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#057 レアボス宝箱開封! 最高の神アイテム現る!




 何故かボロボロになってしまったがなんとか〈エンペラーゴブリン〉を撃破することに成功した。


「ああ~、何これ。むっちゃ気持ちいいんだけどコレ」


 ボス部屋に横たわり、ダンジョンなのに夕日に染まっていく空を眺めながら、俺は全身に広がる充実感に酔っていた。


 〈エンペラーゴブリン〉との殴り合い。

 そして、あの『ゴブリン流・必殺破砕剣』を『ソニックソード』で回避したところからの流れ、ラストフィニッシュの『勇者の剣(ブレイブスラッシュ)』。


 何あれ。むっちゃ気持ちよかったんですけど。

 むちゃくちゃ楽しかったんですけど!(心の雄叫び)


 ゲーム時代の〈ダン活〉では出来なかったこと。感じられなかったことが多すぎて、頭の中で全然処理しきれない。

 もっとたっぷり味わいたい気分だ。


 この感情は感動だ。

 今、俺はすごく感動している。


 LVを上げて、強い装備を身につけて、モンスターを無双する。

 そんなゲーム的なものでなく、何かテクニックのような技術。

 ゲーム時代には無かった、リアルアクションでゲームしている感覚を、やっと今、俺は実感している。


 しかも、今回の戦闘。

 所謂、「神ってた」ってやつだ。

 もうあの最後の流れを思い出すだけで盛大に綻ぶ。

 いつの間にか手に持っていた〈野草の草原ダンジョン〉クリアの証、それも空に(かざ)してキラキラ光るバッジを眺めて愉悦に浸った。


「リアル〈ダン活〉が楽しすぎる件~」


「何やってるの、ゼフィルス君」


「んあ?」


 見上げるとハンナが首をかしげて見下ろしていた。いつの間にか傍にいたらしい。

 まったく気がつかなかった。それほど気分が浮かれまくっていたようだ。

 なお、見上げる形にはなったがハンナはロングスカートだったので見えてはいない。何がとは言わないが。


「ボス、倒したんだ。おめでとうゼフィルス君」


「ああ。ありがとうハンナ」


「でもボロボロ、だね。HPも半分しかないし」


 一時はレッドゾーンまで減ってたからな、HP。


 まったく、俺の高いVIT値に加え〈天空シリーズ〉を装備していてここまで削られるとか、レアボスマジ強ぇ。


「ボスがレアだったんだ。さすがに楽し……キツかったよ」


「レア!?」


 ハンナの驚いた声がボス部屋に響いた。


「レアボス、倒しちゃったの!?」


「まあな。さすがに一筋縄じゃいかなかったが、というか初めて苦戦らしい苦戦をしたわ」


 ハンナが詰め寄ってきたのでそれらしい引き締まった表情で重々しく頷く。

 しかし、また〈エンペラーゴブリン〉戦を思い出してニヤニヤと緩んでしまった。


「? でも、さすがゼフィルス君。レアボスってすっごく強いって聞くし、それを一人で倒しちゃうなんて」


 ハンナの羨望の眼差しが心地良い。

 さすがに寝たままじゃ格好がつかないので名残惜しいが起き上がった。


「確かレアボスってすごく強い代わりにとんでもないドロップを落とすんだよね?」


「おう、まさにアレの中にすんごいお宝が入っているはずだ」


 俺とハンナの見つめる先に、大きな金色の宝箱が2つ鎮座していた。

 レア物確定、〈金箱〉だ。


「じゃ、ハンナはいつも通りボスドロップを集めてくれ、その間に俺は宝箱開けてくるから」


「え!? それは無いよゼフィルス君、私も宝箱の開けるところ見たいよ」


「ハンナはちょっと目を離すとすぐ宝箱を開けたがるからな。今回ソロ攻略だったんだから2個とも開ける権利は、俺にある」


「そうだけどぉ。お願い、1個だけ開けさせて! 私まだ金箱開けたことないの、このままじゃ一生開ける機会なんてなくなっちゃう」


 両手の皺と皺を合わせて頼み込むハンナを見る。


 確かにハンナはそろそろ生産に専属させるべきだ。そもそも戦闘職でもないハンナが初級中位(ショッチュー)まで付いてきていること自体普通ではない。

 生産職はLV20で二段目のスキルが解放されたら普通生産専属になるものだ。


 しかし、生産専属になると確かに宝箱を開ける機会は少なくなる。〈金箱〉なんて一生関わりなく人生を終えたとしても不思議ではない。


 うーむ。そう考えるとちょっとかわいそうかもしれない、か?


「じゃあ1個だけな」


「うん。うん! ありがとうゼフィルス君! お礼に後でうんっと美味しいのごちそうしちゃうから、昨日たくさん作ってきたの!」


 そう言ってハンナは〈空間収納鞄(アイテムバッグ)(容量:大)〉をポンポンと叩く。


 なんだかんだ俺はハンナに甘いのかもしれない。(胃袋を掴まれているとも言う)

 まあ、今後〈金箱〉なんてたくさん開ける機会があるだろうしな。ちょっと開けさせるだけだ、ハンナにやらせてあげても良いだろう。

 でも俺も〈金箱〉開けるの楽しみなんだから毎回はダメだぞ? ダメだからな?(自信なし)


 〈金箱〉のうち一つの前に立ち、まずハンナに開けさせた。さて中身は何かな?


「ふわぁ。可愛い~、白猫のぬいぐるみだ~」


「マジで!?」


 そしてハンナの一言で度肝を抜かれた。

 ハンナが宝箱から取り出したそれを見て二度見する。


「ど、どうしたのゼフィルスくんそんな素っ頓狂な顔をして」


「どうしたもこうしたもあるか! それ〈幸猫様〉じゃねえか!」


「さちねこさま?」


 ハンナの腕に抱かれている、招き猫を100倍可愛くして女の子にバズりやすくデフォルメ調整されたぬいぐるみのそいつは、〈幸運を招く猫〉通称〈幸猫様(さちねこさま)〉と呼ばれる、俺たち〈ダン活〉プレイヤーにとって神様みたいな猫である。


 効力はただ一つ、〈『幸運』〉を与えるのみ。

 しかし、その効果は絶大。

 レアドロップ率が増えたりレアモンスターに出会いやすくなったりはもちろん。

 ドロップ量がたまに増えたり、採集量が増えたり、アイテムが壊れにくくなったりと、とにかく良いこと尽くめ。


 〈ダン活〉プレイヤーは敬意を持って〈幸猫様〉と(あが)(たてまつ)り、神棚に飾ってお供え物をするようになった。


 これを持っているか否かで攻略速度が段違いと言われる神アイテムである。


 確かに初級中位(ショッチュー)のレアボス以降にドロップするようになるが、レアボスが一発ツモなら〈幸猫様〉も一発ってか!? 

 やべ、宝くじで1等当てるより運使ってる気がする!


 あまりの幸運に今後が怖い。

 運を使い果たしてしまったのではないかと震えが来る。


「〈幸猫様〉どうか俺に幸運を!」


 咄嗟にハンナに抱かれたままの〈幸猫様〉の手を取った。

 〈幸猫様〉は深々と頷いた気がした。(※そんなことはない)




 さて、次は俺の番、金箱を開けるが、中から出てきたのは……。


「〈レアモンの笛(ボス用)〉だと……!」


 〈レアモンの笛(ボス用):レアボスを目覚めさせる笛。機嫌が悪いと襲い掛かってくる〉。

 元ネタが何かはさておき、救済場所(セーフティエリア)で吹くとボス部屋にレアボスが出る確率がアップする笛だ。

 

 これまた大当たりだ。

 俺には再戦を望んでいる〈エンペラーゴブリン〉の暑苦しいサインが見えた。

 おっし、またやり合おうじゃないか!


「ゼフィルス君、良いの当たった?」


「おうよ! これもすごい大当たりだ! まあ、5回吹けば壊れるという回数制限は付いているが、4回で止めて修理すればまた5回吹けるようになるし、半永続的に使えるレアボスをポップさせるアイテムなんてこれ以外存在しないんだ。マジで」


 100%レアボスをポップさせることも出来ないが、そういうアイテムは使い捨てが基本だ。レアボスを呼び覚ます系で5回も使用出来る〈レアモンの笛(ボス用)〉は一生物(いっしょうもの)の大当たりである。

 問題は、今は修理出来る人材がいないので使えないってところだな。


 今度C道で修理出来る人が居ないか探してみるか。





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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] なるほどカビゴ◯の笛…
[一言] なんだこの流れるようなご都合は?! もっとやれ!!
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