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#036 俺はメイちゃんをひったくる。代わりはロッドな




 〈『ゲスト』の腕輪〉が運良くツモった。これは幸先が良い。

 

 その後は6階層まで戻り、雑魚モンスターを相手に資源回収に努めた。

 『アピールLV5』はMP節約のため使えなかったのでその分は足でカバーだ。

 ゲーム時代の記憶の中からモンスターが多くいた狩り場をピックアップして回っていく。


 ドロップが規定量まで揃ったら7階層に進んで資源回収。

 それを9階層まで続けて、やり終わった頃には2時間が経過、MPが60ほど回復したのでボス周回を再開した。


 今回は30分で5回周回し、MPが枯渇して時間もいい頃だったので今日はここで引き上げることにする。


「お疲れ~。ラストも「銀箱」か、何か良いの出たか?」


「ゼフィルス君〈『ゲスト』の腕輪〉がドロップしてから毎回言ってるよねそれ。そんなにポンポン出ないって自分で言ってたのに」


 ハンナが俺の言葉にクスクスと笑いながら指摘してくる。


 確かに、レアドロップは滅多に出ないからレアなのだ。

 それに初級下位(ショッカー)のドロップは格が低い事も相まってレアドロップが出たとしても微妙な物も多い。

 でも、〈『ゲスト』の腕輪〉みたいに本物の激レアがドロップすることもあるのだからボス周回はやめられないんだ。


 これまで16回のボス周回ではレアドロップは2種類。そのうち1種類が激レアだった。

 激レアから5回目の周回、そろそろレアドロップが来てもいい頃だと思うんだよ。マジで。


「えっと、ではまず資源の方を回収しちゃって。次にボスドロップも……あれ? このボスドロップって初めてじゃない?」


「ん? ああ〈クマアリクイの大毛皮〉か。確かにボスドロップの中じゃ一番出にくいがって、え、17回目で初ドロなの?」


 そこまでドロ率低くはないのだが、ハンナは初めて見たらしい。

 マジかぁ。軽装系の防具、しかも体装備に使える素材なので価値が高い。ここのボスドロップの中では一番レアなだけあって買い取り単価も一番高いやつなのだが、残念ながら1個しか確保出来なかったらしい。

 17周、ボスドロップ85個もあって1個しか来ないかぁ。これは残念。


「それで宝箱の中身ね。どう、これ? レアかな?」


「おお! レアだレア! 『ファイヤボールLV2』が込められた〈フレムロッド〉だ! こっちは当りだぞ!」


「え! ほんとに来たの! すごーい!」


 〈フレムロッド:攻撃力2。魔法力11。『ファイヤボールLV2』〉たしかそんな能力だったはずだ。

 ステッキ系武器のカテゴリで、本人が火魔法系を覚えていなくても属性魔法を使えるこの武器は、初めはかなり重宝した。

 特に【錬金術師】なんかの生産職を比較的安全に育てられるし、幽霊(ゴースト)なんかの霊系モンスターにも効くからな。

 まあ『ファイヤボールLV2』だと初級下位(ショッカー)と、なんとか初級中位(ショッチュー)行けるか? くらいしか役に立たないから、すぐにお役御免になってしまうのだけど、初めての初級下位(ショッカー)ダンジョンでドロップしたのは良いな。まだ活躍の場がある。


「ハンナはこれ装備しておけ。もうそんな初心者用の武器(両手メイス)に頼る必要はない」


「え? でもこれ、私すごく気に入ってるんだけど…」


「初心者武器なんて気に入るなよ!?」


 撲殺ショットか? 撲殺ショットにハマったのか?

 何故か装備更新しないと思ったらそういうことかよ。


 俺はあふれ出るSTR値に任せてハンナの両手メイスをひったくる。


「ああ! 私のメイちゃんが!」


 名前まで付けてたのか!?

 ダメだ、愛着が湧く前に隠しておかないと。


 武器は常に更新するものだ。愛着を持ってしまうと更新が辛くなるぞ?

 そうハンナに諭しながらフレムロッドを持たせてやる。


「ほれ、今度から魔法で戦闘に参加だ。魔法で狙うのは意外と難しいらしいから練習しておいた方が良いぞ」


「うーん。わかったけど……。これあんまり硬くなさそう、殴ったら折れちゃいそうだよ?」


「いや殴んなよ、魔法使えよ」


 メイスじゃなくてステッキだからなそれ。

 折らないでくれよ? ここ一月くらい内なら割と高値で売れるんだから。(同級生に)


 まあハンナのことだ、高値で売れると言っておけば()りはしないだろう。


 なんか嫌な信頼だ。




 今回の戦果を確認すると纏めに入る。


「依頼の品だが、規定数は全て揃ったな。それ以外の資源もかなり集まった」


「うん。なんか信じられないくらいドロップしたね」


「このくらいで驚いてたら今後は大変だぞ」


 量だけで言ったら千個近くあるからな。

 空間収納鞄(アイテムバッグ)(容量:大)が無かったらとても持ち運べない量だ。


 今日は初のボス攻略だったし、俺もまだ不慣れな点があったからこの程度で済んでいるが、今後MPの自然回復系のアイテム、もしくは装備を調えられたらもっと周回が可能になる。ダンジョンを効率良く最下層まで進めればもっとボス周回の時間を捻出できるし、それにステータスや俺自身の地力が上がればボス戦自体のタイムも短縮出来るだろう。

 タイムアタックはまだまだこれからが本番だ。



 今回はボス周回のおかげで俺は【勇者LV15】に、ハンナは【錬金術師LV18】に上がった。なかなか良い感じだ。

 レベルはチュートリアルだったLV10までより、かなり上がりにくくなっている。

 今後もボス周回で経験値を大量取得しよう。

 初級下位(ショッカー)のダンジョンならLV20までは育てられるので、とりあえずはそれが目標だな。


 一応ハンナには、最低値に設定していたLV16を超えてLV18になったので「無理にダンジョンに潜る必要は無いから生産に集中するか?」と訊いてみたのだが、ハンナの中ではダンジョンに同行するのは決定事項のようで、首をぶんぶん振って断ってきた。


「じゃ、帰ろうか」


「うん。また明日も潜ろうね。一緒に」


 俺が立ち上がるとハンナも立った。

 なかなか恥ずかしい事を言われた気がする。ハンナも少し頬を赤くしていた。

 なんか青春っぽいなぁ、と感じながら「おう」とだけ返した。


 荷物を持ってピンク色に光る魔法陣に入り、今日のダンジョン探索は終わった。





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