#381 猫は難敵だ。Bチームの猫攻略は難航中。
「あ! パメラ後ろに行ったわ!」
「す、すばしっこすぎるのデス! 『忍法・空蝉』! 緊急離脱するデス!」
「『ロングスラスト』! く、的が小さすぎて中々当たりません」
「焦らないの、私が隙を作るから冷静に対処して。『シールドバッシュ』!」
「グニャフ!?」
「今ですね。『連射』!」
現在Bチームが猫型モンスター〈ワイルドニャー〉と戦闘中だ。
〈ワイルドニャー〉は四足歩行で口に〈魚の骨ソード〉を銜えている見た目だ。
完全二足歩行だった〈チャミセン〉に比べ、〈ワイルドニャー〉はさらに小さく、そして素早い。〈ワイルドニャー〉の方が格上だった。
もう可愛いとは言っていられなくなり、Bチームも苦戦しながらだんだんと戦闘に慣れ始めた様子だ。
猫を相手にし始めた最初の頃はラナが回復全開で支えていたからな。
ラナは後にこう語る。
「あんなに回復使ったの、初めてかも」
恐ろしき中級中位ダンジョン。通常モンスターがボスを易々と超えるのだ。恐ろしい。
Aチームも何度か〈ワイルドニャー〉と戦いその戦闘風景を見ていたため、Bチームもそれなりに善戦はしている。しかし〈ワイルドニャー〉の素早い『猫走り』に翻弄されているな。
特にアタッカーのエステルは武器が両手槍と巨大なので、的の小さい〈ワイルドニャー〉はやりにくそうだ。
しかし、シエラが冷静に『シールドバッシュ』でノックバックさせて動きを止めてからは流れが変わった。
透かさずシズが『連射』でノックバックダウンを奪うと、そこからの総攻撃で仕留めることに成功する。
やっと攻撃に躊躇が無くなりつつあった。
ちなみにドロップしたのは〈ネコミミ〉。防御力1のコスチューム装備だった。
「お疲れ様。ゼフィルスが言っていた通り強敵だったわね」
「シエラお疲れ様デス! さすが頼れるタンクなのデス! 私はカウンター苦手なのデス!」
「お疲れ様。あの見た目であの戦闘力。猫とは恐ろしいものです」
シエラ、パメラ、シズが今の戦闘の感想を述べる。
まともに戦うことが出来たため、改めて中級中位ダンジョンモンスターの強さを実感した様子だ。
「ふう。見た目は可愛いですが、強敵でした。テイムすればかなりの戦力になりそうです」
「エステルが、猫に騎乗する?」
エステルはテイムするのを忘れられない様子だが、忘れてほしい。
ほら、思わず想像したラナが目を点にしているぞ。
「よし、軽い打ち合わせ後、次に移ろうか」
皆の意識がただの観賞用の可愛い猫から、強敵の可愛い猫に変わったのを感じたので、俺は柏手を2回打って皆の意識をさらに戦闘へと向ける。
「〈ワイルドニャー〉も含め、ここ〈孤高の小猫ダンジョン〉はモンスターのサイズが小さい。追いかけるより待ち構える方が相性が良いぞ。今度からBチームはシエラを中心とした戦術を組むと良いだろう。また、シズは『照明弾』や『閃光弾』を使ってみたらどうだ?」
「『照明弾』と『閃光弾』ですか?」
Bチームにアドバイスを送るとシズが疑問を口にした。
『照明弾』と『閃光弾』をシズが使っているところは実は見たことがない。
この2つは攻撃スキルでは無いためかも知れないな。シズは自分がアタッカーだと思っているためかダメージが高いスキルをよく使う傾向がある。
しかし遠距離から、小さくて素早い的に当てるのは至難の業だ。
シズには、状況によって戦術を変える事を覚えてもらおう。
「『照明弾』は命中率アップ系のバフだ。回避率が高い敵に有効なスキルだな。また、『閃光弾』は敵を一時〈盲目〉状態にする。今の状況に有効だと思わないか?」
「ふむ。なるほど、分かりました。次に試してみます」
「おう。ただ『閃光弾』は味方も目が眩むかもしれないから、使う時は声がけ必須な」
「了解しました」
シズはアタッカーではあるが、銃系には『当たらなければどうということはない』という格言がある。そのため命中するためのスキルが色々組み込まれているんだ。
上手く使ってほしいな。
続いてパメラ、ラナ、エステルにアドバイスを送る。
シエラは出来が良すぎてアドバイスするところが無いな。むしろ俺が教えて欲しいくらいだった。
と、そこでシエラが何か羨ましそうにこちらを見ていたのに気がついた、振り向くとフイッと顔を逸らしてしまう、どうしたのだろうか?
その後、Bチームもモンスターが出現する度に前へ出て戦闘してもらった。
シズが『照明弾』と『閃光弾』を使うようになってからは戦闘がスムーズになった。
しかし、相変わらずリアル命中率アップというのはよく分からないがすごいな。
避けられたと思ったら当たっていた。攻撃しようと思っていた場所とは違う場所を攻撃していて、回避しようとした敵に当たっていたなどなど、奇跡みたいに攻撃がヒットするのだ。もちろん毎回ではないが。
これは、ギルドバトルなんかでも相手が命中率アップを使ったら注意しなくちゃいけないな。
『閃光弾』は非常に優秀だった。
何しろ〈猫ダン〉に登場するモンスターは〈盲目〉が弱点なのだ。
そのため、面白いように〈盲目〉に掛かる。
〈盲目〉になれば大体30秒は狙いが定まらないし、不用意に動けなくなるため良い的だった。
ちなみにパメラの『暗闇の術』だと〈暗闇〉状態にならない。こちらには耐性があるためだ。(猫は夜目が利くからかな?)
また〈ダン活〉では〈盲目〉と〈暗闇〉は効果は大体同じだが、状態異常の種類が異なる仕様だ。
〈盲目〉が体内状態異常と分類されており、〈暗闇〉は体外状態異常とされている。
体内状態異常は〈毒〉〈麻痺〉〈盲目〉〈睡眠〉〈鈍足〉〈気絶〉〈恐怖〉〈混乱〉。
体外状態異常は〈火傷〉〈拘束〉〈暗闇〉〈氷結〉〈束縛〉〈石化〉〈呪い〉〈魅了〉。
と〈ダン活〉では分類される。
実際、体内も体外も効果はさほど変わらない。〈毒〉と〈火傷〉はスリップダメージだし、〈睡眠〉と〈氷結〉は一定時間動けなくなる、動けない間にダメージを受けると2倍ダメージを受け状態異常が解ける。
〈恐怖〉と〈呪い〉ならステータスダウン+MP版スリップダメージだし、〈混乱〉と〈魅了〉なら前後不覚になって味方を攻撃してしまう、となる。
体内とは自身に掛かった状態異常の意味。
体外とは外側から掛けられている、封じられている状態異常という意味である。
〈ダン活〉には『体内耐性』なるものがあり、ボスモンスターはこれをかなりの確率で所持しているが、実は『体外耐性』を所持しているボスはわりと多くなかったりする。
逆に『体外耐性』を持っているが『体内耐性』は持っていないというボスもいる。
こういう所で〈ダン活〉は戦略性を高めているわけだ。
閑話休題。
猫型モンスターとの戦い方をある程度掴んだところでAチームと交代し、奥へと進んでいく。
まずは10層を目指す。
1層~10層は単体でしかモンスターが出ないため、ここで十分に練習を積もう。
慣れたら急いで攻略するぞ!




