#511 練習終了。「優勝するぞ!」「「おー!!」」
「だいぶ形になってきたな! さすがに日数が足りなかったが、十分及第点だろう」
「そうね。日に日にみんな上手くなっているもの。それとあの四人が素直なのも大きいと思うわ」
俺が練習風景に一つ頷くと、隣にいたシエラが肩で息をする〈天下一大星〉の方を見ながらそう言った。
現在土曜日。
今日は学園が休みではあるが、クラスメイトで自主的に集まり一日がかりでクラス対抗戦の練習に時間を当てていた。おかげですでに夕方だ。
ここ数日、授業が終わった後の放課後はクラスメイトで集まって練習し、一日休みの土曜日もこうしてクラス対抗戦の練習をしていた。
本来なら来月行なわれるはずだったのであまり時間は無かったが、俺が見る限り普通に機能するレベルでクラスメイトたちの連携は良くなっている。
さすがに全てに対応する手段を作ることは出来なかったのだが、ポピュラーな戦法に対する対抗手段は教え込めたと思う。
基本は教え込めた。あと勝つためのやり方や作戦の共有も出来た。
一先ずは優勝を狙えるほどの戦力になっただろう。
「本当はもっと面白い戦術とかいっぱいあるんだけどな、時間が無いのが恨めしい」
「何言ってるのよ、十分よ。ゼフィルスは良くやってくれたわ。ここまで実力を底上げできる人なんてそうはいないわよ。それに、そういうのは私たちのギルドのために取っておいて」
「おお、そうか……、そうだな!」
シエラの言葉にうずうずした心を抑えていく。
うーん、一度教え始めるとカンストするまで教えたくなるのは俺の性だな。
ゲーム感覚が未だに抜けない。
学園の選択授業では結局講師の仕事をすることになったことも考えると、俺は自分で思っているより人に教えたがりの性分なんだろうな。シエラみたいなストッパーがいてくれなければ明日もクラス対抗戦の練習をしていたかもしれない。
「とりあえずここまでにしておくか。明日は俺たちで時間を使いたいし」
「そうよ。せっかく例のスキルが使えるようになったのに、ゼフィルスがお披露目するまでないしょだって言うから練習不足なの。せめて日曜日は練習に当てたいわ」
シエラの言う例のスキルとはもちろん上級スキル、四段階目ツリーのことだ。
俺がお披露目は来週の本番と言った事により、クラスでもまだないしょとなっている。もちろんシエラの小盾、エステルの戦車、ラナの玉座も出していない。
ラナは単純にパワーアップしただけなので練習もそこまでいらず、お披露目までうずうずしているだけだが、シエラやエステルは新しい装備を使いこなさなければならないためそれなりの練習が必要だった。
とはいえ、戦闘をこなせるだけの実力はあるので心配はしていないけどな。
俺は軽くシエラに謝っておいて、周りのクラスメイトたちに聞こえるよう拍手を二度打った。
とりあえず終了を宣言しようか。
「みんなお疲れ様! すごく良くなってるぞ。これなら優勝も狙えるだろう。俺が太鼓判を押す。練習はここまでにしよう。明日一日は十分に休養をとり、明後日からのクラス対抗戦に備えてくれ。何か質問がある人はいるか?」
大きな声を上げその辺で休憩しているクラスメイトたちに言うと、サターンたちが手を挙げた。
「ゼフィルス、いいか?」
「ふふ、僕たちは攻撃担当の練習しかしていませんが、防衛はいいのですか?」
「万が一にも大人数で攻められれば防衛ラインも突破されかねない」
「俺様たちも防御担当の練習をしたほうがいいのではないか?」
〈天下一大星〉が心配したのは防衛力だった。
時間が無い中、全ての作戦を覚えることは出来ないため、俺は攻撃担当、防御担当と担当を分けた。
両方を教える時間も無かったしな。
しかし、懸念は分かるが問題ない。
「安心しろ、とは言えないが防衛ラインの構築や相手の足止め、迎撃などは防御担当に任せておけ。その代わり拠点が大人数に襲撃されそうになったら攻撃担当にも遊撃要員として襲撃者を奇襲してもらう予定だ。その辺は攻撃副担当のセレスタンに任せている」
俺がそう答えると、いつの間にか隣にやって来たセレスタンが一礼する。
何も攻撃担当は拠点攻撃だけやらせるわけではない。こちらを攻めようとしている部隊を強襲するのも攻撃部隊の役目だと伝える。
そのための作戦はセレスタンに伝えてあるので、俺が防御担当の応援に行っていて不在だったときでもこなしてくれるだろう。
「だから攻撃役は任せたぞ〈天下一大星〉」
「!! 任されたぞゼフィルス!」
「ふふ。あなたにそこまで言われる日が来るとは、これは気合いが入りますね」
「俺たちに任せろ! 防御担当が活躍する分は残らないと思いな!」
「俺様を忘れてもらっては困るな。攻撃役と防御役、完璧にこなして見せるぜ」
発破をかけると〈天下一大星〉の士気が上がる。
「大したものね」
「こんなんで勝率が上がるんなら、やるかやらないかと言われればやるだろ?」
シエラからの感心の言葉を俺は頷きながら受け止める。
褒めてもらえてちょっと嬉しい。
あいつらも俺が途中まで育てたんだ。それなりの実力は持っている。
指揮する人間が優秀なら、ひょっとするとかなりの戦果が期待できるかもしれないぞ?
その後、他のクラスメイトたちからの質問などにも答えていき、時に士気を上げながら準備を完了し、俺たちは明後日からのクラス対抗戦で優勝することを誓い合って解散した。
「クラス対抗戦で優勝するぞ!」
「「「「おー!!」」」」
「では、解散!」
さて、明日は練習のついでに中級上位ダンジョンの攻略を進めるぜ!




