#358 最前列の女子は本当に仲が良いな~。
第4回〈ダン活式育成論〉からは、どんな職業がどんな場面なら活躍出来るのかをメインに進めていく。
今までは〈育成論〉の考え方を教えてきたが、今度からはその育成した後の活かし方を教えていくのだ。
〈ダン活〉にはこんな格言がある。
「職業とは就いただけで終わらず。就いてからが本番である」
しかし、実はこの言葉には続きがあるのだ。
「職業は最高に育成するべし。使い処を間違えるべからず」
この格言を言った人たちが別人なので言葉遣いが違うのは気にしないでほしい。
だが、なぜかこの文章は〈ダン活〉プレイヤーに大いに受け入れられ、いつの間にか合体してしまった。今では〈ダン活〉プレイヤーなら誰もがこの言葉を知っている。だって攻略サイトのトップにデカデカと書いてあるから。
あの攻略サイト、この格言を載せたことでトップページがマジで格好よくなったからな、格言って大事。
脱線した。
後半の文章について、つまり育成したら使いなさい。でも使い処を誤るなということ。
当り前の話だが、せっかく長い時間掛けて育成したキャラだ、そりゃ完成したら使いたくなるのがゲーマーというもの。
たとえそのキャラが、対○○を想定して作り上げた尖りまくった特化型だとしてもだ。とりあえず試運転がてらどこでもいいから使ってみたいと考えちゃうのがゲーマーというもの。
そしてウキウキ気分で「無双してやんよ~」と使ってみたら普通にボスに惨敗。プレイヤーが「ほへぇ?」ってなる事態がわりと多かったのだ。
だってそのキャラ、そのボスを想定して無いんだもん。
「使い処を間違えるべからず」とはそう言うことだ。
対○○を想定して作り上げたキャラなら○○に使えよ! と言うことである。
苦労して作り上げたキャラが記念すべき初戦で惨敗するのだ。
プレイヤーからはエクトプラズムが出てしばらく機能停止する事態が多発した。
たとえるなら、苦労して作ったプラモ飛行機を初飛行させようとして、飛ばす方向を間違えて木に激突させ大破させてしまった、とかそんな心境である。
正しく使えば間違いなく強かったはずなのに、なぜそっちにやっちゃったのか。
まあプラモ飛行機とは違い回復すればまた使えるようにはなるが、惨敗したショックは消えないのだ。
プレイヤーはせっかく苦労して育てたキャラが惨敗したというショックを背負いながら、〈ダン活〉の3年間を過ごして行くことになる。辛い。
〈育成論〉の考え方が出回り始めた初期、そんなことが一時期横行してしまいプレイヤーたちはキャラの使い処に非常に敏感になった。
俺の最強育成論もそのおかげで尖った性能の到達点はあまり作っていない。特化型は活躍出来る場面が少ないからだ。基本的に複数の状況下でも力が発揮出来るポテンシャルを目指している。
極振りは敵だ。あかん、やられちゃう!
閑話休題。
そんなこんなで授業ではどんな状況にどんな職業なら適しているのかを教え、さらに失敗談もたくさん教えておく。
〈ダン活〉には失敗談なんか山のようにあったのだ。
「君たちがこんな失敗をしないことを切に願っているぞ」
俺は心で悔し泣きしながら皆に語っていった。
頼むから皆は俺たちのような失敗はするんじゃ無いぞ。(しくしく)
授業と質問タイムが終わった途端、とある女子の集団が一カ所に集まった。
「はぁ。今日のゼフィルス君はとてもキュンときちゃったわ」
「分かる。なんかちょい影のある感じだったよね!」
「普段との明るさと影のギャップがすっごいクル」
「それね!」
「失敗談を語る度に憂いを帯びるゼフィルスくんがとてもやばかった。ノートにはなぜか授業内容と一緒に妄想まで書いてあった。いつ書いたのかはわからない」
「授業中に書いたんでしょ! 何よこんなもの、私のノートの方が凄いんだから」
「いや、なんの張り合いよ。私も参加するわ」
「失敗する私と助けてくれる勇者君で捗りすぎた……」
「え? 逆でしょ? 失敗する勇者君を慰める私、そこから発展する――」
「どっちもいいわね。よし、薄い本を作りましょ!」
「あんたたちは淑女の慎みを持ちなさい。ここは講堂なのよ」
「それにしても真に迫った失敗談だったよね。あれって実話なのかな?」
「そんなわけない、と申したいけど勇者君ですから」
「んっと? つまりどういうこと?」
「でも世の中には高位職に就いても育成に大失敗して埋もれていく人は多い。勇者さんはよく分かっている」
「どうして失敗したのか、詳しく解析してくれるから凄く助かるわ」
「『リセットはあっても戻るは無い』。勇者君の名言」
「勇者君の期待に応えるためにも失敗はできないよね」
「うん。また皆で勉強会しようか。45人も居ればエラーは限りなく排除出来るはずよ」
「賛成する。それに、別に聞きたいこともある。〈エデン〉面談の結果とか」
「ふふふ。血を見るわね」
「HPに守られてるから出ないけどな」
「比喩よ比喩。でも勇者君のギルドに参加するなんて、なんて羨ましいの」
「でも入れても下部組織って話だよ? さすがに殿下たちと肩を並べるには実力が足りないよ」
「それに下部組織からレギュラーになれる保証もない。今の地位を捨ててまで入ろうとした子は本物」
「う……、そう、よね。私たち、今でも相応の実力が付いてきて、このまま行けばギルドの1軍のメインメンバーに加えられることは確実視されている。これを捨てられる子は本当にすごいわ」
「私も応募しようか迷って、結局出来なかったもの」
「今回の募集は実質下部組織の募集だったからね、仕方ないよ」
「応募した子は勇者ファンの鑑。受かった子は祝福するべき」
「わかったわ。この後集まりましょ。プチパーティを開いて皆で送り出して上げましょうよ」
「だからまだ結果出てないって!?」
最前列にいる女子の一団がまた休み時間に一カ所に集まっている。
第1回目から参加している女子は本当に仲が良いな~。