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#423 ビューティフォービューティフォー!




 中級中位ダンジョンを卒業するときが来た。


 Aチームがレアボスを攻略後、Bチームもレアボスに挑み、これを少し苦戦しつつも撃破したようだ。


 俺は〈エデン〉トップの10人は中級中位ダンジョンを卒業し、中級で最も難易度が高く学生たちが越えたくても越えられない壁とまで言われた中級上位ダンジョンに進める実力が身についたと判断した。


 これでやっと学園の、いや世界の実力派たちと肩を並べられる場所まで来られたのだ。

 長かったようで、結構短かったな。まだ入学三ヶ月経ってない。

 やはり、ゲームでは無かった入学直後の4月に思いっきり活動できたことが効いているな。

 ゲーム〈ダン活〉では5月から本番スタートだったので、基本的にダンジョンは放課後と土日、あとダンジョン週間がメインだった。

 なのにリアルでは、4月という毎日がダンジョン週間な月があったためここまで早く進められたのだ。


 リアルに感謝である。


 となれば〈エデン〉は次のステップに移る。

 メンバーを増やし、上級職へ〈転職〉し、そして次のCランクギルドバトル〈15人戦〉の準備もする。

 最低でも後5人を育てると共に、〈エデン〉メンバーの増員を行なおう。

 それが終わればギルドランクを上げ、そして上級へ進出だ!

 これからどんどん〈エデン〉は躍進していくだろう。夢が広がるな!


 しかしだ、その前にやるべきことがまだ残っている。

 まだ俺たちは〈猛獣の集会ダンジョン〉の最下層にいるのだ。

 つまり、レアボス周回である!


「みんなレアボスお疲れ様! このままどんどん狩るぞ! 全てを毟り取る勢いで周回するんだ!」


「やるわよー!」


「ルルもやってやるのです!」


 俺の宣言になんの不満が出ることもなく、ラナ、ルルを始めとして満場一致でレアボス狩り周回が可決されたのだった。

 なにやら視界の端で、黒い二頭の狼が「クゥ~ン」と鳴いて尻尾を垂らした気がしたが、おそらく幻想、気のせいに違いない。


「猫の小判よ、私に〈金箱〉を差し出しなさい! 〈幸猫様〉お願いします! いざ、突入よ! Bチーム、私に続きなさい!」


 ラナが〈金猫の小判〉を掲げた後、ボス部屋に突入していく。

 Bチームがそれに続いた。

 ラナは〈金箱〉に飢えているらしいな。

 順番的に次はAチームのはずだったんだが、まあいいだろう。


 そして報告。


「〈金箱〉出たわよ! 4つも!」


「マジで?」


 思わず力が抜けるほどの驚きだった。マジで出ちゃったの?


 レアボスが狩り終ったラナの報告に度肝を抜かれたよ。

 祈り通じちゃった! 〈パーフェクトビューティフォー現象〉だと!?

 それはBチームが〈パーフェクトビューティフォー現象〉を引き当てたという報告だった。


 くっ、確か例の祝勝会の時、ラナは〈幸猫様〉に〈芳醇な100%リンゴジュース〉をお供えしていたが!

 こ、これがオークションで610万ミールのジュースの力なのか!?

 お、俺のお供え物と格が違う!?


 俺が敗北感に打ちひしがれている間にAチームも見学にボス部屋へ入る。俺も続くしかない。

 そこには4つの金色の宝箱が鎮座していた。

 おお、マジでパーフェクト。なんだろうこの敗北感。リアル〈ダン活〉に来てここまでの感情を覚えたのは初めてだ。

 く、くやしい!

 でも褒める! 褒めないはずがない!


「おめでとう! 〈パーフェクトビューティフォー現象〉だぞ! ビックリした!」


「ふふん。もっと褒めてもいいわ。むしろもっと褒め称えるべきね!」


「そうね。ゼフィルスは最近私たちを褒める回数が少なくなっている気がするわ。この機会にいっぱい褒めるべきよ」


「え、マジで?」


 いつものラナの冗談かと思ったらシエラまで乗ってきた。

 確かに最近は別行動することも多いし、頼りにしているから褒めるよりも礼を言うことの方が多いけど、まさか気にしていたのか?

 なんかシエラが褒められるのを待っているように思えて可愛く見えた。


 俺はその後、Bチームメンバーをたくさん褒めることになった。

 そしたらなぜかAチームも意欲が上がった。

 う、うーむ。ギルドメンバーを増やして躍進することばかり考えていたが、それは今のメンバーがいてこそだというのをこの時思い知った。こういうのを慰労と言うんだっけ?

 もっと今のメンバーにも目を向けるようにしよう。


 さて、お待ちかねの〈金箱〉だが。


「ゼフィルス、私と一緒に開けるわよ! さっきはルルと一緒に開けて、ちょっと羨ましかったんだからね!」


 ラナのツンデレ発言(?)を受けて、なぜかボス戦に参加していないはずの俺がラナと共同作業をすることになった。


「ラナ殿下。次は私にも貸してください」


「いいわよ。分けてあげるわ」


「俺は物か?」


 ラナの次はシエラとも一緒に開けるらしい。

 本人のあずかり知らぬ所で俺の貸し出しが決定していた。

 いや、俺からすれば得しかないが、いいのだろうか? それとももっと褒めろという催促?

 よ、よし。何が当たっても褒める準備はしておこう。


 その後、ドキドキの箱開け回。

 なんだかやたらと距離が近いラナと、前と同じように宝箱の両端をそれぞれが持ってパカリと開けた。


「ほわ! こ、これ、ゼフィルス!?」


「お、おう。まさかレアボス〈金箱〉産でタリスマンか。こいつは〈慰安のタリスマン〉だな」


 中身は驚き、〈慰安のタリスマン〉という回復職が使う武器だった。

 今ラナが装備している物と近い、マジカル系のタリスマン。

 男が使うには、ちょっとどころじゃない度胸が要りそうな可愛らしいデザインだ。

 しかしこのタイミングか。まさか〈幸猫様〉が?


 ―――――――――――

 ・両手武器 〈慰安のタリスマン〉

 〈魔法力68、回復力80〉

 〈『祈り系クールタイム軽減LV5』『慰安の祈りLV7』〉

 ―――――――――――


 能力はこんな感じだ。

 レアボス〈金箱〉産にしては、普通な感じに見えるが、重要なのがクールタイム軽減スキルが付いているところだな。

 実は今まで『クールタイム軽減』系というのは出ていなかった。


 このスキル、実は上級職のスキルなのである、といえばこの装備がレアボス〈金箱〉産から出た理由も分かるだろうか?


 マジもんの大当たり(激レア)装備である!

 しかも祈り系って『加護』『願い』『祝福』系なども含まれる、【祈祷師】や【聖女】といった一部しか効力が無いが、今回はドンピシャだな!

 今まで〈金箱〉産の装備って使わないやつばっかりだったけど、ここに来て有用なのが出たぞ!


 あ、ちなみに『慰安の祈り』は全体の状態異常耐性を底上げする魔法です。

 状態異常を使う敵が相手の場合、使っておくと状態異常に掛かりにくくなります。


「これ、私が使ってもいいのかしら?」


「おう、これはラナの装備行きだな。他のヒーラーは杖か本を使ってるし、タリスマンは祈り系回復職と相性が良い。やったなラナ」


 ラナの装備もそろそろ更新の時期だった。本当にいいタイミングで武器が当たったな。


「ふわぁ。なんだかとても嬉しいわ。これが、私の新しい装備なのね。――ね、ねえゼフィルス。ちょっとこれ、着けてもらってもいいかしら?」


 キラキラした目で自分の新装備となる〈慰安のタリスマン〉を眺めていたラナが、どこか緊張した様子になって頼んできた。

〈タリスマン〉系の装備は大体がネックレス系で首から提げるタイプだ。

 ラナはいそいそと今装備している〈慈愛のタリスマン〉を外し、俺に〈慰安のタリスマン〉を渡してくるが、そこで隣にいた人物から待ったがかかった。


「ごほん。ラナ様、そういったことはご遠慮ください」


「ちょ、シズ! 今良いところ! 邪魔しないでよ!?」


「ダメです。それに順番待ちもされていますから、ゼフィルス殿はシエラ様の下へ行ってください」


「あ、ゼフィルス!?」


「あー、そういうことだから、ラナ、またな」


 そういえば今ここには俺含め10人の〈エデン〉のメンバーがいたんだった。

 思いっきり注目されていたため、さすがにそれ以上行なうことはなく、ラナが「こんなシチュでそれはないわ、あんまりよー」と叫ぶ中、俺はシエラの横に屈んだ。


「では、開けるわよ」


「何気にシエラと一緒に開けるのは初めてだな」


「私も、誰かと一緒に開けること自体が初めてよ」


 それは……ゼフィルスが初めてなのと言われているように聞こえたのは俺の気のせいだろうか? 多分気のせい、だと思う。


 せーの、という掛け声で一緒に開けると、中に入っていたのは、


「これは、大盾ね」


「シエラもかよ! 〈白牙(しろきば)のカイトシールド〉じゃん! 防御力、魔防力、性能(スキル)、そして見た目全てに優れた良装備だぞ!?」


「ふふ。いいわね」


 ―――――――――――

 ・大盾 〈白牙(しろきば)のカイトシールド〉

 〈防御力33、魔防力44〉

 〈『貫通耐性LV5』『毒耐性LV10』『衝撃吸収LV7』〉

 ―――――――――――


 シエラが顔を綻ばせながら宝箱からそれを取り上げる。

 出てきたのは赤を基調とし、(ふち)が白く縦に長いカイトシールド。

 今シエラが装備している盾とちょうど同じくらいの大きさの物だ。

 中級中位ダンジョンレアボス〈金箱〉産にふさわしい性能を持ち、高い防御力、魔防力に加え『貫通耐性LV5』『毒耐性LV10』『衝撃吸収LV7』という3つのスキルを持つ。

 特に優秀なのが『衝撃吸収LV7』で、物理攻撃を受けたとき、そのダメージの12%を回復するパッシブスキルだ。

 これを装備した盾職はさらにねばり強くなる。


 大盾なのでこれはシエラが装備するのが〈エデン〉では最適だな。


「いいのね?」


「ああ。このタイミングで出るってことは神様もシエラに装備してほしいってことだろうからな」


「ふふ。ありがと。これは預かるわね」


 こうして〈白牙(しろきば)のカイトシールド〉はシエラが装備することになった。

 能力的に今のシエラの盾を超え、上級下位ダンジョンでも通用するほどの性能を持っているのだ。そろそろ装備の更新の時期ということもあり、今回はシエラもすぐに決めたようだ。


 少しずつ、〈エデン〉の装備が整っていくな。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ラナとシエラが素直に甘えられるようになってて尊い 特にシエラが自分から甘えに行くのが尊い
[一言] そういえばそういう設定あったな!! ( 'д'⊂彡☆))Д´) パーン
[一言] パーフェクトビューティフォーが出た? ならこれをやっておきますね! ( 'д'⊂彡☆))Д´) パーン
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