#429 テストの結果発表! 夏休みの方針を話そう!
日が明けて月曜日。
今日はテスト上位300位と赤点者が発表される日だ。
ドッキドキだな!
俺はいつも通り慌てることも無く、ハンナと朝食してから堂々と学園へ向かう。
んん~、肩が風を切る感触が心地いい。今日も良いことありそうだ。
途中でハンナと別れ、校舎に入ると、まず目に入るのが特大掲示板だ。
ここには学園からの連絡、何かしらのインフォメーションを初め、クエストやギルド、パーティの募集なんかが紙で掲示される場所だ。
まあ、普段はあまり人が集まる場所とは言いがたいな。〈学生手帳〉でも見れるし。
しかし、今日ばかりは話が変わる。
俺が来た時には多くの人だかりが出来ていた。
というか多すぎない?
まったく掲示板のけの字も見えないんだけど。
そういえばこの校舎、4000人近く学生が通っているんだった。
マジで掲示板が見えない。
人多過ぎ!
どうしようか。
そんなとき、俺に近づいてきた者がいた。
〈エデン〉が誇る頼れる執事のセレスタンだ。
「ゼフィルス様、おはようございます」
「おおセレスタン。おはよう」
「もしよろしければこちら、テストの順位表を控えておきました」
セレスタンが挨拶と一緒に自然な動作でペーパーを取り出す。
「セレスタンはいつも優秀だな!?」
「お褒めにあずかり光栄です」
そのペーパーは目の前の学生に隠されて見えない俺の求めるテスト順位表だった。
いつ控えたというのだろう。不思議なことばかりだ。
俺が求めているものを的確に読み、そして適切なタイミングで提供する。
セレスタンの執事力が半端ない件。
俺は礼を言ってペーパーを受け取って目を通した。
まずはランキング上位から。まずトップに書いてあったのは、
第1位・ゼフィルス 点数900点
ふふふ、ふははははは!!
片腹痛い、片腹痛いぞ!!
〈ダン活〉のデータベースと言われた俺にこの程度は朝飯前である。
ふははははは!!
俺にとっては一般教養部門の、国語、数学、歴史、でさえ余裕の余裕だ。
特に国語と歴史とか〈ダン活〉の設定資料集みたいなものだ。
むしろむしゃぶりつく勢いで歴史とか熟読しまくっている。
2年生や3年生で出される歴史問題を出されても満点を取る自信があるぜ!
数学はそもそも学園のレベルがかなり低い、小学校レベルだ。それ数学?
まあ、ハンナのように学校に行っていなかった村人なんかもいるのだ、そんなものだろう。
もしくはスキルが優秀過ぎて、これ以上数学を義務教育で学ぶ必要性が無いのかもしれない。
小学生レベルとか間違える方が恥ずかしい。一度授業でおさらいしているので、余裕だった。
後は全て〈ダン活〉の専門分野だ。俺に不可能は無い。むしろやりすぎないように注意したまである。俺に〈ダン活〉を語らせると、長いよ?
2日あった実技も両方満点だ。これは余裕だった。
むしろモンスターの行動パターンから道順まで全て網羅している俺である。
ボス戦はごり押しだと減点されるのでしっかり〈バトルウルフ〉の行動を封じてやったさ。まあいつもの作戦を決行しただけだけどな。
素材採取は1番で終わらせた。
誰が見ても文句が出ない形で終わらせたからな。満点は当然だ。
故に900点満点。
堂々の1位である。
ふははははは!!
「満点、おめでとうございますゼフィルス様」
「おう。セレスタンありがとよ。でもセレスタンも2位じゃないか。おめでとう」
見れば第2位はセレスタン、894点だった。
さすがはセレスタンである。
とそこで気がついた。
さっきから掲示板に向かっていた人波がこちらに向いているのを。
「おい、あれって」
「ああ1位のゼフィルスさんと2位のセレスタンさんだ」
「ツートップイケメン! はぁ、尊いわ」
「おいおい、勇者って職業だけじゃなく頭も良いのかよ」
「もしかして勇者の発現条件って学園トップレベルの頭の良さとか?」
「あ、あり得る。何しろあの爆弾の数々だ。勇者は頭が良いのは必然なのか……」
「く、なんだ満点って! テストで満点って都市伝説じゃなかったのかよ!」
「安いな都市伝説。いや、現実的に考えると結構高いのか? よく分からなくなってきた」
「俺、赤点に名前があった」
「俺、勉強頑張ったのに300位内に名前が無い」
「これが地頭の違い、だというのか」
「いや、単純に勉強不足じゃないか? 〈エデン〉はテスト期間中毎日勉強会をしていたと、とある掲示板で囁かれていたぞ」
「補習……、我は……」
なんだか騒がしくなってきた。
みんな1位の俺に注目している。
参っちゃうな。
あと発現条件に勉強が優秀とあったら【勇者】じゃなくて【賢者】になるぞ。勇者は勇気を持って人の命を助ける者だ。内緒だけどな。
しかし、俺はそんなことをおくびにも出さずクールにセレスタンと共に教室に向かった。
おお、なんか学生たちが道を左右に分かれて譲り始めた。
これが第1位の効力なのだろうか?
ふはははは!
ちなみに300位に入れた〈エデン〉〈アークアルカディア〉のメンバーは以下の通りだ。
第1位・ゼフィルス 点数900点
第2位・セレスタン 点数894点
第3位・シエラ 点数890点
第5位・レグラム 点数885点
第6位・メルト 点数884点
第9位・ヘカテリーナ 点数870点
第15位・ミサト 点数862点
第16位・ケイシェリア 点数860点
第40位・ラナ 点数840点
第50位・シズ 点数831点
第120位・エステル 点数815点
第233位・ラクリッテ 点数786点
第289位・ノエル 点数754点
みんな凄い頑張ったな。
このテストは〈戦闘課〉部門なので〈生産専攻〉や〈支援課〉などの子たちは後でまた見せて貰うことになるが、とりあえずランキング該当者はお祝いのチャットを送っておく。
また赤点者は無しだそうだ。よかった~。テスト勉強を頑張った甲斐があったぜ。
クラスの男子たちが燃え尽きて真っ白になっているが気にしない。
放課後、〈エデン〉〈アークアルカディア〉のメンバーたち一同はDランクギルド部屋に集まって居た。
テストも終わったので次は来週に迫った夏休みの話を進める。
マジで赤点者が居なくてよかったぜ。
カルアとルルが心配だったが、カルアは誰かしらがマンツーマンで昼夜を問わず教えて、なんとか赤点を回避させた。赤点取ったらカレー抜きという言葉が効いたようだ。
ルルはシェリアがずっとマンツーマンで教えていたのでむしろ手応えがかなりあったらしい。忘れてたが、シェリアは知識豊富なエルフだからな。
また、テストでポカしたのがパメラだ。それまで順調だったのに、最終日は素材の名前を読み間違えて延々と違うモンスターを狩っていたらしい。ギリで突破できたようでマジよかったぜ。
いつものように〈幸猫様〉の前までシエラと一緒に出てメンバーに通達する。
「みんな、改めてテストお疲れ様。みんなが頑張ったおかげで〈エデン〉〈アークアルカディア〉共に赤点者はゼロだそうだ。これで夏休みも思う存分ダンジョンに行けるな」
「夏休みで帰省をする人も多いと思うわ。残る人もいるでしょう。みんな、大まかでいいので後で夏休みのスケジュールをくれるかしら。それを元に〈エデン〉〈アークアルカディア〉のダンジョン攻略のスケジュールを組むわ」
今週はテストの返却期間だ。これが終われば土曜日からは夏休みである。
ゲーム〈ダン活〉時代は帰省なんてものは存在しなかったが、リアルでは結構帰省者が多いらしい。
その辺のスケジュール調整はシエラに任せてある。
メンバー、サブメンバーは、ギルドで活動できる日をシエラに報告してもらい、それを元にダンジョン攻略のシフトを組むのだ。
夏休みのバイトを思わせるな。
「私は帰らないわ!」
「なりませんよ?」
ラナとシズが激しい(?)攻防をしていた。
いや、ラナは帰省の準備とか進めていたはずだ。多分、強制的に帰らされると思う。
「まあ、待て待て。まだ大事な話が残ってるんだ」
「ん? 何よ大事な話って。も、もしかしてゼフィルスは付いてくる気なの? それなら帰っても……」
「いや、俺は学園に残るが」
なんかラナが急にもじもじし出したので残ることを告げると、雷にでも打たれたかのようにガーンとして、その後、ちょっと涙目で睨んでくる。その表情が少し可愛い。
とりあえず話を進める。一度咳払いして、空気をリセットした。
「こほん。聞いて欲しい。〈エデン〉はDランクになった。Dランクになったギルドはするべき事も多い。今後の方針を決めようと思う」
俺の真剣な表情にギルドメンバーたちの空気も真剣味を帯びる。
この話はギルドの今後の話。
夏休みで帰省すると、メンバーへの連絡もろくにできなくなる。
今週中にDランクギルドになった〈エデン〉の、ギルドとしての活動方針を決めなければならない。
夏休み中、帰省組がいてメンバーが欠けた状態になると予想されるが、〈上級転職チケット〉は使用するのか? 中級上位ダンジョンは攻略するのか?
上級職に経験値が入るようになるのは、中級上位ダンジョンからだ。そのため今まで使うのをスルーしていた面もあるのだが、中級上位ダンジョンを攻略するとなると話は変わる。
しかし、ラナをはじめとする帰省メンバーを置いて先に行っても良いものなのか、話し合いが必要だな。
あと、夏休み明けには〈ランク戦〉に参加することも考える必要がある。
夏休みはメンバー全体の底上げをしてカンスト者を増やすことに注力してもいい。
Cランク戦は〈15人戦〉が必要なんだ。
どちらでも構わない。
あと〈エデン〉の資産もかなり膨れ上がっているので、前にセレスタンたちと約束していた経理の人も雇い入れたい。メンバーが10人も増えたからな。
せっかくセレスタンがサポートに回ってくれたのに、一気にメンバーを増やしたのはマズかった。ちょっと手が追いつかなくなっている模様だ。
それと中級上位ダンジョンの攻略のため、装備の更新も進めなければならないだろう。
やることは山ほどある。
しかし、その中でも〈エデン〉〈アークアルカディア〉間でもっとも重要なことがある。
それが、
「Dランクギルドの上限人数は20名。枠は5席ある。〈アークアルカディア〉の諸君、随分待たせた。〈エデン〉への昇格試験を始めよう」
下部組織から〈エデン〉への昇格試験である。