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#386 テンションはっちゃけていたらブリザード到来




「よっしゃー! さっすがだぜ!」


 ドロップを2つ確認した瞬間、俺は飛び上がって喜びそのままカルアとパメラの下へ突撃した。


「おおお! さすがドロップ2倍! ドロップ2倍さすが! 〈金猫(きんねこ)小判(こばん)〉2つドロップだー! ハンパねーぞ!!」


 ドロップしていたのは〈金猫(きんねこ)小判(こばん)〉。

 レアモンスターからのドロップの中でも非常に価値が高い一品で、〈幸猫様〉の能力によく似ている幸運系の装備品である。


 ――――――――――

・アクセサリー装備 〈金猫(きんねこ)小判(こばん)

 〈防御力0、魔防力0〉

 〈『金箱ドロップ率アップLV1』『ボス素材ドロップ量増加LV1』〉

 ――――――――――


 もうとんでもない能力である。

 さすがは猫。幸運を撒き散らしている。ふふふ、あやかってしまったぜ。

 俺がなぜこのダンジョンを中級中位(チュウチュウ)で初めて挑戦するダンジョンに決めたのか、その決定的な理由が幸運の猫系ドロップにあった。

 その1つがこの〈金猫(きんねこ)小判(こばん)〉である。


 ゲーム〈ダン活〉では、〈猫ダン〉は別名こう呼ばれていた。

 〈幸猫様ウハウハダンジョン〉と。


 なんとこの〈猫ダン〉、実は〈幸猫様〉のドロップ率が他のダンジョンより高いのである。

 ゲーム〈ダン活〉時代、〈幸猫様〉を求めて〈ダン活〉プレイヤーたちは足繁(あししげ)く〈猫ダン〉に通ったものだ。

 そしてレアモンスターからはこの〈金猫(きんねこ)小判(こばん)〉までドロップする。他にも良ドロップがゴロゴロだ。〈幸猫様〉を持っていても〈ダン活〉プレイヤーたちは足繁(あししげ)く通ったものだ。


 〈金猫(きんねこ)小判(こばん)〉の能力は〈金箱〉率アップとボスドロップ量増加。

 もう完全にボスを想定して作られた装備品である。

 これを装備したキャラが1人でもいれば発動、装備枠を1つ潰してしまう欠点はあるが、その効果は欠点を上回って余りある。

 同じ装備で重複できないのが残念だが、これで〈金箱〉やボスのドロップが大きく増えるのだ。後で〈スキル強化玉〉でLV10まで育ててやる! そうすれば……ふはは! ふはははははは!


 ゲーム〈ダン活〉時代は〈幸猫様〉と〈金猫の小判〉の二刀流でドロップをかき集めまくったものである。まさか入ダン初日からレアモンスターと遭遇し、さらに2つも〈金猫の小判〉がゲットできるとは素晴らしすぎる!

 これは〈幸猫様〉のお導きなのだろうか。きっとそうに違いない。

 後で美味しいお肉をお供えしなければならない!


「ちょっとゼフィルス、落ち着いて。落ち着きなさい!」


「ゼフィルス何やってんのよ! パメラとカルアから離れなさい!」


「ゼフィルス君目を覚まして!」


「んお!?」


 突如としてマックスを振り切ったテンションが呼び戻される。

 目が覚めたという表現が正しいだろうか、俺は今まで正気を失っていたようだ。

 そして気がつけば目の前に少し頬を染めてニヤけているパメラと無表情のカルアがいた。俺に密着する形で。

 見ればなぜか俺の手が2人の腰に回されている。左手がパメラの腰に、右手がカルアの背中にあった。あれ? これはいったい?


「ゼフィルス、早急にその手を離し、その場から離れなさい」


「いつまでダンスを踊ってるのよ! そ、そういうのは私を誘いなさいよ!」


「ゼフィルス君、めっ、だよ!」


 シエラ、ラナ、ハンナが猛抗議していた。

 そして状況把握。

 俺はどうやら嬉しさのあまり、パメラとカルアと共にクルクル踊っていたらしい。

 完全に無意識だった。


 いや、だって〈金猫の小判〉2つだぜ? 仕方ないって!

 そんな言い訳が通用しなさそうな雰囲気である。


 俺はその場に正座させられた。


「まったく、あなたは。はっちゃけるのも大概にしなさい」


「はい。……すみませんでした」


 おかしいな。今さっきまで天国に昇りそうなとてもハッピーな気分だったのに、なんで俺は地面に正座してシエラから説教を受けているのだろうか? 地面が冷たいです。

 これが天国と地獄?


「いい? 女の子の腰に気安く手を回してはいけないわ。いけないのよ? それもあんなに密着して……。ダンスに誘うにしても強制はいけないわ。ちゃんと同意を得てからよ。女の子だって困るの、分かる?」


「あ、私は別にイヤじゃなかったデースよ?」


「パメラは黙っていてくれるかしら? 今この人に常識を説いているの」


「ハイデース。すみませんでしたデース」


 恐ろしい。一瞬ブリザードな視線を浴びたパメラはそそくさと退散した。

 置いていかないでー。


 シエラのお説教は10分も続いた。

 その間、俺以外のメンバーは〈金猫の小判〉に夢中だ。触ったり装備したり、キャーキャー言っている。俺もその中に混ざりたい。


「聞いているのかしらゼフィルス?」


「はい。聞いています!」


 シエラからのお説教からは逃げられない。


 なんとか真剣な表情でシエラのお説教を受けきり、

 足の痺れがやばいことになりそうなところで、俺はなんとか解放されたのだった。




 道中〈金猫の小判〉の説明をして、Aチームでは俺が、Bチームではラナが装備することになり、一行は無事、20層に到達したのだった。





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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[一言] シエラをデレさせたいなぁ
[気になる点] >これを装備したキャラが1人でもいれば発動、装備枠を1つ潰してしまう欠点はあるが、その効果は欠点を上回って余りある。 『欠点を上回って』⇒『欠点を補って』 欠点でマイナスになっている…
[良い点] ハンナが鬱陶しいな。おとなしくサポに徹してでしゃばるなよ...
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