#335 作戦会議本番。なんか相手が強いけど問題無し。
「まずはどの巨城を狙うか。この〈六芒星〉フィールドでもっとも重要なのはそこだな」
端的にまとめて説明していき、最後にどこが重要な部分なのかを認識させると、みんなから感心の息が漏れた。
「初動が大事、ゼフィルスさんがいつも言っていることですわね」
「なるほどね。それでゼフィルスはどこが重要で、どのようにして動くのがいいのか、すでに答えは出ているのね?」
「当然だ」
リーナが改めて呟き、シエラの言葉に俺は少し得意げに語る。
ああ、語るのが楽しい。
うん。やっぱりギルドバトルの醍醐味は戦術・戦略の考察だ。
俺がギルドバトルでもっとも好きな部分であり、得意な部分でもある。
作戦と相手の動きを読み、そして読みきって勝った時が一番気持ちがいいんだ。
あの瞬間はマジで体の奥底から高笑いが漏れる。ふははは!!
俺はウキウキとした心境で語っていく。今後の展開の予想図を。
「昔の偉い人はこう言った『己を知り敵を知れば百戦危うからず』。つまり重要なのは戦力であり、相手がどう動くのかを読みきることだ」
「無論だな。人数は互角だが、今回は総力戦。相手は純粋な戦闘職で固めてくるだろう。なかなか手こずると予想できる」
俺の前置きにメルトが頷いて言う。
今回の〈15人戦〉だが。相手の戦力がかなり高いため、それなりに手こずることが予想される。
どういうことかと言うと、うちのギルド〈エデン〉はマジで〈総力戦〉である。
15人のメンバーがいて、全員が参加しなくてはならない状態だ。
つまり生産職だろうがLVが低かろうが、サポート職であろうが全員参加だ。
対して〈天下一大星〉は下部組織を使い25人の中でも精鋭中の精鋭を出してくるだろう。つまり全員が戦闘特化職だ。
生産職も、サポート職も入っていないだろう。その分〈エデン〉が不利となる。
次に平均LVだ。
これが驚くことに、〈天下一大星〉のメンバーはやたらとLVが高かった。
なんと三段階目ツリーが解放されている人間が結構いたのだ。
その正体は上級生。
この実力主義の世界でいったい何がどういう化学反応を起こしたのか分からないが、ギルドマスターのサターンの下に3年生や2年生が数名集まっていた。
なんでサターン君は上級生を従えてるの? ねえ、なんで? 状態である。
しかし、事実そうなのだから、これが結構油断できない。
「リーナ。向こうの戦力を報告してくれ」
「わかりましたわ。わたくし、ゼフィルスさんに言われて少し相手のことを調べさせていただきましたの。とは言っても簡単に分かる程度のものですが」
まずは向こうの戦力を把握する。
その役目は軍師のリーナに任せておいた。
まあ、〈天下一大星〉をしょっ引いたメシリア先輩のところに聞きに行ってもらっただけだが。
学生指導室送りにされた学生は、こうして申請すれば簡単な情報が開示される。
前にも話したかもしれないが、問題ある学生をギルドに入れたいという人はいない。故に問題を起こした学生というのは問題を再度起こされないよう、学園側からある程度管理されてしまう。
〈天下一大星〉の面々は、こうして簡単な情報を開示されてしまうくらいには管理されてしまうというわけだ。
「聞けたのは、〈学年〉〈組〉〈所属ギルド〉〈職業LV〉〈軽い品行〉だけでしたわ」
「それだけ聞ければ十分だ。特に今ほしいのは職業LVだからな」
「はい。注目するべきはやはり3年生でしょうか。3人いますわね。それぞれ【重装戦士LV58】【双剣士LV67】【ハンターLV60】ですわ。強力な相手ですわね」
「むぅ。高いな」
リーナの報告にメルトが唸った。
さすが最上級生だ。LV60近くがザラにいる。
本当にどうしてサターン君の下についてしまったのか分からないレベルだ。
「続いて2年生ですわね。こちらは……6名ですわ。【殴りマジシャンLV47】、【回復兵LV45】、【暴走魔法使いLV50】、【デンジャラスモンクLV51】、【ロックハンマーLV46】、【霊魂主LV49】ですわ」
「さすが2年生ね。全員が三段階目ツリーを超えているわ」
シエラもこめかみに少し指を付ける姿勢で難しい顔をする。
そりゃそうだろう。
ちょっと前の〈天下一大星〉とは偉い違いだ。
まさか上級生のギルドに入るのではなく逆に上級生を取り込むとか……、サターンたち、恐ろしいやつらだ。
3人ほどネタ職業使いが混じっているのも地味に恐ろしい。殴りと暴走、デンジャラス。
正直言って前とは比べ物にならないくらいのギルドバトルになるだろうな。
それでも〈エデン〉の勝利は覆ることは無いが。
たかが三段階目ツリーが増えた程度だ。
〈エデン〉のメンバーは三段階目ツリーに到達していないのは、リーナ、メルト、そしてミサトだけだ。
確かにこっちには生産職がいて不利に見えるが、ハンナにはヒーラー装備で後方待機させるから関係ない。ぶっちゃけハンナは生産職と言われているだけの戦闘枠だからな。ばっちり戦力に入ってることをメルトはまだ知らない。
戦力差はまだまだ〈エデン〉が優勢だ。
「問題は、経験の差ですわね。〈エデン〉では実際にギルドバトルを行なったことがある人は少ないですから」
「相手の絡め手に対応できないかもしれない、か」
リーナとメルトがそう言いながらこちらを向いた。
その目はどうすればいいのかと聞いていた。2人とも、ギルドバトルの経験なんて皆無なのだ。
俺に聞くのは正解だ。
俺も一つ頷いてからそれに応える。
「おそらく中盤以降は対人戦が中心になるだろう。だが安心しろ。今回は優秀な【姫軍師】と〈竜の箱庭〉がついてる。ギルドバトルの真のやり方を教えよう」