#417 新しい部屋で祝勝会、みんなの席を回ろう~。
「お疲れ様でしたでカンパーイ!」
「「「「お疲れ様でした~」」」」
「「「「かんぱ~い!!」」」」
ギルドバトルが終了して時刻は19時。
新しく割り当てられたDランクギルド部屋で〈エデン〉と〈アークアルカディア〉が集まって、いつものように祝賀会が行なわれていた。
Dランクのギルド部屋は中級上位ダンジョンのある建物、〈ダンジョン門・中級上伝〉通称:〈中上ダン〉の近くに建ち、学園や寮にも程近く、学園の中心地にあり利便性が高い。
建物は4階建てでファンタジー中世風、と言えばいいのだろうか。石製であるため学校の建物として見た時さらにかっこよく見える。
俺たち〈エデン〉のギルド部屋はその最上階の一室に割り当てられていた。
ギルドバトルが終わってから無事合格を言い渡され、その足で〈ギルド申請受付所〉で合格の通知とDランクギルド部屋の鍵を貰い、即行でお引越しを開始。
一応引越し期間として1週間はEランクギルド部屋の鍵を返却しなくてもいいことにはなっているが、これから期末試験期間なのだ、長々と引越しに時間を掛けている暇など無い。
ということでつい先ほど引越しも完了。
荷物は〈空間収納鞄〉があるのでほとんど手間はかからなかった。
むしろ新しい部屋のインテリア(ほぼぬいぐるみ)をどう配置するかの方が時間が掛かったくらいだ。
あ、もちろん〈幸猫様〉には上座のさらに後ろ、一番良い場所に神棚を配置させていただきましたとも。
ああ、ありがたや、ありがたや。
〈幸猫様〉を配置したことで溢れ出したグロウな光りがいいイルミネーションを醸し出す中、皆で最高のジュースに舌鼓をうった。
実はこのジュース、例のオークションで落札した〈芳醇な100%リンゴジュース〉である。
610万ミールのお高いジュースだということは、サブメンバーはおろか〈エデン〉メンバーでもあのオークションに参加していないメンバーにはほとんど伝えられていない。
ハンナとか味がわからなくなりそうだしな。
「くぅ、美味いな」
25人で分けたので3口で飲み終わってしまったが、相変わらず美味い。
とんでもなく美味だ。このスッと抜けて蕩けていく香りがなんともいえない。
「はーい。今日は〈食材と畜産ダンジョン〉19層の高級食材を贅沢に使った豪華料理を多数取り揃えたよ! 皆どんどん食べてね」
続いてハンナが出し、セレスタンとシズが配膳してきたのは例のエクストラダンジョンの高級食材で作られた料理の数々だった。
例のごとく、ギルドバトルが終わってから依頼したのでは遅い、というシエラの主張に頷き、料理専門ギルド〈味とバフの深みを求めて〉に依頼を掛けておいたのだ。
あとハンナの料理もいくつかある。ハンナの料理は毎日のように、というか毎日食べているがハンナ特製の豪華料理ともなれば話は別だ。絶対ハンナ料理を制覇するぞ!
一部ビュッフェ方式を採用してハンナが作った料理の巨大皿が設置されると俺は真っ先に飛びついた。これだけは譲れない。
「むむ、やはり胃を掴むべきかしら……」
「料理、料理ね。出来なくはないと思うけど」
「この味、【調理師】系の職業持ちに匹敵するんじゃありませんの?」
そんな俺の姿を見てラナ、シエラ、リーナが何かを呟いていたが、ハンナの極美味料理に夢中な俺の耳には届かなかった。
「しゅ、しゅごい。カレーが、食べ放題!」
「カルア、もう少し落ち着いて食べるのだ。カレーは逃げないから」
奥では〈カレーのテツジン〉によって自動調理されたカレーの山にカルアが目を輝かせまくっていた。
今回カルアが大活躍だったからな。特別に貴重な〈食ダン〉のレアボス、〈ボスミノタウロス〉からドロップした特製の〈高級ビーフ〉をふんだんに使った〈高級ビーフカレー〉を用意したぞ。
普通に食べれば3日は保つ量を作っておいたからたんと召し上がれ!
しかし、特製なだけあってカルアの食べる勢いは凄まじいな。
リカが窘めるが効果は無く、カレーを飲み物のようにごくごく平らげていく様子にサブメンバーたちが目を点にしていたぞ。
女子たちの視線が相変わらずカルアのへそだし装備のお腹に集中していたが、少しずつぽっこりとなっていくお腹に戦慄していた。
「ゼフィルスさん。となりいいでしょうか?」
「え、えっと。お邪魔でなければ」
「おお、ノエル、ラクリッテいらっしゃい。ちょうどいい、この料理が絶品なんだ。是非食べてくれ」
俺は自分の皿に載ったハンナ特製豪華料理を指差してオススメする。
「おお……、ゼフィルスさんとシェア! ありがとう~」
「ゼフィルスさんからい、いただいてもよろしいのでしょうか!?」
「ダメよ!」
「あなたたち、違うでしょ。自分の分は自分で持ってきなさい」
「で、ですよね~」
「は、ハイ! もちろんです!」
ラナとシエラが現れた瞬間、氷属性の攻撃でも浴びたかのようにカチンコチンになったノエルとラクリッテがオススメ料理を取りに大皿に向かっていった。
「まったく、油断も隙も無いわ」
「ゼフィルスが隙だらけなのよ。もっと隙をなくしなさい。その言い方だと勘違いするでしょ」
「いや……、悪かったよ?」
なぜか怒られた俺。
理不尽。
なんだか女子たちの視線が鋭くなりそうだったのでそそくさと退散し、メルト、ミサト、それとサブメンバーで唯一の男子であるレグラムのいる場所へ向かう。
「ゼフィルス殿、よく来たな。駆けつけ一杯だ。酌をしよう」
「おお、悪いなレグラム。これはなんだ?」
「〈調理課〉のクラスにいる知り合いに作ってもらったブレンドジュースだ。多少酸味はあるが食の間に飲むと食が進む、味も美味く感じられる」
勧められて飲んでみると、柑橘系のミックスジュースのようだった。レモン系だがほんのり甘みがあって美味しい。
レグラムの話では、こういうパーティの時などに食の間に飲むと胃がもたれづらくなり、食欲が上がるそうだ。また、口の中がリセットされるため次の食事がより美味しく感じられるらしい。
なるほど、【調理師】系が作るジュースにはこんなリアル効果がある物もあるんだな。
「メルトとミサトが飲んでいるのも同じジュースか?」
「ああ。この身体はあまり食べられん。このジュースは重宝しているんだ」
「もう、メルト様はそのままでも十分凛々しいって言ってるんだけどね。無理して食べても身長は伸びないよ?」
「やかましい!」
どうやらメルトは以前からこのジュースを愛飲しているらしい。ミサトよ、そっとしておいてやれ。
「しかし、メルトとレグラムは知り合い、というかずいぶん仲がいいんだな」
「同じクラスだしな」
「ああ。しかし、メルトには世話になっている」
「いや、〈アークアルカディア〉に入れたのはレグラムの実力だろう。俺は募集があることを教えただけだ」
そういえばメルトもレグラムも〈戦闘課1年8組〉同じクラスだったな。お互い知った仲というより普通に友達だったようだ。
どうもレグラムはメルト経由で〈アークアルカディア〉の面接募集があることを知り、応募したらしい。メルトに聞かされなければ逃していたそうで、メルトには恩を感じているようだ。
「じゃあ、俺は次へ行くな、楽しんでくれ」
ある程度話を聞き、お土産にミックスジュースを貰って俺は次の席に向かった。
レビューいただきました! ありがとうございます!
育成型RPG系は楽しいですよね。
作者も大好きです!
楽しい作品と言っていただき、また本当にこんなゲームがあったら是非やりたい。
そんなお気持ちを持ってもらえてとても嬉しいです!
これからも頑張って更新し続けます。
今後も〈ダン活〉をよろしくお願いいたします!