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#344 サターン最後の足掻き、ギルドバトル終了




 サターンが吠える。


「まさか! く、ここで負けるわけにはいかん! 『フレアバースト』!」


 サターンの手から巨大な炎の塊が飛ぶ。上級魔法だ。

 しかし、


「甘いわね! 『聖守の障壁』! 『聖光の耀剣』!」


「ギャー!?」


 ラナが魔法を防ぐ障壁で防御し、耀く巨大な魔法剣でカウンターを叩き込んだ。

 サターンが大ダメージを負ったな。さすがラナだ。

 そこへ慌てたようにポリス君が近づく。


「サターン大丈夫か! 今癒す『メガヒール』! 『エリアヒール』!」


「ぐっ。助かった。また下がるしかないのか……!」


「何言ってやがるサターン! 憎い勇者は目の前だぞ! やれ! 倒せ! 俺も出る!」


「ぬう! そうだ、目の前にゼフィルスがいるのだ! 我だって前に出てやる! トマ、ポリス、行けるか!?」


「もちろんだ。勇者の奴に目にもの見せてやる!」


「よし、行くぞ! 『メガフレア』!」


 ポリスの発破にサターンの目に再び炎が宿った。息を吹き返したか。

 最後の攻撃だという気合と共にトマがシズとラナの下へ再び突っ込み、パメラにサターンが魔法で牽制する、そして俺には、なぜかポリス君が突っ込んできた。爆弾を抱えて。


「このリア充勇者が! 爆発してしまえーー!!」


「こいつ、特攻か!?」


 物理的に爆発しろと?


 とんでもない奴である。だが、


「『グレネード』!」


「『光の柱』!」


「あびゅるばーー!? 『ボッカーン』あびゃー!?」


「ポリス!?」


 なぜかトマの相手をしているはずのシズとラナの攻撃にポリスが吹っ飛んだ。

 しかも途中で爆弾も爆発してHPも消し飛び、ポリス君は〈敗者のお部屋〉へ飛んでいった。

 どうやら爆発するのはポリス君の方だったみたいだ。

 サターンが愕然とした声を出す。


 チャンスだ!


「『ソニックソード』!」


「ぐあぁあ!?」


 あまりに隙だらけだったので一撃。

 接近してしまえばこちらのもの、と思ったらサターンの目がギラリと光る。


「舐めるなーー『フレイムサークル』!」


「っ」


 範囲攻撃。

 サターンはこれを足元に放った。

 炎のエリアが生まれ、俺にもダメージが入る。

 サターンからの初めての反撃だ。


「『ディフェンス』!」


 防御スキルを使ってやり過ごすとその隙にサターンが距離を取る。


 こいつ、前より強くなってやがる。


 そう思ったのも束の間だった。


「援軍が来たのデース」


「ここまでだな。『メガフリズド』!」


「ぐふ……。サターン、悪い……」


 何が起きたのか、トマが〈敗者のお部屋〉へ飛んでいった。


「ゼフィルス君回復するね! 『ハイヒール』!」


 振り向くと、さっきまでラナとシズがいた位置に【賢者】のメルトと【セージ】のミサトが合流していた。


 今さっきのトマに直撃していた氷魔法はメルトの攻撃だったのか。

 どうやらトマがラナたちに仕掛けようとしたタイミングでミサトたちが合流し、ラナとシズの手が空いたのでポリス君をドガンッしたらしい。

 さすがに6対3では一溜まりもなかったか。


「トマ!?」


「サターン。これで終わりのようだな」


 残りはサターンただ1人だ。


「く、ミサトよ。我らの敵に回るというのか!」


「たはは~。悪く思わないでね。サターン君。やっぱり今回の騒動は〈天下一大星〉が悪いと思うからさ」


「ぐぬぬ。頼むミサトよ〈天下一大星〉に帰ってはきてくれないか! ミサトさえ居れば〈天下一大星〉はまともなギルドに戻れるのだ!」


「おいサターン、俺だってミサトをスカウトしてるんだ。今更横から入るな」


「なにおう! ミサトは元々〈天下一大星〉に居たのだ! ミサトを奪ったのはゼフィルスではないか! ―――頼むミサトよ。もし帰ってきてくれるなら我らにできることはなんでもしよう。そうだ! 宿題なんかはジーロンの奴が得意だ、教えてもらおう! なんなら宿題をいつでも写していい」


「え? いや、それはいいかな。たはは」


 ミサトがサターンの発言に思わず苦笑いする。ミサトは【セージ】である。多分ジーロンより頭いいぞミサトは。

 サターンの秘儀『なんでもする』は見事に空ぶっていた。

 断られたサターンが狼狽する。


「な! ま、まさかミサトよ。本当に〈エデン〉に正式加入するのか? 〈天下一大星〉に帰ってきてはくれないのか!?」


「そうだ」


 ミサトの代わりに俺が答えてやる。


「ゼフィルスには聞いていない!」


「いいや、俺が代わりに答えよう。ミサトは〈エデン〉に正式加入する予定だ!」


「ま、待って待ってゼフィルス君、サターン君も落ち着いて、ね?」


 ミサトがとりなしてくれるがヒートアップしたサターンは止まらない。


「ミサトよ、今ここで答えてくれ! ミサトが加入するのは〈天下一大星〉か、それとも〈エデン〉なのか、どっちなんだ!?」


 なんか究極の選択肢が出た。これは乗るしかない。


「ミサト、どっちなんだ! 〈エデン〉か〈天下一大星〉か、どっちに正式加入するんだ!」


「ええ! ゼフィルス君もなの!? ちょ、ちょっと待とう!? 落ち着こう!?」


「ダメだ。このままではミサトを取り合って収拾がつかない。はっきりしてくれ」


「そうだミサトよ、ミサトが加入するのは〈天下一大星〉だよな? 帰ってきてくれるよな?」


「え? それは無理かな」


「…………ほ?」


 思わずといった感じに答えたミサトの一言にサターンから魂的な何かがポロッと零れた。

 俺はチャンスとばかりに追撃を仕掛ける。


「サターン。2つあった選択肢のうち〈天下一大星〉をミサトは断った。つまりそういうことだ」


「へ? ゼフィルス君これは別に〈エデン〉を選んだわけじゃ――むぐぅ!?」


 ミサトが何か言おうとしたところで後ろから忍び寄った陰がミサトの口を塞ぐ。

 メルトだ。

 そしてこっそりミサトと内緒話をする。


「ミサトいいから。〈エデン〉に加入すれば全て丸く収まる。今は〈エデン〉に正式加入すると言っておけばいい」


「ええぇ。それっていいのかな?」


「問題ない。さあ、サターンに言ってやれ、それで決着が付く」


「う、うん分かった。メルト様のこと信じるね」


 こそこそっと小さな声で話していたミサトとメルトだったが、近くに居る俺にはよく聞こえた。メルトは上手くやってくれたようだ。


 ちなみにサターンは放心しているので聞こえていない。心に深いダメージを負ったらしい。

 しかし、サターンにはさらに試練が待ち受ける。


「サターン君」


「ん、んあ、ミサトか? そうか夢か、我は今悪い夢を……」


「えっとね、私〈エデン〉に正式加入することにしたから〈天下一大星〉には加入しません。ごめんね?」


「…………」


 ブチンッ。

 そんな音が聞こえた気がした。


「ゼフィルスぅぅぅ! 『フレアバースト』!」


「そいつは読んでたぜ! 『ライトニングスラッシュ』!」


 一瞬でプッツンしたサターンだったが、以前も同じようなことがあったのを俺は覚えている。俺の対処は的確だ。『フレアバースト』も、この近距離ではちょっと横にずれてしまえば回避できる。


 そして俺は下からかち上げるようにして思いっきり〈天空の剣〉を振りぬいた。


「ぐああああああ!?」


 弧を描くようにして飛んでいくサターン。そして落っこちた先にいたのは、いい表情をしたラナと無表情に銃口を向けるシズだった。


「飛んで火にいる虫ですね。『バインドショット』!」


「ぐおおぉぉ!?」


 ナチュラルにサターンを虫扱いしたシズが速攻で〈拘束〉の状態異常になるスキル『バインドショット』を放った。

 身動きが封じられるサターン。危うし。絶体絶命か。

 なんとか蓑虫状態になりながらも膝立ちまでした時には、サターンの目の前にはいい笑顔をしたラナがいた。


「これねゼフィルスに教えてもらったのよ。水平に、振るの!」


 そう言って振られたのは、ハンナオススメのメイちゃん2号。

 あの伐採から練習したのだろうか、なかなか様になったスイングがちょうど膝立ちで低い位置にあったサターンのこめかみを直撃した。


「ぶらぁぁぁ!」


 地面にヘッドスライディングをかますサターン。

 そこでサターンの下に現れる転移陣。

 〈敗者のお部屋〉への招待状だ。


 俺は手を振り、サターンを見送ったのだった。


 それから数分後、ギルドバトル終了のブザーが鳴り響いた。





ご愛読ありがとうございました!

どうでしたでしょう?

今回のギルドバトルは作者、かなり力を入れました。イメージ図も描いて頑張りました!


評価をいただけると嬉しいです。


今後も〈ダン活〉をよろしくお願い致します!

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ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 以前からミサトにはイライラしてた。 この期に及んで自分からキッパリとエデンに入ると断言しないなんて、それは責任感とか義理堅いのでは無く単なる優柔不断 何の為ににチームバトルの挑戦受けた…
[良い点] ラナはさぞ気持ちよかったろうな
[良い点] 図もあってとてもわかりやすく楽しめた [一言] このゲームリリースしてくれー
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