1組〉防衛部隊が〈58組〉の拠点へ攻め込みました!! 南側に続いて北側に注目してください! また〈15組〉拠点にも微笑みの筋肉部隊が侵攻しています!」
「スティーブン君スティーブン君、混ざってる混ざってる! 〈微笑みのセレスタン〉と〈マッチョーズ〉の部隊な!? しかしこれは決着かぁ!? ここに来て〈1組〉の動きが激しくなってきたぁぁ、いや最初からかぁぁぁ!! さらに〈1組〉が〈45組〉に狙いを定める、同時攻撃だぁぁぁ!!」
――――オオオオオオォォォォォォォッ!!!!
果たしてここまで熱狂したことがあっただろうか、という勢いで実況席と観客席が盛り上がる。
ここで〈1組〉がまた大きく動いたのだ。
セレスタン率いる〈マッチョーズ〉の部隊が〈15組〉の拠点へ攻めに出る。
〈15組〉の残り人数は5人。きっとネタジョブ最強のマッチョたちによって悲鳴が量産されるだろう。
さらに〈1組〉防衛担当たちもお返しとばかりに〈58組〉へと逆侵攻を掛けた。出るのはラナ、シエラ、ルル、サチ、エミ、ユウカの6名だ。
これはカルアから「〈1組〉の拠点周囲に敵影無し」という報告があり、同時に〈45組〉〈99組〉〈116組〉が〈24組〉拠点へ向かったという情報があってこそできることであった。
ついでに〈58組〉拠点が近いために防衛担当で攻めても、危険が迫ればすぐに戻ってこれるという計算あっての行動。ラナが先陣を切ってウキウキ攻めに行ったとかなんとか。
そうして〈58組〉が最初に落ち、6位が決定する。
その後、〈15組〉はセレスタンと〈マッチョーズ〉に落とされ5位という結果に終わる。
防衛モンスターも全てなぎ倒し、〈1組〉に780点という超高得点が入って逆転、ポイントトップに耀いたのだ。
さらにそれだけでは終わらない。
南側ではゼフィルスチームが動きを見せていた。
残っているのは〈1組〉、そして〈45組〉〈99組〉〈116組〉の軍だけ。
さすがに三クラスを同時に相手にすれば〈1組〉とて厳しいかもしれない。
そこで軍が〈24組〉を攻め立てている絶好の機会に、ゼフィルスチームは巨山を時計回りに回りこみ、手薄との情報のあった〈45組〉〈116組〉〈99組〉を狙いに行く。ここで勝負を決める狙いだ。
まずは一番近い〈45組〉。軍が〈24組〉に攻め込み拠点が手薄になっている隙に背後から強襲したのである。
〈45組〉が〈24組〉から帰ってくる前に落としきる作戦である。
また、ここで〈45組〉を落とすことができれば、軍は大打撃を受けるだろう。
もう〈1組〉の相手を出来るクラスは居なくなってしまうだろうという判断である。帰ってくるまでに落とせなかった場合は山脈を大きく時計回りに迂回し、〈99組〉の拠点を狙おうとゼフィルスは考えていた。
〈45組〉の誤算は〈1組〉がこのタイミングで勝負をキメに来たことだろう。
〈45組〉は手を組んだ〈99組〉〈116組〉と協力し、このタイミングで〈24組〉を打ち破り7位に確定させる必要があった。スタークスは何をしでかすかわからないところがあったからだ。〈45組〉リーダーギンは今のうちに〈24組〉を退場させたいと考えていた。
このタイミングで軍すべてを動かした理由は〈24組〉〈15組〉〈58組〉が虫の息というところにある。まず〈15組〉と〈58組〉だが、これを打ち破ったのは十中八九〈1組〉だろう。だからこそ、他に奪われないうちに〈1組〉は〈15組〉〈58組〉への攻撃に専念するはずだ、とギンは考えた。
また〈1組〉は〈24組〉も14人を打ち破った。そのまま追撃戦で〈24組〉に攻めてくる可能性があった。しかし、これは低いと考える。遭遇戦と拠点攻めは難易度がまるで違う。遭遇した〈1組〉の数はそれほど多くなかったとクラスメイトから報告を受けたギンは、その〈1組〉がそのまま追撃戦を仕掛けてくる可能性は低いとみていた。普通なら一度撤退し態勢を立て直すだろうと。
だからこそ〈24組〉へは誰かが止めを刺しておかなければならず、三クラスの軍を動かした。このタイミングは〈1組〉が〈15組〉と〈58組〉の拠点攻めにかかりきりで動けないと考えたからだ。また、〈1組〉が万が一追撃戦を行ない、〈24組〉に攻めてきた場合にも備えて、この三クラスという大人数で〈1組〉を牽制する狙いもあった。
そうして〈24組〉を落とした後はすぐに〈45組〉拠点へと戻り防衛に専念する。
〈15組〉と〈58組〉の陥落具合を見て〈116組〉を落とし4位へ、次に〈99組〉を落として3位確定させて試合を終了させ、〈45組〉は2位の座を手に入れる作戦を考えていた。いや、もしかしたらポイントをまくって1位すらも狙えるかもしれないという夢のある作戦だった。
〈99組〉と〈116組〉は3位や4位をもらえるなら文句は無いとのことで話はまとまっていた。
リーダーギンの考えは、悪くない作戦のはずだった。
〈24組〉を攻略した直後に報告された、〈45組〉拠点が〈1組〉に襲われているという凶報を聞くまでは。
「ギン大変だ! 拠点が、俺たちの拠点が〈1組〉に襲われてる!」
「――な、なんだと!? そんなバカな!!」
その報告を聞いた直後に〈45組〉全員の足元に現れる転移陣。
それは退場を告げる転移陣。つまりは〈45組〉の拠点が落ちたことを意味する。
転移陣を信じられないという表情で見るギンが叫んだ。
「あ、ああ、あああああ!! 嘘だぁぁぁ―――――」
そしてその直後、リーダーギンを始め、〈45組〉のメンバーは消えてしまうのだった。
その結果。
まさかまさかの高位職クラスが最下位からガンガンランクインするという予想外すぎる展開に会場は更なる盛り上がりを見せることになる。教員方は学生たちが盛り上がりすぎてテンションがやばいところまで振り切れないか不安で仕方なかったのだった。
◇ ◇ ◇
「ふふ。ここが決め手ですね。ここは僕に任せてください」
「貴様にだけ良いかっこはさせねぇぜ! 俺も混ぜろよ」
「復活! 俺様も忘れてもらっては困るぜ!!」
クライマックスで大詰めの展開に〈天下一大星〉たちが無駄に気合を入れる。
そして〈45組〉の拠点へ3人が突撃する。
ここを攻めた理由だが、〈45組〉の防衛人数も少ないと判明したからだ。
なお、カルア調べ。
ならばこのチャンス。掴むしかない。
「ふふふ、一番槍はこの僕です!」
「いいやこの俺だ!」
「俺様を忘れてもらっては困るぜ!!」
ここで〈1組〉として活躍すれば大きなポイントになると、全力ダッシュだった。
名誉挽回のチャンスだもんな。ガンバレ。早くしないと俺たちが取っちゃうぞ。
「うおおぉぉぉ!! 防げ防げ! ここまで来たんだ! 絶対守りぬけ!」
「ふんぬおぉぉぉ!!」
「ぐああぁぁぁ!! リーダー、早く帰ってきてくれ!?」
居残りの〈45組〉も必死の抵抗を見せる。激戦区と呼ばれた第一ブロックでここまで残っていたのだからそれも当然、しかしその人数は9人と心もとなく、ジーロンたちに次々討ち取られていった。
あいつらほんと、真面目にしていればそこそこ強いんだが……。普段の行ないが全力で邪魔してるんだよな。
「防衛モンスターはこっちでやろう。さすがに時間が掛かりすぎる。『ライトニングバースト』!!」
「了解しました。 ――『ドライブ全開』! ――『戦槍乱舞』!」
「バッサリいくのデース! 『巨大手裏剣の術』デース!!」
「では、あっちの鳥型は私が斬ろう、――『飛鳥落とし』!」
「ん、――『デルタストリーム』!」
「支援回復なら任せてね! ――『プロテクバリア』! ――『ハイヒール』!」
―――オオオォォォォォ!?
3人は人を相手にするので手一杯なようだったので防衛モンスターはこちらで蹴散らした。〈58組〉はボスを用意していたのに〈45組〉は普通に〈銀箱〉級しか用意できなかったみたいで、なんかすぐに終わってしまったよ。
こっちが終わったところでジーロンたちがまだ終わっていないなら俺たちが拠点落としちゃおう。早くしないと軍が帰ってきてしまうからな。
「よし、俺たちは拠点攻撃だ! 全員、タイミングは合わせなくていいから全力で拠点を落とせ! ――『勇者の剣』!!」
「続きます。――『トリプルシュート』! 『閃光一閃突き』!」
「ん、手加減無し。――『64フォース』!」
俺、エステル、カルアの連続攻撃が拠点の壁を大きく揺らし、HPバーをガンガン削っていく。
「や、やめろぉぉぉぉ!! ――『アイシクルジャベリン』!」
「もう少しで勝ち抜ける所なんだ! ここまで来て落とされてたまるか!! 『ボールアックス』!」
「はいはい防御するよー『テラバリア』!」
「あ、敵が来たので私とリカとミサトはそっちを止めるデース! ――『暗闇の術』!」
「ゼフィルスたちの邪魔はさせん。――『二刀払い』! 『ツバメ返し』!」
「あぎゃあぁぁぁ!?」
防衛モンスターも軽く捻ったら慌てて、というより必死な形相で〈45組〉防衛担当たちがこっちに来た。
しかし、ミサト、パメラ、リカ相手に攻撃は簡単に防がれて反撃されてしまう。
その間に俺たちは拠点を攻撃していき、ついに拠点のHPはゼロとなる。
「あ、あああ! そんなぁぁぁ!?」
「もう少しだったのにぃぃぃ―――!?」
拠点のHPバーを呆然と見ていた〈45組〉が信じられないという顔をして退場していった。
結局ジーロンたちは必死に抵抗する〈45組〉学生たちに手間取っていたので、俺たちが拠点を落としてしまったな。軍が戻ってくる前に早期決着をしなければいけなかったためしょうがない。しょうがないんだ。
――700点ゲットだぜ!!
拠点を俺たち〈エデン〉組に取られたジーロンたちがハニワみたいな顔をしていたが問題ない。
〈45組〉陥落後は進路を〈116組〉へと変更する。場所はカルアが調べてくれていたので最短距離を突き進んだ。
到着したとき、〈116組〉の防衛担当たちは2人しかおらず、キョトンとした顔で俺たちを出迎えた。
まったく警戒していなかった、というより予想外でポカンとしていたというのが正しいか。
完全に油断している様子だった。
〈45組〉との温度差がすごい。
これどうしよう、逆に攻めちゃっても良いの? という雰囲気が流れる中、そこへ空気を読まない〈天下一大星〉が拠点へ突撃する。
「ふふふ、隙だらけ過ぎます!」
「俺たちは止められないぜ!」
「今度こそ拠点を落とすのだ! 俺様たちに道を空けろぉぉ!!」
「ひぇ! どうぞどうぞ!」
そしたら予想外な結果が、なぜか〈116組〉は戦闘を放棄してどうぞどうぞと拠点を受け渡したのだ。
え、なに? どういうこと?
「ふふふ、殊勝な心がけです」
「俺の筋肉にビビったのか? 当然だな」
「俺様の姿に恐れをなしたんだな。わかるぜぇ」
しかし〈天下一大星〉はまったく気にせず、むしろそれが当然という態度で拠点を攻撃し始める。
〈116組〉の学生を見ると、それを黙って見ているだけだ。本当にどういうこと?
俺たち〈エデン〉組は困惑が勝って攻撃できなかった。
オオオオォォォォォ――――!!
「何か、迫ってきてる」
カルアの声に山脈の影から様子をうかがうと。
〈45組〉の人たちが退場したことで急いで戻ってきたのだろう、〈99組〉と〈116組〉の軍がこっちへ全力で走ってきていた。
しかし遠い。スピードも遅い。圧倒的に間に合ってなかった。
「一応迎撃の準備を――」
「あ」
指示の途中、カルアの声に遮られる。
結局援軍は間に合わず〈116組〉も退場してしまったのだ。
〈1組〉は300点を手に入れ、
これにて準決勝進出の上位2クラスが決まったのだった。
◇ ◇ ◇
試合終了。
この瞬間会場は多いに盛り上がり、やはりテンションが上がりすぎて卒倒する者も現れたほどだった。教員たちは気が抜けずに走り回ることになった。
普通ならば時間切れの判定が多い〈拠点落とし〉のはずが、開始42分終了はあまりにも早すぎた。
それだけ濃い内容だったのだ。
しかも激戦区、第一ブロック1位は〈1組〉、これは分かるが、まさか2位に中位職の〈99組〉がランクインするとは、誰も予想できなかった。
まさか第一試合からの大熱狂ぶりに今年の〈クラス対抗戦〉は非常に見ごたえがあると噂が流れる。
それは本来なら最終日の決勝戦しか観戦に来ない大企業やお偉いさんも呼び込むことになる。
それはそれとして無事に勝抜いた〈1組〉、そして生き残った〈99組〉は準決勝戦へとコマを進めたのだった。
第一ブロック試合終了――〈残り時間:3時間17分21秒〉
〈1年1組〉『残り人数:26人』『ポイント:2303点』勝抜1位
〈1年99組〉『残り人数:25人』『ポイント:12点』勝抜2位
〈1年116組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落3位
〈1年45組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落4位
〈1年15組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落5位
〈1年58組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落6位
〈1年24組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落7位
〈1年2組〉『残り人数:―人』『ポイント:―点』脱落8位