#348 オークション開始! 初めの商品はまさかの!?
「レディィィィス、アァァンド、ジェントルメェェン! お待たせいたしました! ただいまからシングルオークションの開催を宣言します!」
司会者が大きな声で開催の宣言をする。仮面を被っているので誰かは分からないがおそらく男子学生だろう。
最初の言葉、なかなか様になっていたな。本当にあんな言い方するんだ。
やっば、なんか異世界っぽくてテンション上がる!
ちなみにゲーム〈ダン活〉だと声無しだった。むしろスキップしてたシーンだった。
「なかなか迫力があるわね」
「なんだかワクワクしてきたわ!」
シエラとラナもオークション開始宣言に高揚を隠せない様子だ。
俺もワクワクだ!
「ではまず、初めての参加の方も居るでしょう。ルールを説明させていただければと思います!」
司会者がテンション上げ上げでオークションのルールを説明しだす。
詳しくは省略するが、要はトラブルを起こさないこととか、落札品を巡っての〈決闘戦〉は禁止だとか、そんな感じの説明がなされた。自分の資産以上の金額を落札してはいけないなどの基本ルールも念入りに説明していた。
それ破産しちゃうやつ!? 恐ろしい。気をつけねば。
さらに札の挙げ方、その本数によって金額を上乗せする。
たとえば開始の最低落札価格が1000万ミールなら、札1本挙げれば10分の1に相当する100万ミールが上乗せされる。この札が各席に5本配られている。500万ミールを上乗せしたいときはこれを5本挙げればいいわけだ。
また、QPで購入する場合のレートは1QP= 1000ミールだ。
今回〈エデン〉は全てQPで支払う予定である。
「以上でルールの説明を終了とさせていただきます! ご納得いかない方は今すぐご退場を! 居ませんか? 居ませんね? ではこのまま出品に移らせていただきます! まずは第一品目!」
テンポ良く司会者が進行し早速一品目の商品が運ばれてきた。
「最初っから飛ばしていきましょう! サプライズ品の登場だぁぁぁ!! なんと王宮でもほとんど手に入らないと言われる希少中の希少アイテム! 中級上位ダンジョン〈芳醇の林檎ダンジョン〉のレアモンスター〈ゴールデンアップルプル〉のレアドロップ! その名も〈芳醇な100%リンゴジュース〉だぁぁぁ!!」
「何ですって!? ゼフィルスこれは買いよ! 絶対に譲ってはいけないわ! 手に入れるわよ!」
一品目からラナの大好物品の登場だった。即行でラナが目の色を変える。
一瞬で全ての札を掴もうとしたラナから、俺は溢れ出るSTRに身を任せてその札をひったくった。させないよ?
「ああ!? ちょ、ゼフィルス何するのよ!?」
まったくラナのアップルジュース好きにも困ったものである。
「〈芳醇な100%リンゴジュース〉、最低落札価格は100万ミールからスタートです! どうぞ!」
ジュース1本100万ミール。さすがゲームの世界だ。
信じられるか? これジュース1本の値段なんだぜ?
「35番さん350万ミール! 21番さん370万ミール! おおっと98番さん420万ミールだぁぁぁ!!」
「何やってるのよゼフィルス! 早く札を挙げて! 取られるわよ!?」
やばい。ジュースの値段がどんどん上がっていっていてヤバイ。そしてラナがガクガク肩を揺さぶってくるのも地味にキツイ。
いやいや。今日の目的は防具であってジュースではない。ジュースを買うお金なんてないぞ!
「ゼフィルス様、別途こちらで予算がございます。購入していただいて構いませんよ」
「さすがセレスタンだわ! さあゼフィルス、早く札を挙げるのよ! 絶対勝ち取りなさい!」
まさかのセレスタンから許可が出た!? いったいどこからの予算だろう?
仕方ない。だけどラナにはやらせない! 俺が札を挙げる。
「2番さん510万ミール!! とうとう500万の壁を突破して来ました! さあ他にはいませんか!?」
2番さん。どうやら俺は2番さんらしい。席的には中央ら辺にいるのだが、この番号はどうやって決められているのだろうか?
「98番さん530万ミール! 2番さん550万ミール! 98番さん560万ミール! おお、2番さん580万ミールだぁぁ!」
どうやら競っているのは98番さんだけらしい。しかし、その勢いも少しずつ衰えてきて。
「2番さん610万ミール! 他にいませんか? いませんね? はい、これにて落札とします! 第一品目、〈芳醇な100%リンゴジュース〉は2番さんが610万ミールで落札です!」
ジュース1本610万ミール……。すげえ世界だぜ。
「でかしたわゼフィルス! 今日は打ち上げよ!」
しかし、ラナが喜んでいるのだから良しとしよう。俺の金じゃないけど。
だが、打ち上げするかはエステルとシズと相談してからだ。
そう告げると、ラナが笑顔で固まった。
エステルはともかくシズは結構その辺に厳しいからな。
こういうお高いジュースはしっかりとした記念日なんかまで取って置くだろう。
しかしラナは諦めない。一つ瞼を閉じると、なんと流し目を送ってきた。
「ゼフィルス。いいじゃない。一口だけ。ね?」
「うっ、いや、そうだな。一口くらいなら……」
なんだかラナから魅力な波動が。
思わず頷いてしまったぞ。なんだ今のは!?
「ふふふ」
言質を取ったラナがとても上機嫌だった。
……まあいいか。ラナが上機嫌ならなんでもいい気がする。
ちなみにだが、これの予算はセレスタンがギルドのものとは別で出した。
そのお金が誰のもので、どこから出したのかは俺は知らない。
ラナとそんなやり取りをしている間にもオークションは進行し、ようやく俺たちが狙っていた商品が出てきた。
作製ギルドは〈ワッペンシールステッカー〉。
中級上位ダンジョンでも十分通用する防具。頭から足、アクセまで含めたの6点セット。
名称〈傭兵妖精防具セット(女性用)〉だ。
カルアにぴったりな装備品である。