表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
374/2068

#341 〈北東巨城〉付近での戦闘。




 ちょっと時間は(さかのぼ)り、時はゼフィルスが本拠地に向かった直後のこと。

 ラナたちはリーナから新たな指示を受けていた。


『ラナ殿下、シズさん、カルアさん、エステルさんは2チームに分かれてください。サターン他敵チームを北に来させないよう保護期間を使って上手く閉じ込めましょう。ルートを指示しますわ』


 ラナたちに直接聞こえる指示、これは本拠地に居るはずの【姫軍師】リーナによる指示だ。

 リーナは〈中央巨城〉を落とした後に別れ、本拠地へと戻り中盤戦の準備していた。

 現在は超激レアアイテム〈竜の箱庭〉を俯瞰(ふかん)しながら各地に指示を送っている。


 ゼフィルスが鍛えたリーナの指示は的確で、すでに〈竜の箱庭〉を使いこなしつつあった。


 指示を受けたラナは1つ頷くと、自慢の従者に言葉を投げる。


「聞こえたわね! エステル、シズ。頼むわね!」


「は! お任せください。私はカルアと西を担当します」


「ではラナ殿下は私と、この近辺の土地を取りつつルートに従いましょう」


「ん、行ってくる。ラナ、またね」


 エステルとシズが先導し、2つのチームに分かれて行動を開始、リーナの指示に従い適切なマスを取っていく。

 マスを取ると保護期間が発生するため、敵チームは侵入することはできない。

 そのため保護期間で道を作ることにより敵チームは南側に押さえつけられてしまう。

 サターンたちには苦しい展開だ。何しろ、取れるマスが少ない。


「ぐ、サターンよ、どうする!」


「まずは巨城周りの土地を()がせ! 次に中央付近の土地取りも行なう! 二手に分かれるぞ! スリーマンセルだ!」


 トマの問いに素早く指示を送るサターン。

 6人のメンバーを素早く3人ずつに分けて〈エデン〉メンバーに追行(ついこう)する形でマスを取得していく。

 3人にしたのは対人戦を警戒したためだ。

 対人戦は人数が多い方が圧倒的に有利、万が一対人戦が勃発した時のため、サターンは保険を掛けていた。


 しかし、てっきり南側にサターンたちを追い詰め、対人戦に持ち込むものと予想していたサターンだったが、〈エデン〉のメンバーたちは徐々に北上する動きを見せた。

 これではせっかくサターンたちを南側に押し込めた優勢が崩れてしまう。


「む、中央付近の優勢を狙うつもりか? 中央付近を抑えられれば白の本拠地に進みずらくなる」


「俺たちはどうするサターン?」


「……ならば我らは南側の土地を集めるのに集中するぞ! せっかく〈エデン〉が北上したのだ。南側にある白マスは全て赤マスに塗りつぶす!」


「おうよ!」


 保護期間が有る限り対人戦は起こりにくい。

 故に中盤戦は土地取りに注力し、終盤戦、土地取りが終わり、マスをひっくり返しづらい状況になってから対人戦が始まると言っていい。

 ならば、サターンがした選択は、マスの獲得を優先することだった。

 トマとポリスにも素早く指示を出し、南側は徐々に赤マスで染まっていくことになる。




 ◇ ◇ ◇




 場所は変わって北側、ジーロンたち赤チームの4人はかなり苦境に立たされつつあった。


「まずいぞジーロンよ! このままだと囲まれるぞ!」


「ふふ、僕に任せてください。北側の白マスを保護期間に変えてしまえば問題無いはずです」


「ダメだ。北は待ち伏せされている! しかも人数が多い!?」


「ふ!? く、どうすれば」


「ジーロン!? 今任せてくれと言ったばかりじゃなかったか!?」


 場所は〈北東巨城〉近辺。

 残念ながら〈北東巨城〉の先取を逃してしまったジーロンたちであったが、〈エデン〉がすぐに白の本拠地方面に撤退していったため、この近辺を赤マスにしつつ巨城を囲む作業をしていた。

 しかし、気がつけば黄緑色に光る白チームの保護期間マスが接近しており、〈北東巨城〉近辺に追い込まれている状況になっていた。


 脱出できる唯一のルートも待ち伏せされており、ジーロンたちは対人戦で倒すか、突破するかの二択を迫られていた。


「油断していたのでしょうか、まさか〈エデン〉がここまで巧みな連携で追い詰めてくるとは。なんという錬度の高さですか」


「こうなれば突破以外はありえん! 俺様がなんとかガードする。貴様らは切り抜けることだけを考えろ!」


「あ、北のルート、保護期間で封鎖されました!」


「ああ!? 後方にも保護期間が! か、囲まれたぞ!!」


「な、なんだとぉ!?」


 悠長に相談している間にリーナの指示を受けていた〈エデン〉の囲い込みは進んでおり、とうとう完了してしまう。

 唯一の突破できるルートも保護期間で進入不可になってしまい、とうとう囲まれ絶体絶命になってしまうジーロンたち。

 このままでは、ボッコボコにされてしまう。


 しかし、そこに一筋の光明が起こる。

 とある1マスの保護期間が終わったのだ。それは、そのマスだけは侵入が可能になるということ。


「ふふ!? あ、あそこです! あそこから突破するのです!」


「「「お、おおおーーーー!!」


 保護期間に囲まれ逃げ道を封じられたかと思われたところで起こったその奇跡に、ジーロンたちは飛びついてしまう。

 それが作られた逃げ道である事も知らずに。




 ジーロンたちが我先にと奇跡のマスへ侵入した瞬間、それは聞こえた。


「『聖光の耀剣』!」


「『エレメントランス』!」


「『連射』!」


「ふ? ぶばらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「「「ジーロン!?」」」


 先頭走っていたジーロンが、ズドンッ! と吹っ飛ばされる光景を目にし、思わず足が止まるヘルクと三年生。

 いったい何が!?

 状況を確認しようと振り向こうとするヘルクたちだったが、そんな隙だらけな行動を許す〈エデン〉ではない。

 まず【ハンター】三年生が犠牲になった。


「『シールドバッシュ』!」


「ぐお!?」


「くらいなさい」


「あぎゃべしっ!?」


 シエラによる盾突撃だ。

 まともに食らった【ハンター】三年生は無様にダウンを取られ、そしてシエラが振り上げたメイスがゴッチンッ! と脳天に叩き込まれた。

 メイスの通常攻撃によってダウン中にクリティカルを取られてしまった【ハンター】三年生は〈気絶(スタン)〉の状態異常になった。


 まずは1人。


 続いて犠牲になったのは【双剣士】三年生だった。


「これがヒーローの力なのです! 『ロリータタックル』!」


「ごふっ!?」


 どう見てもヒーローの力ではなかったが、強力なロリのおでこが【双剣士】三年生の鳩尾に突き刺さった。

 HPが仕事をしてくれるため痛みはそんなに無いはずだが、【双剣士】三年生は膝から崩れ落ちる。『ロリータタックル』はクリティカルヒットすると相手を〈気絶(スタン)〉状態にすることがある。恐ろしい技だ。


「ば、バカな!?」


 一瞬で3人がやられ、ヘルクが動揺するように叫んだ。

 まさに呆気ない幕切れ。戦闘のせの字もなく、追い詰められてただ狩られたのだ。

 それを認識したヘルクの動揺は大きい。

 しかし、次のラナの一言でもっと動揺することになる。


「ちょっとみんな、あの大男だけ忘れてるわよ! 『聖光の宝樹』!」


「うおおおおぉぉぉぉ!」


 自分だけなぜ生かされたのかを知ってしまったヘルクが叫びながら走り出した。おそらく動揺が足に来たのだろう。男には涙を見せないために突然走り出したいこともあるのだ。

 瞬間、自分が今までいた場所から聖なる樹が生える。あのままあそこに居たらまともに食らっていた。不幸中の幸いである。

 それを見たヘルクはギリギリのところで今の状況を思い出した。


「まずい、まずいぞ! ジーロン、生きてるかあ!」


 走る方向を修正し、ジーロンが吹っ飛ばされた場所へ向かうヘルクだったが、すでにそこには〈エデン〉のメンバーらしき2人がいた。


「飛んで火に入る夏の虫デース! 『必殺忍法・分身の術』デース!」


「ラナ殿下にはとにかく頭を打っ叩くよう言われております、ご覚悟を」


 その正体はパメラとセレスタンだった。

 ジーロンは吹っ飛ばされたが幸いにもHPはまだ余裕があり、〈ハイポーション〉によって回復していた。

 しかし、縦横無尽、アクロバティックに動き回るパメラと、なんだか動きがとんでもない執事によって苦戦を余儀なくされていた。


「ふふ!? こ、こんなところで負けられるものですか! ユニークスキル発動『奥義・大斬剣』!」


「『忍法・身代わり』! 甘いのデス。それは分身デス」


「ふふ!? なんですと!?」


「締めましょうか。『手刀』!」


 ジーロンはユニークスキルで巨大化した光の剣でパメラを斬らんとしたが、パメラは素早く『忍法・身代わり』を使って分身体と自分の位置を入れ替えた。ジーロンの渾身の一撃は分身体を斬って終わってしまう。

 透かさずセレスタンが滑り込み『手刀』をジーロンの延髄に、と思わせて脳天に叩き落とす。


「がふ!?」


「ジーロン!?」


 ぐりんっと白目になったジーロンが(ひざ)から崩れ落ちた。〈気絶(スタン)〉状態になったのだ。

 ゲームでの『手刀』は相手の延髄に撃ち込み〈気絶〉状態にするスキルだったが、脳天でもいけたらしい。


 ヘルクが駆けつけた時にはジーロンはトドメを刺されるのを待つばかりであった。


「さて、次はあなたですね」


「く、おのれ執事! よくもジーロンを! ユニークスキル発動『大雄姿・復讐戦撃』! うおおぉぉぉぉ!」


 ヘルクのユニークスキルは仲間がやられると火力が上がる攻撃スキル。

 実は全員〈気絶〉になっているだけで誰もやられてはいないので威力はそれほど高くは無い。

 この渾身の一撃に対し、セレスタンは素早く拳を叩き込んだ。


「左がガラ空きです。『ブリッツストレート』!」


「ぐ!?」


 突撃する拳を放つ『ブリッツストレート』はヘルクの大盾を掻い潜ってレバーに突き刺さる。

 しかし、VITを鍛えている【大戦士】のヘルクだ、ダメージはそれほど大きくない。

 だが、今の一撃でヘルクのユニークスキルが強制キャンセルされてしまう。


「く、強い! 『オーラオブソード』!」


「『スピンカウンター』!」


 苦し紛れに放ったヘルクのオーラを纏ったソードは、しかしセレスタンが懐に入り込んだ事によって避けられ、さらにカウンターを叩き込まれる。

 回転を生かしたフックが脇腹に叩き付けられ、ヘルクの身体がノックバックした。


「ぐは!」


「硬いようなので大技を送りましょう。『ノッキング』!」


「ぐお!?」


 セレスタンの『ノッキング』がズドンとヘルクの腹に突き刺さり、ヘルクは身動きが取れなくなった。一時的に〈麻痺〉状態になったのだ。

 そこでセレスタンが一歩下がり、力を溜めるように拳を引く。


「申し訳ありません。今から顔面を殴ります。ご覚悟ください」


 力なく倒れ込みそうになるヘルクが見たのは、空手の正拳突きのように拳を叩き込む執事の姿だった。


「『バトラー・オブ・フィスト』!」




 ジーロンたち4人は〈敗者のお部屋〉に送られた。

 彼らが気絶した後に何があったのかはあえて語るまい。


 これで〈天下一大星〉は残り11人。

 ギルドバトルは終盤戦へ進む。



今回は対人戦です。

楽しんでいただけたら幸い。


三年生はモブ。

モブに聖女や盾姫やヒーローの相手は、ちょっと厳しかったみたいですね。


さてイメージ図です。

今回〈北東巨城〉近辺の拡大図をご用意しました。

前回の340話イメージ図のポイント2の部分ですね。


右上にある大きい城が巨城マスですね。

他の小さい城があるマスが小城マスです。

見てのとおり、マスの中央に城が建っており、その周囲は結構空間があります。

巨城はマスギリギリの大きさをイメージしていたのですが、画質が悪くなってしまったのでこの大きさに留めています。

ですが、巨城は隣接マスから近距離攻撃が届くくらい大きく近いとイメージしていただければと。


小城マスについて、四隅に実はちょっとした空間があります。

救済マスと言われる部分です。

ここは保護期間にされると弾かれて放り込まれる場所ですね。

また、図の左下みたく、保護期間で左と下のマスが通行できなくても左下の隣接マスに通行することが出来ます。


ちなみにマスの隣接とは上下左右と斜めにあるマスの8箇所のことを言います。


今回の対人戦では上手くジーロンたちを囲い込み、左下マスの保護期間を解いて誘導。

待ち構えていた5人の攻撃によってズドンッ! しました。

ジーロンだけ送り返されました。そこに現れたのは北マスを保護期間にしたパメラとセレスタン。

こんな感じの流れです。


気絶した彼らがどうなったのかは想像にお任せしたいと思います。

では、また明日をお楽しみに!

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲーム世界転生〈ダン活〉1巻2022年3月10日発売!
― 新着の感想 ―
[気になる点] >「む、中央付近の優勢を狙うつもりか? 中央付近を抑えられれば白の本拠地に進みずらくなる」 『進みずらく』⇒『進みづらく』 旧仮名遣いの『づ』はだいたい『ず』にしますが、いくつか例外…
[気になる点] 予告で第三者視点とのことだったので観客か教師目線の話かと思いました。そちら目線の話もぜひ読みたいです。 [一言] 毎日の更新が本当に楽しみです。体調等お気をつけていたたげるとありがたい…
[気になる点] ジーロン達のいるマスって前回でも赤の保護期間だった気がするんですけど対人戦開始時には解けているんでしょうか? 保護期間を使った遅滞戦闘云々みたいな話もやっていた気がしたんですけど今回触…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ