#498 上級職ランクアップ! ハンナ編!
前書き失礼いたします!
明けましておめでとうございます!
どうか今年も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!
「次はハンナだ。いいか?」
「――うん! なんだかどきどきするね」
片手を胸の位置に置いたハンナが高揚した顔で告げてくる。
さっきからみんなの〈上級転職〉をしっかり見ていたからな。
あんな演出されて自分の番が来たら期待で胸がいっぱいになるだろう。
俺も期待で胸いっぱいです。
そして安心しろハンナ、とうとうハンナも高位職の仲間入りだ!
「ハンナの上級職だが、【錬金術師】の正規生産特化ルートは三つある。低位職の【一人前錬金術師】、中位職の【マスターアルケミスト】、そして高位職、最高の錬金術師とされる【アルケミーマイスター】だ。俺はハンナにこの【アルケミーマイスター】に就いてほしいと考えている」
「【アルケミーマイスター】!」
俺の言葉にハンナが飛び上がるほど驚きの声を上げる。
しかし、
「……ゼフィルス君【アルケミーマイスター】って何?」
「知らんのかーい!」
「はうっ」
ハンナは【アルケミーマイスター】を知らなかったようだ。
思わず手の甲でツッコミを入れてしまったぞ! ちなみに命中したのはハンナの肩だ。もうちょっとハンナの身長が高かったら危ないところにヒットしていたかも知れない。
危なかった。衝動でツッコミを入れるものじゃないな。ハンナが小さくて良かった。
「いや、そうか。生産職ってほとんど〈上級転職〉しないんだっけか。だから知名度が低いんだな」
「え? うん。多分? そもそも【錬金術師】系の上級職って【闇の魔女】しか聞いたことないし」
「【闇の魔女】は知ってんのか……」
「物語によく出てくる有名な職業だからね」
なんというか、アイギスの【竜騎姫】の時もそうだったが、そういう物語なんかに登場する有名処の知識はあるが、他は知らないのがこの世界の普通のようだ。
ちなみに【闇の魔女】とは【闇錬金術師】の上級ルートの高位職だ。闇系の魔法も使う事ができるようになるロマンに溢れた職業だ。
なんで魔女が錬金釜をかき混ぜている光景ってあんなにときめくのだろうか? 不思議とロマンがいっぱいだぜ。
どうも【闇の魔女】になるとダンジョンを攻略できるようになるせいか、物語に組み込まれていることも少なくないらしい、とのことだった。
ちなみに余談だが、もう一つ【錬金術師】には派生ルートがある。しかし、こちらは何をトチ狂ったのか完全に生産職を捨て、戦闘職になってしまうルートとなっている。
名称――【武装錬金】。
こちらは物理系だな。
今まで生産職で育ててきたのにいきなり戦闘職に転向である。もう意味が分からない。しかもそれなりに強いのが余計に意味が分からない。
まあ本来こちらは【バトルアルケミー】から〈上級転職〉するのが正規ルートだから、【錬金術師】から行く人は居ないと思うが。
こちらは最初から除外だ。
生産特化で育てるならやはり【アルケミーマイスター】だろう。
まあ、それは今は置いておく。
「【アルケミーマイスター】は【錬金術師】系の最高峰だ。かなり広範囲のアイテムが作れるほか、レシピがあれば装備も、インテリアも、果てはモンスターまで作り出せてしまう最高の生産職だぜ」
「ええっ? モンスターまで作れるの!?」
「ああ、と言っても【闇の魔女】とは違って作れるモンスターはゴーレム系かスライム系に限られるけどな」
【闇の魔女】は本当に闇の獣とか作っちゃうからなぁ。黒猫とか、人形とか、ホムンクルスなんかも。
【アルケミーマイスター】は残念ながらゴーレム系かスライム系しか作製できないが、その代わりカスタム可能なゴーレムを作製することができる夢の職業でもあるんだ。
ロボっぽく仕上げることもできるぞ。素晴らしい。
そっちもすごいが、本命は大量生産による上級消費アイテムと超素材の量産だな。
【アルケミーマイスター】は素材と素材を組み合わせて超強力素材を作製することが可能になる。
これは生産の基本となっており、超素材を使って作製された装備やアイテムは非常に強力となり、上級ダンジョン、さらにその上の最上級ダンジョンで大きな助けとなるんだ。ゲームでは必ず【アルケミーマイスター】をギルドメンバーに入れていた理由だな。
是非、ハンナには【アルケミーマイスター】に就いてほしいところだ。
俺は【アルケミーマイスター】という職業で何ができるかを説明し、ハンナに超オススメする。
「――というわけなんだがどうだろうか!?」
「うん。ゼフィルス君が言うのなら間違いないしね。それに、実は私だけ高位職に就けないんじゃないかって、少し不安だったの。だから私、【アルケミーマイスター】に就くよ!」
「よく言ってくれたハンナ! 俺はハンナを信じてた!」
ハンナの信頼が嬉しい!
俺は思わずハンナを抱きしめようとして、ハッと我に還ってハンナの頭をポムポムした。
危なかった。
「え、えへへ~」
はにかむハンナを見て俺も嬉しくなる。
よっしゃ!
面白楽しくなってきたぜ!
ポムポムがだんだんナデナデになってくると、ハンナがテレテレしだした。
可愛くて最強とか最高かよ。
俺の感性にビビッとくる。
なんだか一生ナデナデしたいたい気持ちにさせられていると、ジッとこちらを見つめる複数の視線を思い出した。
「……(ジー)……」
「な、何かなラナ、シエラ?」
「別に……、私にもしてほしいなんて、思ってないんだから」
「……私も、別になんでもないわよ?」
「そ、そうか?」
それにしては何か言いたげな視線なのだが……。
あとで撫でてあげればいいのだろうか?
とりあえず、ハンナとのスキンシップはここまでにして、〈上級転職〉を進めてしまうとするか。
「じゃ、ハンナ、やるか!」
「うん! ゼフィルス君、お願いね」
「おうよ。高位職【アルケミーマイスター】の発現条件は簡単だ。何しろ高の下だしな。すでに【錬金術師】のレベルカンストと、スキル『錬金LV10』『調合LV10』『大量生産LV10』の条件は満たしているんだし、後はこの〈信じる心〉を使えば発現条件はクリアできるだろう」
俺はそう言って高の下に必要な〈心〉系アイテムの1つ、〈信じる心〉を取り出した。
見た目はガラスのハート。
〈心〉系アイテムは全てハートの形をしていて大きさも同じ規格だ、だが材質だけが違う。
この〈信じる心〉はガラス製だ。信じる心はちょっとのことで儚く割れてしまう、ということなのだろうか? 深いぜ……。
それは置いといてハンナに〈信じる心〉を手渡した。
女子にハートをプレゼントする男子。
端から見たらどんなことを思われるのか、ちょっと視線が気になります。
「あ、ありがとうゼフィルス君」
なんだかハンナも意識しまくりでハートを見つめてる、手を添えて受け取った姿勢のまま固まっていた。
「ハンナ?」
「ひゃ、ひゃい!」
「大丈夫か?」
「はう。うん、大丈夫大丈夫! すぐに使うね!」
何を考えていたのか、顔を赤くして早口でそう言ったハンナがすぐに〈信じる心〉を使った。
この演出は〈宝玉〉の時と同じで、〈信じる心〉が消えて出た粒子がハンナの体に吸い込まれるようにして消えていく。この演出が同じだからこそ、〈心〉〈結晶〉〈宝玉〉系アイテムは同じカテゴリーのアイテムだと認識されているわけだ。
「あ、後は〈竜の像〉に手を乗せて、〈上級転職〉すればいいんだよね!?」
「おう、慌てるなハンナ。まだ〈上級転職チケット〉を受け取っていないだろ」
「う、うんっ! そうだった!」
なんだか途中ハンナのテンションがおかしかったが、なんとかハンナは〈上級転職〉をやり遂げ、無事に【アルケミーマイスター】の職業に就けたのだった。
ちなみに〈姫職〉の時のような演出は、残念ながらない。
アレは〈特殊条件〉がキーだからな。仕方ない。
「ふわぁ。本当に上級職だ……、私、上級職になったんだ……」
「だな。ハンナ、――上級職への〈上級転職〉、おめでとう」
「――うん! ゼフィルス君ありがとう! まだちょっと実感無いけれど、これからも頑張るね!」




