#345話 メルト&ミサト 祝勝会&歓迎会
「ギルドバトル勝利おめでとう! これより祝勝会&メルト、ミサトの歓迎会を開催する。みんなグラスを持ったな? ではカンパーイ!!」
「「「カンパーイ」」」
「「「おめでと~」」」
そこらじゅうからグラス同士がぶつかるカランという音が響き渡る。
現在Eランクギルド〈エデン〉の部屋にて祝勝会と歓迎会が行なわれていた。
参加者は全て〈エデン〉のメンバーだ。
〈天下一大星〉のメンバーは当然いない。
彼らは、なんというか風の噂で我に返ったとか聞いたが、そっとしておいてやろうと思う。
改めて会場を見渡すと、女子はみんなすっきりとした笑顔で溢れていた。
かなりの圧倒的勝利だったからな。みんな勝利したのが嬉しいのだろう。そうであってほしい。
結果を思い出す。
ポイント〈『白12,050P』対『赤7,300P』〉〈ポイント差:4,750P〉。
〈巨城保有:白3城・赤2城〉
〈残り時間00分00秒〉〈残り人数:白15人・赤3人〉
―――勝者、〈白チームエデン〉。
圧倒的な差がついてしまったな。
〈天下一大星〉は圧倒的な敗北となってしまった。
正直、いい感じの作戦と動きをしていたのだが、すべては俺から教わったこと。
その作戦や行動で俺率いる〈エデン〉に勝てる道理は無かった。
本拠地にも近づけず、最後は特攻を決めようかと決断したようだが、〈エデン〉の優秀なメンバーとリーナの的確な指示がそれを防ぎ、ほとんど近づくことができなかった。
また〈天下一大星〉は戦闘不能者がかなり出た。合計12人。
初期メンバーの4人も全員退場していたしな。大敗北だろう。
ラナもサターンにいいのをお見舞いできたみたいでスカッとしていた。
あれは中々のスイングだった。有言実行(打っ飛ばす)に加え美味しいところを持って行くとか、さすが王女だった。
途中の展開で4人を〈敗者のお部屋〉へお送りし、終盤では8人が退場した〈天下一大星〉は対人戦に難ありだったな。
他の所でも、ルルとシェリア、そしてシエラが【密偵】一年生、【重装戦士】三年生を打ち倒し〈敗者のお部屋〉招待してあげたようだ。
しかもルルはLV的格上の3年生を2人も倒したというのだから驚きだ。ジャイアントキリングである。その3年生ってロリコンじゃないよな?
まあ、ルルの魅力はロリコンじゃなくても魅了されてしまうところ……。つまりそういうことだろう。(どういうことだ?)
また、赤の本拠地近くではエステル、カルア、リカが二年生3人を圧倒していたらしい。
ただ、相手のヒーラーが中々倒せず逃げに徹されてしまい仕留めきれなかったようだ。
あの二年生3人はなんとかタイムアップまで本拠地を守り抜いたのだ。
やるなぁ。
そして俺たちの地点では知っての通り6人を退場させた。
とても素晴らしい結果じゃないだろうか?
特にギルドバトル初参加というメンバーが多い中、このような好成績を残した人が多いというのが素晴らしい。
リーナなんかまだ戦略面では経験不足だったはずだが、俺は少しフォローするだけでよくあれだけ動けたと思う。
本当にみんな素晴らしい動きだった。
〈ジャストタイムアタック〉などの戦術の課題も多いが、まずはこれだけ優秀なメンバーに恵まれたことを喜びたい。
ジュースが美味い!
「もうゼフィルス、いい飲みっぷりじゃない! 私が注いであげるわよ」
「おお? 悪いなラナ。ありがとう」
ツンデレ風の言葉でアップルジュースをお酌(?)するラナに礼を言ってまた飲む。
今回のアップルジュースは普通の、レアじゃない方のやつだが非常に美味いと感じる。
これが勝利の味ってやつか。
「〈幸猫様〉には〈ゴールデンアップルプル〉のジュースをあげるわね!」
「え? 俺には?」
なぜか〈幸猫様〉にはグレードの高い〈芳醇な100%リンゴジュース〉がお供えされていた。
意味は分かるし当たり前とも思うけど、なんか釈然としなかった。
「まあいいか。ならば俺も秘蔵の〈ゴールデントプル〉のステーキ肉をお供えしよう」
しかし、今は祝勝会。
そういうこともある。
俺もレアモンスター〈ゴールデントプル〉の数少ないお肉の1枚をお供えする。
そしてラナと一緒に祈った。
「いつもありがとうございます! また良い物をよろしくお願いします〈幸猫様〉!」
「感謝します〈幸猫様〉。いつまでも〈エデン〉を見守っていてください」
上が俺で、下がラナである。
セリフに敗北感を感じるのはなぜだろうか?
「ゼフィルス君~。たはは、お疲れ様~」
「ミサトか」
やって来たのはグラスを片手に持ったミサトだった。
なんとなくバツが悪そうな顔をしている。
どうしたのだろうか?
「ミサト。はっきり言え。ゼフィルスだって悪いようにはしないだろう」
「メルト様。でも不安ですよ~」
おっと、ミサトの陰に銀髪の少年、メルトがいた。やばい、小さくて目に入らなかったといったら怒りそうだ。内緒にしておこう。
しかし、ミサトは言いたいことがある様子だが、中々踏ん切りがつかないのか口を開いては閉じを何回か繰り返す。
「ミサト」
「う、うん。ゼフィルス君!」
「お、おう。なんだ?」
メルトに視線で後押しされ、ミサトがついに前に出た。
その横でラナが警戒した視線を向けてくるのが気になるところだ。
「あのね、そのね。その、私ってこのまま〈エデン〉に在籍していいのかなって……」
「…………うん?」
あまりにも予想外なことを聞かされて俺は一瞬よく理解できなかった。
そこにメルトがため息を吐いて補足する。
「ふう……。ミサトが〈エデン〉に加わったのは〈天下一大星〉の衝突を何とかするためだった。まあ、あまり効果は無かったが。それが終わった今、ミサトは自分が〈エデン〉に本当に在籍していて良いのかと、まあそんなことを思っているわけだ」
珍しく長文で語ってくれたメルトの言葉を咀嚼する。
これはおそらく、あの時言わされた〈エデン〉に正式加入するってやつのことだろう。律儀なミサトらしく改めて確認に来たというわけだ。
そして意味を理解したとき、俺の言葉より先に動いた者がいた。ラナである。
「居て良いに決まっているじゃない! ミサトはもう〈エデン〉のメンバーだわ。誰にも文句は言わせない、言ったらメイちゃんで叩いてあげるから、ミサトはずっと〈エデン〉にいなさい!」
俺のセリフが取られた!?
ラナはミサトの手を取り、目を見てまっすぐそう告げる。
ミサトはそんなラナの言葉に、なぜか頬を赤くしていた。視線はラナの大海原のような青い目に固定されて動かない。
「私、このまま〈エデン〉にいていいの?」
「当たり前でしょ。今度一緒にダンジョン行ったり、またギルドバトルもしましょうよ」
「…………うん。ありがとう。ラナ様」
おかしいな。
当事者の俺がまさかの部外者で不思議。
しかし、話は上手く纏まりそう。ならいいか。うん。
とりあえずラナとミサトがこちらをチラリと見てきたので頷いておく。ちなみにメルトも頷いている。
俺たちの役割はこれで終わりだろう。
俺はメルトと共にそっとその場を離れ、豪華な料理に舌鼓を打つことにしたのだった。
「ゼフィルス。その、なんだ。ありがとう」
「おう。メルトも、これからもよろしくな」
「……ああ」
祝勝会&祝賀会はこうして楽しく過ぎていった。
第六章 -完-
第六章も無事-完-することができました!
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今後も〈ダン活〉をよろしくお願い致します!