#401 〈支援課〉がとうとう仲間に! 妖怪退治だ!
「次はぼくの番のようだね」
そう言って椅子から立つのは、眠たげな眼をし、少しくすんだオレンジ色の髪を1つの三つ編みで背中に垂らしている少女だ。
しゃべり方と髪型は大人びた印象を受けるが、未成熟な体型とちょっと半目、童顔、そして抑揚の乏しい声がこの子はロリだと全力で訴えていた。あとボクッ娘だ。ここ大事。
「初めまして、ぼくはニーコ。この〈迷宮学園・本校〉〈支援課1年2組〉で学び、ダンジョン中のアイテムを研究するために〈エデン〉に加入させてもらった。これから世話になるが、よろしく頼むよ。職業は【コレクター】。LV11だ」
独特のしゃべり方で自己紹介するのは、なんと〈支援課〉の学生だ。
〈エデン〉にとうとう〈支援課〉の学生が加わることになる。
「【コレクター】? 聞いたことがあるわね。確か、レアなドロップが集まりやすい職業じゃなかったかしら?」
「その通りだよラナ殿下。いや、博識だ。補足するならドロップに関する補正という所か。レアにも通じるが、量にも補正が入るんだ。その代わり、戦闘力は微々たるものだがね」
ラナの質問にさらに補足を加えて返すニーコ。
大人びた言葉選びではあるが、覇気の無い子どもっぽい声のせいで色々と残念だ。
もうちょっと声に気合いを入れれば大人っぽいのに、見た目の雰囲気が声まで浸食しているように感じる。
ニーコの説明に加えて俺も【コレクター】の重要性を語る。
「ニーコの言うとおり、ドロップ系に幅広い補正を受けられるのがこの【コレクター】だ。〈エデン〉はこれからDランクへ上がり、そしてさらにその上を目指す。そのために装備やアイテムを初めとした様々な準備が必要だ。ニーコにはその辺りを期待している」
「任せたまえよ勇者君。契約の通りステータスの振りもそちらに任せるしダンジョンにもなるべく足手まといにならない形で付いていこう。だから勇者君も珍しいアイテムが手には入ったら是非研究させてくれたまえよ?」
契約は成った。
俺とニーコの目が合い、お互いニコリと笑みをこぼす。
今は距離が離れているからできないが、近距離だったらガシッと堅いハンドシェイクを交わしていたことだろう。
【コレクター】はすごいぞ。今まで〈幸猫様〉の恩恵でしか倍ドンしなかった宝箱がなんと増える。ユニークスキル『レアドロップコレクション』はボスからドロップする宝箱の数がたまに1個増えるのだ。レアボスなら3個になる。
ちなみに宝箱の最大ドロップ数は4個までなので〈パーフェクトビューティフォー現象〉の上を目指すことができない。これは非常に残念だ。5個の〈金箱〉とか見たかった。
これだけでも凄まじい効果だがこれだけでは終わらない。
レアドロップ率のアップまで可能。それが『レアドロップ率上昇』だ。
その名の通り、低い確率のドロップのドロップ率が上昇するという破格の能力を持つ。LV10まで育てれば、例えば〈上級転職チケット〉のドロップ確率がレアボスの2%から3.6%にドロップ率が上昇する。
〈金箱〉が出やすくなり、逆に〈木箱〉が出にくくなったりするのだ。
またボスを最後に撃破することで効果を発動する『ラストアタックボーナス』は『レアドロップ率上昇』の効果をさらに高めてくれるなど、〈金箱〉を狙うときは必須と言うべき能力が揃っている。
ゲーム〈ダン活〉時代はこれに、宝箱のドロップをやり直させる『ワンリトライ』の能力を持つ【ギャンブラー】と組み合わせて〈金箱〉狩りをしたものだ。
この2つを組み合わせ、〈小判〉〈幸猫様〉を初めとした様々な準備をした時、もう〈金箱〉が3回に1回くらいの確率でジャブジャブドロップするのだ。アレは楽しかった。
なお、両職とも戦闘力がほぼ皆無なので3人でのボス戦となり、たまに全滅していたのはご愛敬だ。
〈『ゲスト』の腕輪〉を着けてスキルを使うと腕輪が壊れるので5人枠のパーティに入れるしかなかったのがちょっと辛いところだ。その代わりドロップは美味しいけどな!
しかしリアルではさすがに全滅はしたくないため、今回はその片割れとなる【コレクター】さんにのみお越し頂いた。【ギャンブラー】が居なかったというのもある。
ニーコに関してはミサトにこちらからスカウトをお願いした形だ。
今後のことを考えて、ドロップ補正は絶対に欲しかったので【収集家】系で良い子いたらスカウト頼むとお願いしておいたのだ。
ミサトの候補に上がった【収集家】系職業の3人のうち、高位職の【コレクター】に就いていたのはニーコだけで、性格的にも問題無かったためそのまま採用となった。
【コレクター】なら上級職の【トレジャーハンター】に〈上級転職〉できる。そうすれば攻撃力や斥候としての技能も生えるため、ニーコには期待している。
また、ニーコは研究者だ。
正確には将来的にアイテム研究家になりたいらしく、【コレクター】に就いたのも自分の夢を叶えるためだそうで、〈エデン〉加入の際、条件としてレアなアイテムを自由に研究させて欲しいというのが含まれていた。
個人の持ち物はもちろんダメだが、〈ギルド〉の付属品であればそれはギルドメンバーの物。誰でも使ってもいいと、原則そうなっている。
ただ他の人が使う時は融通を利かせて欲しいと言ってニーコもこれに了承し、無事契約は成った形だ。
ちなみにニーコは現在〈ダンジョン馬車〉を狙っているらしい。「〈2号〉でよければいつでも貸しだそう」と言ったら「なんでもしよう!」という言葉を勝ち取った。
言葉遣いは大人びているが、案外チョロい子なのかもしれない。
今後は〈小判〉を持たせたニーコを連れて中級下位を周回だな。
目的は〈上級転職チケット〉だ。〈笛〉も貸し出すので何枚かドロップするのではないかというのが俺の考えだ。
ゲーム〈ダン活〉時代に実際にあった〈妖怪:後一個出ない〉の最大の対抗手段、〈物量攻撃、妖怪は死ぬ〉戦法である。
〈エデン〉に5枚の〈上級転職チケット〉が揃う日は近い。