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#380 こ、これがチュウチュウモンスター…つおい!




 〈エデン〉は今回10人で〈孤高の小猫ダンジョン〉に挑んだ。(正確には『ゲスト』のハンナを入れて11人)


 その関係で2パーティ構成となっている。

 区別するためにAチームとBチームと呼称。


 Aチームには、俺【勇者】、カルア【スターキャット】、リカ【姫侍】、ルル【ロリータヒーロー】、シェリア【精霊術師】を。


 Bチームに、シエラ【盾姫】、ラナ【聖女】、エステル【姫騎士】、シズ【戦場メイド】、パメラ【女忍者】。


 と分かれている形だ。


 ラナが俺と別のチームということで文句を言ってきたが、回復役が俺とラナしかいないので諦めてもらうしかない。

 Bチームはラナを中心とした、従者メンバーだな。ただそれだとバランスが悪いのでシエラに入ってもらった形だ。

 ポジションはメインタンクをシエラ、サブタンクはパメラ、アタッカーがエステルとシズで、ヒーラーがラナというバランスのいい構成になった。


 Aチームは、メインヒーラーがいないので、俺はヒーラー寄りのアタッカーをする形にし、メインタンクをリカ、サブタンクをルル、アタッカーをカルアとシェリアという構成にしている。


 さて、説明終了。では宣言どおり、Aチームのみで〈チャミセン〉を倒すとしよう。


 Bチームは巻き込みがあるため下がっていてもらう。


「ニャー! ニャッフッフ」


「む、可愛くない」


「ど、どうしたんだカルア?」


 〈チャミセン〉がニャフニャフ言うとカルアの目が鋭さを増した。

 なぜか先ほどからビクビク動揺しているリカがカルアに尋ねる。


「あいつ、『まだかニャア、待ちくたびれたニャア。もうなんでもいいから全員で掛かってくるといいニャ、実力の違いってやつを分からせてあげるニャ』って言ってる」


「カルアは猫語が分かるのか!?」


「……そんな気がする」


「気がする!?」


 まさか、カルアが「猫人」だから猫語が分かる!? と思いきや、そんな気がするだけとはこれいかに? どう返せばいいかわからない。

 しかし、カルアの剣呑さは上がっている。カルアはそう言われたと感じたらしい。


「ぜ、ゼフィルス。とりあえず私が前に出る。いいか?」


「おう。リカ、頼む」


「リカがヘイトを稼いだが最後。切り刻む用意はできてる」


「か、カルア?」


 カルアにいったい何が起こったのか、なぜかここに来てからカルアの様子がおかしい。


「ゆ、行くぞ! 我が名はリカ、いざ勝負を申し込む! 『名乗り』!」


「ニャッフス!」


「『受け払い』!」


 『名乗り』のヘイトに反応し、素早く駆けて来た〈チャミセン〉の〈魚の骨ソード〉が光る。

 それをリカは冷静に見切り、『受け払い』で相殺した。

 瞬間、〈チャミセン〉の剣から淡いエフェクトが漏れ出る。スキルアクションだ。


「フ~ニャンニャンニャン!」


「『上段受け』! ぐっ!? 思ったより手強(てごわ)いぞ!?」


 〈チャミセン〉のスキルは『三連ニャ切り』だった。

 『上段受け』では単発か、多くて2発しか相殺できない。素早い三連続攻撃に1発の斬撃がリカに入る。しかもダメージが40も入った。3発全部食らっていれば120ダメージである。これは強い。


「ルル、攻撃力を下げてくれ」


「任せるのです! 『ハートチャーム』なのです! 続いて『チャームソー……う、可愛くて斬れないのです!」


 リカの指示にルルからハートのエフェクトが溢れ、〈チャミセン〉に攻撃力低下デバフが掛かる。ルルは追撃の『チャームソード』でさらに攻撃力を奪わんとするが、可愛さにやられて失敗していた。


「フニャニャ」


「む~! 難しい、とても難しいのです!」


「ルル、私がやる。斬るよ。『鱗剝ぎ』!」


「フニャア!?」


「斬ったのです!?」


「大丈夫、斬っても切れない、傷つかない。HPが減るだけ。アレは凶悪なモンスター。ルルも斬ってみる」


「うう~。これは凶悪すぎるのです。さすが中級中位(チュウチュウ)なのです」


「このままだとリカがずっと斬られる。ルル、頑張って」


「わ、分かったのです。覚悟を決めるのですよ! 『チャームソード』!」


「フニャア!?」


 ルルがカルアの説得で剣を抜いた。デバフ攻撃の『チャームソード』が〈チャミセン〉を斬る。〈チャミセン〉の攻撃力が大きく下がり、リカのHPの減りが弱まった。


「ルル、よく頑張った。私も斬る。一緒に斬るよ」


「やったるのです! ルルはやればできるのです!」


 最初は戸惑っていたルル。

 しかしカルアのおかげで徐々に〈チャミセン〉を斬るのにも慣れてくる。


「今。『二刀山猫斬り』!」


 それを見計らい、カルアが再度『二刀山猫斬り』を発動して襲いかかった。しかし、


「ニャーアーアー!」


「わあ、逃げたのです!」


「む、素早い」


 これはたまらんと、〈チャミセン〉はカルアも使える『回避ダッシュ』を使い一瞬で離脱、カルアの『二刀山猫斬り』は回避されてしまった。


「ニャア!」


「くっ、『受け払い』!」


 リカの後ろに回りこんだ〈チャミセン〉がさらに『お魚大好き斬り』を繰り出した。

 〈魚の骨ソード〉が一瞬だけ〈魚ソード〉に受肉してリカに叩き込まれる。見た目的に攻撃力が下がってないかと思うのは気のせいか。

 これをリカは既の所で相殺することに成功する。


 苦戦しているなぁ。

 ボスと違って小さいし素早いし可愛いためやりづらそうだ。

 とそこで後方待機していたシェリアが動いた。


「『精霊召喚』! 〈雷精霊〉様、お願いいたします。『エレメントシュート』!」


「ニャ、ニャニャニャニャー!?」


 〈雷精霊〉を呼び出したシェリアのシュートが素早く動く〈チャミセン〉に刺さった。

 精霊魔法は攻撃を精霊に依存している、そのため命中率も精霊次第だ。今回小さく動きの速い〈チャミセン〉に攻撃がヒットしたのは、それだけ精霊が優秀という証左だった。DEX値は関係ない。


 シェリアはルル可愛い至上主義。〈チャミセン〉相手でも問題無く攻撃できるらしい。


 バチバチという放電音と共に〈チャミセン〉の動きが止まる。


「今です!」


「『ソニックソード』! からの『ハヤブサストライク』だ!」


「クニャア!?」


 俺も迷わず斬る! 相手は猫だがモンスター、それ以上でもそれ以下でもない。

 チャンスを窺っていたため()かさず『ソニックソード』で間合いを詰めて斬った。

 さらに流れるように超速二連続斬りの『ハヤブサストライク』を発動し、逃げられる前に大ダメージを与える。


 これが良い感じに決まってクリティカルし、〈チャミセン〉は「フニャア~」と言い残してエフェクトに消えていった。

 ドロップしたのは〈猫の付け髭〉というギャグアイテムだった。


「参ったか」


「カルア?」


 ギャグアイテムに向かい勝利宣言(?)をするカルア。俺が予想していた光景と違う。

 倒してスッキリしたのか剣呑さは消えていた。ふう、とリカが息を吐いている。


「お疲れ~、どうだった今の敵は?」


「お疲れ様ゼフィルス。しかし、なんだな。少し強すぎはしないか? かなりダメージを受けたぞ」


「あれが中級中位ダンジョンのモンスターだ。気を引き締めてくれよ。『オーラヒール』!」


 結局リカが受けたダメージは200ほど。最大HPの3割近くも削られていた、信じられるか? これボスじゃなくて通常モンスターにやられたんだぜ? しかも1匹。

 3匹以上居たらどうなっちゃうのっていうね。

 『オーラヒール』を発動してリカを回復してやり、改めて認識改善を促す。


「むう。もう少し攻撃を避けることに意識を割くべきか、しかしスピードが速い」


「まあ、これから慣れていけばいいさ。みんなはどう思った?」


「ん、お疲れ様。あんな風に避けられたの、初。次は気をつける」


「魚の骨がすごく堅くてビックリしたのです! あと、ネコさんってすごく可愛くて素早いのです! 攻撃が凄く当てにくかったのです!」


「あれは猫の皮を被ったモンスターですね。動きが強者のそれでした」


 感想を聞くと、リカが眉を寄せて難しい顔をした。カルアは相変わらず猫を斬ることになんとも思っていないどころか斬りたがっている。

 ルルの感想は相変わらずほっこり系で、シェリアは普段と変わらない。


 ちなみにBチームとハンナはほとんどが裏切られた的な顔をしていた。〈チャミセン〉に何を期待していたんだ?


「しかし、あれにスキルを惜しんで挑むのは厳しいな……」


 リカが言っているのはMP節約の件だ。

 今戦ったのはボスではない、普通の通常モンスターである。

 ボスが相手の場合、〈エデン〉はほとんど出し惜しみなしでスキルを使いまくるが、道中はそうは言っていられない。ダンジョンではMPの節約は基本中の基本だ。〈MPハイポーション〉はできればボスに使いたいからな。


 というわけで、基本的に〈エデン〉では通常モンスターを相手にする場合、〈一ツリ〉か〈二ツリ〉の〈スキル〉または〈魔法〉で、二発前後で倒すのを推奨していた。

 つまり1戦につき二発だな。5人いるから十発だ。

 ちなみに〈三ツリ〉は消費MPがアホみたいに高いため基本的に雑魚戦では使わないことになっている。


「はい。そういえばゼフィルス殿、あなたは『ハヤブサストライク』を使っていましたね」


「目ざといなシェリア。そのとおりだ」


「確か『ハヤブサストライク』は〈三ツリ〉のスキルだったはずです。良いのですか?」


 これはMP節約をしなくても良いのかという確認だ。

 〈三ツリ〉のスキル、魔法はどれも強力だ。しかし、使いすぎればあっという間にMPは枯渇してしまうだろう。


「ま、それだけ中級中位(ちゅうちゅう)のモンスターが強いって事だな。みんなもなるべくMPを節約してほしいが。必要なときは〈三ツリ〉のスキル、魔法を使っても構わない。回数制限を超えても大丈夫だ。そのためにハンナを連れてきているしな」


「えへへ。任せてよ。ここは〈上魔力草〉も採取できるみたいだしね」


「なるほど。ここのモンスターはそれほど強敵なのですね」


 シェリアは俺の答えに納得したようだ。

 〈三ツリ〉を使わないと倒せないというわけではないが、圧倒的に早く片が付くし、余計なダメージを負わなくてすむ。俺はMPの節約を意識しているなら〈三ツリ〉を使っても構わないと思っている。

 節約を意識しすぎて戦闘不能になったり全滅したり、長期戦でダンジョン攻略が滞ったりすれば目も当てられない。

 中級中位ダンジョンのモンスターとはそれほど強敵なのだ、この〈猫ダン〉は特にな。中級下位(チュカ)の感覚でいると、負けはしないが苦戦はするだろう。


 皆、中級中位(チュウチュウ)の強さに慣れていってもらいたい。


 また、シェリアの〈三ツリ〉はユニークスキルを使うことを前提としているためコストが非常に高い。

 シェリアはINTが高いため〈二ツリ〉以下でも十分にポテンシャルを発揮できるので上層では〈三ツリ〉とユニークは使う必要が無いよと言い聞かしておく。

 MPは節約が基本だ。

 シェリアはがっかりしていたが、受け入れてくれ。


 さて、もう何戦か練習したらBチームと交代だな。





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