#424 楽しかった土日は終わり、試験期間が始まる!
〈パーフェクトビューティフォー現象〉はやっぱりパーフェクト。
ラナが主武器である〈タリスマン〉を、シエラも主武器の〈大盾〉をそれぞれ当てた。
ダークに染まった〈バトルウルフ(第四形態)〉だが、それからドロップする系は白、光、聖など浄化された物が多い。撃破イコール浄化という方式らしい。
もちろん黒、闇、邪悪などの物もドロップするのだが、こちらは確率的に出にくい傾向だ。
その後、エステル、そしてパメラが開けることになり、
エステルは料理生産能力に非常に大きな恩恵を与える装備〈コック帽子〉と〈純白エプロン〉の2点を。
パメラが鍛冶生産能力に非常に大きな恩恵を与える装備〈魔鋼のトンカチ〉と〈熱気の鉢巻き〉の2点を当てていた。
両方とも一つの宝箱に2点が入っていた形だ。
宝箱はたまに2点以上のアイテムが入っていることがある。
その場合、性能的には一段階落ちてしまうのだが、複数の装備が手に入るため、それなりに当たりと言われていた。
今回の例では、これはレアボス〈金箱〉産ではなく、普通の〈金箱〉産クラスになる。普通の〈金箱〉産が2点入っている宝箱だな。かなり当たりだぞ?
また、後半の宝箱の中身は生産系の能力上昇系装備だな。こちらも中級中位〈金箱〉産にふさわしい高い能力を持っている。
料理生産装備は……、今は使い道が無いのでどうするか後でみんなで相談しよう。
売ってしまってもいい。料理専門ギルド〈味とバフの深みを求めて〉には世話になってるからな。多分この装備、喉から手が出るほど欲しいに違いないし。
鍛冶生産装備はアルル行きだな。
アルルはまだまだレベルを上げ始めたばかりなので成長には時間が掛かると思っていたが、高ランクの設備や素材を使えばそれだけ早くレベルが上がる。きっと喜んでくれるだろう。
〈パーフェクトビューティフォー現象〉のドロップはそんなところだ。
く、なかなか良いパーフェクトだった。
ビンタ20回は堅いか? いや30回はいけるかもしれない。
前回の〈竜の箱庭〉という超激レアよりは少し劣るが、それでもビンタをもらうくらいには当たりだったな。
俺たちAチームも負けては居られない。
「俺たちも〈パーフェクトビューティフォー現象〉を取るぞ!」
「おおーなのです!」
「ヤー!」
「ルルがやるなら私も頑張ります」
「気合いを入れよう」
上から俺、ルル、カルア、シェリア、リカの順に気合の声を上げる。
Bチームに触発されたのかAチームも気合い十分。
再びレアボス周回に挑んだのだった。
結局夕方までにAチームはレアボスを計9回、Bチームも9回狩ったが残念ながら〈パーフェクトビューティフォー現象〉は来なかった。
「無念だ」
「残念なのです」
「ん。元気出す。また来る」
「よし、また来よう!」
「おおー!」
ルルと一緒にしょんぼりして、カルアに慰めてもらい復活。
そうだな。また来れば良いのだ!
〈パーフェクトビューティフォー現象〉が来るまで狩りまくってやるのだ!
視界の端で何やら怯えた黒い狼が見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
すでに夕方で時間も遅かったので〈笛〉の回数を使い切って帰還。
思ったより遅くなってしまったので今から〈ゴールデントプル〉を狩りに行くのは無理だった。くっ残念!
その後〈バトルウルフ(第四形態)〉の素材を手土産にマリー先輩に嬉しい悲鳴を上げさせて、爆師ギルドに行きレンカ先輩に〈笛〉の回復を依頼してその日は終わったのだった。
◇ ◇ ◇
明けて月曜日。7月1日。
今日から試験期間だ。
朝、教室に入った途端何やらピリつく気配を感じ取る。
テスト期間特有のあの空気だ。
「おい、ゼフィルス」
「ん? どうしたサターン」
席に着くとサターンが話しかけてきた。
何やら深刻そうな顔をしている。
その声にはいつもの覇気がなかった。
「もうすぐ……、期末テストなんだ……」
「そうだな。テストだな」
楽しみだ。全部制覇してやんよ!
〈ダン活〉のデータベースと呼ばれた俺に〈ダン活〉でテストとは片腹痛し。
俺の気分はウハウハだった。しかし、
「このままだと……我は……」
目の前のサターンは絶望の表情だ。
そこで言葉を止めたサターン、なかなか踏ん切りが付かないのか言葉が続かない様子だ。
「ぜ、ゼフィルスに頼みがあ――」
「はーい、みんな席についてねー。ホームルーム始めるわよ」
やっと口を開いたと思ったところでタイムアップ。
フィリス先生とラダベナ先生がやってきたので私語はここまでだ。
サターンは肩を落としながら自分の席に戻っていった。
何の話だったんだろうか?
「みなさん、今日から試験期間ですよ。ダンジョンはこの期間は閉鎖しますのでしっかりテスト勉強しましょうね。学生の本分は勉強です。ダンジョンばかりにかまけて勉強をおろそかにしてはいけませんよ?」
「分かっているとは思うけど、赤点を取ったら補習だよ。夏期休暇は帰省と補習に費やされると思いな。これ以上ダンジョンに行く時間が削られるのが嫌ならしっかり勉強するんだよ」
フィリス先生が優しく諭すが、それだけでは甘いと思ったのだろう。ラダベナ先生がペナルティを語って学生を鼓舞する。
サターンを筆頭に男子たちが青い顔をしていたのが印象的だった。
もし補習なんて食らった日には来年のクラス替えに響くことは確実。
例の4月のような毎日がダンジョン週間だった輝く長期休暇が、一気に絶望の夏休みに早変わりしてしまうのだ。
たった1ヶ月半、されど1ヶ月半。
1ヶ月半もダンジョン週間があったらどれだけの差が生まれるのか想像に難くない。
1組のクラスメイトたちは赤点回避に全力を注ぐだろう。……多分。
俺たち〈エデン〉も気をつけなければいけないな。