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#485 妖怪を撃破したあとに残る物。




 ついに『妖怪・後一個足りない』は退治された。

 アイギス、とってもナイスだぜ!


 となればだ、次やることは決まっている。

 ゲットした〈上級転職チケット〉の使用についての検討―――では無く、


 ―――妖怪は退治された。なら周回の続きだぜ。




「ええっと……。また〈上級転職チケット〉がドロップしたのだけど……」


「おお! やったじゃないか! これで3枚目だ!」


 戸惑いの声を出すシエラに俺はテンション高く手を挙げる。ハイタッチだ!

 思わずといった調子で掌を向けるシエラにパチンとハイタッチ。

 ん~、いいね!


 現在夕方。

 朝からずっと〈ダイ王〉を周回していたが、1枚目の〈上級転職チケット〉がドロップしてから調子が変わった。

 ここ2ヶ月まったくと言っていいほど出なかった〈上級転職チケット〉がドロップし始めたのである。

 本日3枚目、〈エデン〉が所有する3枚と合わせれば計6枚だ。

 素晴らしい。


 世の中には〈妖怪反動現象〉と呼ばれている現象が存在する。


〈妖怪・後一個足りない〉のせいでずっと後一個足りなかった。だけどその一個がやっと手に入った、と思ったらなんかいっぱい当たり始めた。という意味不明の現象。「後一個手に入れば良かったんだよ、なんで三個もくるんだよ!?」とプレイヤーは泣き叫ぶ。


〈妖怪・欲しくないの来る〉。同確率で得られるアイテムで、同じドロップテーブルにあるのに欲しくないものを何度でも引いてしまう現象。

 ずっと必要なかったのに当たりまくる。だが、あるとき必要になった、その瞬間からなぜか当たらなくなる。「なんでだよ!? 昨日まで無駄に当たってたじゃないか!?」とプレイヤーは泣き叫ぶ。


 このように、まるで妖怪がせき止めていたように、妖怪退治が成功するとドカンと反動が押し寄せる現象だ。

 これで泣きを見たプレイヤーは多い。


 しかし、今回はこれが良いように働いたな。

 今までせき止められていた妖怪のイタズラが解消されたこともあり、ようやく〈上級転職チケット〉のドロップがじゃんじゃん出始めたのだ。


「おかしいね、みんなニッコニッコにならないようなのだが、勇者君?」


「みんな驚きの方が勝っちゃったようだな」


 ニーコがジト目で俺を見上げてくる。

 うんうん。分かる、分かるぞ。妖怪退治すると今までのドロップ率が変動してビックリするんだよな。


「な~にを考えてるか分からないけど、きっと違うと、ぼくは思うよ」


 ニーコが何か言っているが聞こえないフリをする。


 結局その日は3枚の〈上級転職チケット〉が手に入った。

 朝の段階で〈上級転職チケット〉がもう手に入らないのではないか、と焦っていたシエラとメルトはとても、とても複雑な表情をしていた。表情が硬いと言ってもいいかもしれない。


 メルトが重い口を開くように代表して俺に問う。


「ゼフィルスよ。こうなることを知っていたのか?」


「いいや。だが1枚手に入れば後はどうとでもなるとは思っていたな」


 妖怪ってそんなもんなのだよ。

 欲しい欲しいと思っていたら出ない。でもゲットした瞬間からなぜか仲間になりたがる。

 最初の1枚を、もしくは最後の1枚をゲットした瞬間からなぜか集まり始めるんだ。

 そういうものだと思ってほしい。


 そう説明してみる。


「理解出来んな」


「頭が痛いわね」


 おお、〈エデン〉の頭脳2人が頭を抱えているぞ。珍しい光景だ。


「まあ、妖怪との付き合い方は難しい。でも覚えておくといいぞ。対妖怪の処世術だ」


「そんな処世術を唱えるのはゼフィルスだけよ」


「冗談、と言ってほしいんだが……」


 冗談じゃないんだよな本当。ゲームには妖怪が住んでいるのだ。


 と、そんな一幕もあったが、こんな感じで本日の〈上級転職チケット〉集めは終わったのだった。



 そして夜。〈上級転職チケット〉の使用を決める話し合いが行なわれた。

 夕食後、いつも夜はギルドでの活動が無いのだが、さすがに〈上級転職チケット〉の使用となると話が変わる。


 明日からは夏休みも終わり、通常授業が始まる事もあって全員が集まれるか分からない。

 そのため今日中にこの〈上級転職チケット〉の使い道を決めようということになったのだった。


「じゃ、夜も遅くなると心配だし、ちゃちゃっと決めようか」


「そんな適当に決められると困るのだけど?」


「大丈夫だってシエラ、ちゃんと考えて来たから。後は発表するだけだ」


 俺はそう言って、ギルド部屋に集まり、長テーブルの席に着くメンバーたちに向きなおる。

 現在〈エデン〉メンバー18人とセレスタン、ニーコを加えた20人が集まっていた。

〈アークアルカディア〉と〈助っ人〉は後で通達する予定だな。


「さて、こんな時間に急遽集まってもらって助かる。〈上級転職チケット〉の使い道について連絡したい」


 みんな俺の宣言に真剣な表情で頷いている。


 上級職。

 それは全ての人の憧れで有り、切望で有り、渇望していると言っても過言では無い。

 そんな雲に近き頂だ。


〈上級転職チケット〉の使い道は上級職への転職だが、みんなが上級職になりたいがためにトラブルが起こる事もしばしばだ。

 他のギルドでは、話し合いで決着が付かず、ギルドが解散に追い込まれるような事態になった所もあるらしい。


 しかし、〈エデン〉ではそんな心配は無い。

 何しろ、今後も〈上級転職チケット〉は手に入るからだ。

 その証明も、今日できたしな。


「今日、俺たち〈上級転職チケット〉回収チームが無事3枚の〈上級転職チケット〉を手に入れた。これで〈エデン〉が所有する〈上級転職チケット〉は6枚。よって6人のLVカンスト者から上級職に〈上級転職(ランクアップ)〉して貰うこととする。また、今後はこのようにたくさんの〈上級転職チケット〉が手に入る予定だ。たとえ今日選ばれなかったとしても時期が来れば上級職に〈上級転職(ランクアップ)〉することができるので待っていて欲しい。順番に引き上げて行く予定だ」


 俺の言葉にメンバー全体がざわめく。

〈上級転職チケット〉の3枚ゲット、これはもの凄く大きいインパクトだ。

 うん、やはりニーコの育成ができるまで〈上級転職(ランクアップ)〉を待っていてもらって良かった。

 たくさんの〈上級転職チケット〉が手に入り、今後も上級職になれる可能性が高いと分かればトラブルも起こりにくい。


 すでに〈エデン〉では〈上級転職チケット〉は貴重なものではない。

 今後も定期的に手に入る上級職へのただの切符だ。


 まだみんな半信半疑かも知れないが、とりあえずみんなにはそう認識して貰えたようだ。



 俺は今後の展望を話していく。


「〈エデン〉が目指すのはSランクへの到達だが、俺はさらに上級ダンジョンの攻略も視野に入れている」


 俺の言葉にまた少しざわめく。

 上級ダンジョンの攻略。発表したのは今回が初めてだが、みんな予想は出来ていたようだ。


「上級ダンジョンの攻略には上級職が必要不可欠だ。故に、まずこの6枚は上級ダンジョンの攻略メンバーに渡したいと思う」


「いいわ。〈エデン〉全体の実力の向上にもなるし、目標にも大きく近づけると思う。私は賛成するわ」


「上級ダンジョンね。ふふ、いいわね。お父様とお兄様の鼻を明かしてやろうじゃない!」


 シエラが俺の宣言を肯定し、ラナがいい笑顔で何か呟いている。

 別に根回しをした訳では無かったが、2人の言葉に肯定的な雰囲気が流れた。


 しかし、そこに手を挙げる者がいた。メルトだ。


「ゼフィルスに一つ聞きたい。上級ダンジョンの攻略、本当に出来るのか?」


 なるほど、その疑問はもっともだろう。再びメンバー全員の注目が俺へと注がれた。

 それに対し、俺は真っ向から、自信満々に頷き、短く答えた。


「もちろんだ」


「ふ、そうか。なら俺からは言うことは無い。上級ダンジョンの攻略、楽しみにしている」


 メルトのその言葉を最後に他に意見は無く、

 続いて上級職へ〈上級転職(ランクアップ)〉するメンバーを告げる番となる。




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